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トラック運転手がいかついと思われる5つの理由
トラック運転手がいかついと思われるのは、何十年も前から変わっていません。「ガラが悪い」「怖い」などと思われることもありますが、なぜそんなイメージが先行してしまうのでしょうか?元運転手の筆者が考えられる理由を5つピックアップしてみました。
体力的にハードで自然にいかつくなるから
トラック運転手の仕事は体力的にとてもハードです。
- 重たい荷物を積み下ろしする
- 荷物を持って団地の階段を登る
- 駐車した場所から走って納品する
筆者がトラック運転手をしているときは、女性であるにもかかわらず、両腕の筋肉はバキバキで、ふくらはぎはシシャモ状態。一般の男性と腕相撲では負けたことがないくらい鍛えられてしまいました。
また、屋外での仕事が多い場合は、日焼けで真っ黒になります。キツイ仕事をしているからこそ、自然に体型がいかつくなり、日焼けをしてしまうことでさらにいかつさが増してしまうのです。
- 日中の運転はまぶしいからサングラスをかける
- 汗を拭くために頭にタオルを巻く
なんていう行動も、いかつく見えてしまう理由だと考えられます。
いかつい人が集まりやすい条件で募集しているから
トラック運転手はキツイ仕事だという認識が広まっていて、体力勝負というイメージがあります。長距離の運転手はなかなか自宅に帰れないこと、不規則な時間帯で働くことなどもあり、体力に自信のある人や身体を使う仕事をしてきた人などが集まりやすいのです。
今でこそ国土交通省の「トラガールプロジェクト」など、女性の雇用促進が積極的に行われていますが、以前は恐ろしいほどの男社会!それも、体力に自信のある男性が多く従事していたのです。
トラック運転手は学歴や年齢を問わず、運転免許があれば働ける仕事だと思われています。学歴・年齢不問が何となくガラの悪い・いかついイメージに繋がってしまう可能性もあるでしょう。
いかつい人が得することが多いから
これは運転手あるあるの一つですが、同じ運転手仲間でもいかつい人は何となく得をすることが多いんです。
- 運管や荷主が怖がって変な仕事をさせない
- 周囲が怖い人だと思って気を遣う
- 何か言うと「鶴の一声」のようになってしまう
別に本当に怖いわけではないのですが、何となくいかついイメージを持たれていると、楽な仕事が回ってきたり、パワハラに遭わなかったりします。身近で成功体験を見てしまった人は「自分もいかつくなれば嫌な思いをしないのではないか?」と感じてしまうのです。
筆者は女性なので、最初の頃はパワハラ・セクハラのオンパレードでしたが、仲の良かった先輩が相当いかつい人で、その人がいてくれたおかげでずいぶん危機回避ができたという経験があります。いかつい人が得をする……そんな変な慣習や思い込みがいかつい人を増やしてしまう原因になっているかもしれません。
大きな車を上手に運転しているから
普通車を運転している人にとって、大型車やトレーラーなどを上手に運転していると、「すごい!」というイメージから、いかつく見えてしまうことも考えられます。
確かに、運転手同士でもトレーラーやキャリアカーなどの駐車を見たりすると「うまいなぁ」と感心しますし、片手でハンドルを操作しながら信号を曲がって行ったりすると「さすが!」と思うことは多いものです。
身体の大きさは変わらないのに、自分の運転している車より何倍も大きな車を運転していると、何となくいかついイメージを持ってしまうのでしょう。
いかつくない人が辞めていくから
トラック運転手の仕事は決して楽な仕事ではありません。車の運転が大好きで運転手は天職だと思っていた筆者でさえ、キツいと音を上げたことは何度もあります。
周囲を見ていると、体力的に自信のある人や力仕事が得意な人が長く働いていました。インドア系の新入社員や、体力仕事未経験の転職者が入社してきたこともありましたが、なかなか長続きしませんでした。
そうなると、残っているのはいかつい体型をした猛者ばかり。いかつくない人は自然淘汰的に辞めてしまうため、何となく周囲はいかつい運転手という結果になってしまうのです。
「思っていたのと違う」と言って辞めていった人をたくさん見ましたが、皆揃ったように「身体がキツイ」と言っていました。長く勤務している人はやはり身体的にがっちりとしている人が多く、運転もうまい人ばかりだったため、いかついイメージは確かにあったと思います。
運転手がいかつくならざるを得ない事情とは?
トラック運転手は好きでいかつくなるのではなく、仕事の特性上いかつくならざるを得ないことも多いものです。いかつくならざるを得ない事情とはどんなものなのでしょうか?
仕事に対する強い責任感を持たされる
トラック運転手だけではありませんが、運送業は仕事にないする強い責任感を求められます。
- 安全に運行すること
- 時間までに荷物を納品すること
この2点は、職業ドライバーとして必ず守らなければならないという責任を持って働いています。特に、時間に関しては、複数ある職種すべてといっていいほど「時間厳守」が叩きこまれるのです。
長距離の運転手の場合は、時間を逆算して運行しますし、店舗配送や宅配なども時間には常に追われています。一般の方のようにドライブを楽しんでいるように見えますが、実は時間というプレッシャーと戦っているので、顔つきがキツく見えたり運転が荒く感じたりすることがあるのでしょう。
中には、大きな声で作業を急かす人や、下手な運転をするドライバーにクラクションを鳴らしてしまうような人もいます。責任感を持って仕事をしているからこそ、周囲から見るといかつく見えてしまうという可能性はゼロではありません。
納得できないことに意見ができなくなる
トラック運転手の仕事の中には、納得できない理不尽な仕事もあります。押し出しの弱い人が意見を言ったところで「はぁ?」「何?」と一言で片づけられてしまうことが多いため、見た目だけでもいかつくなろうという傾向がみられます。
ブラック企業が未だに横行する運送業界ですが、中には質の悪い荷主もいるので、あまりにも無理なスケジュールや安い運賃で仕事を頼んでくるという状況も少なくありません。
そんなときに自分の意見が通らないと、結局割を食うのは自分です。会社や荷主に対して正当な言い分を認めさせるには、多少いかつくないとナメられてしまうことが多いので、自然といかつくなっていく……そんな事情もあります。
いかつい見た目に負けないよう自分を鼓舞する
トラック運転手を長くやっていると、何となくいかつい見た目になってきます。働いている環境や仕事上の特性がそうさせることが多いのですが、自分では意識していなくても「何か怖そう」「柄が悪そう」と思われてしまうことが多くなるのです。
確かに、筆者の同僚たちはいかつい人が多かったのですが、本来は優しくて弱いところもある普通の人でした。
- キツイ仕事で音を上げるわけにはいかない
- こんな見た目なのに仕事ができないと思われたくない
このように自分を鼓舞するために、見た目だけでもいかつく見せるという人が多かったように思います。運転手としてのプライドや、守るべきものを守るための強さみたいなものをいかつさで表現し、その見た目に負けないように自分を上げていくという心理が働いているのではと感じていました。
特に、悪質な荷主や質の悪い上司などにはナメられないように、他社のドライバーにバカにされることのないように、自分を鼓舞しながら働くことが見た目のいかつさにつながっていたと思います。
トラック運転手は本当にいかつい人ばかり?いかつくない人の意見を聞いてみた
筆者は、20年近くトラック運転手の仕事に就いていました。何度か転職をしたので、当時の仲間はさまざまな人がいました。
中でも、見た目はまったくいかつくないのに、仕事を頑張っている仲間も多かったことも事実です。いかつくない彼らはどんな運転手だったのか、3人のいかつくない運転手を紹介します。
前職はSE・体力に自信がなかったNさん
Nさんは、筆者が宅配を担当していたときの同僚でした。年齢は当時30代後半、前職はシステムエンジニアという異色の転職者で、新人研修を筆者が担当したのです。
Nさんのすごいところは、とにかく仕事が正確なことと、覚えるのが早かったこと。通常1ヶ月はかかる研修期間を、Nさんの仕事ぶりを評価した上司が2週間でGOサインを出した人でした。
「僕が運送業に転職した理由は、とにかく前職の会社が嫌だったことです。派閥だのパワハラだの、仕事以外に気を使うことが多すぎて、人間関係に疲れてしまいました。
元々はシステムエンジニアになりたくて学校も卒業したんですが、車が好きだったことと、たまたま募集を見かけたことで前の会社を辞めてやると思って転職したんです。
実際にやってみると、体力的にはきつかったけど、とにかく人間関係の悪さがなくてとても働きやすかった。運送業といっても、宅配はサービス業の要素も多いため、営業もしなければなりません。それでも前職のようなくだらない人間関係に悩まされるよりは楽です。」
現在、Nさんは現場だけではなく、運行管理の仕事もしており、その正確さや物腰の柔らかさでお客様からも絶大な信頼を得ているそうです。別にいかつくなくても、長年運送業で頑張っている人もいるんだとつくづく感じさせられました。
いかつい人が怖い・対人恐怖症のKさん
Kさんとは、筆者が長距離を担当していた会社で出会いました。Kさんは入社当時、前職で受けたいじめが原因で少々人間関係に恐怖を感じてしまう人でした。
それでも、家族がいる以上、頑張って働かなければいけないということで、転職をしてきたのです。会社の上司も事情を知っていたので、見てくれのいかつい男性社員ではなく、女性の私に教育係をお願いするといってきました。
「入社当時は先輩(筆者)のことも怖かったです。とにかく人と話したくなくて、病院に行っていたら何か病気だったんじゃないかと思うくらい、精神的に追い詰められていました。
それでも、産まれたばかりの子どももいたし、奥さんは子育てで精いっぱいの状態だったので、自分が何とかしなければと思って転職したんです。
運転手の仕事は体力的にキツイけど、人と接することは少ない方なので、比較的楽に仕事ができています。今だから言いますけど、入社当時先輩は怖かったですよ(笑)
女の人なのにでかい車乗って長距離やってて、でも仕事を教えてもらう中で、前職の嫌な雰囲気とはまったく違ったので、これなら続けられるかもって思ったのを覚えています。
今では子どもも大きくなったので、奥さんも復職してますし、自分も年を取ったので無理のないスケジュールで働いています。」
Kさんは大変だった時期を乗り越えて、トラック運転手が自分に合っていると感じているそうです。対人恐怖症の症状も落ち着き、今ではリーダーとして後輩の育成に携わっています。
運送業への転職が転機・いかつい人の魅力を知ったOさん
Oさんは、筆者が勤務していた運送会社の近所で、コンビニの店員をしていました。毎日のように顔を出す筆者たちと自然に仲良くなり、「アルバイトじゃなくて正社員として働きたい」と筆者の勤務していた会社の募集に応募してきたのです。
「ずっとフリーターだったから、親にも早く正社員で仕事しろってずっと言われてたんです。最初〇〇さん(筆者)たちが店に来ると、怖い人達が来たって思ってました。
でも、みんなすごい良い人で、話すようになってから仕事探しているって言ったら、△△さん(筆者の先輩)が声かけてくれたんです。
△△さんってすごい怖そうな見た目なのに、すごく優しくて気が配れる人でしょ?他の人たちも偉そうにしているサラリーマンとかより全然普通だし(笑)
入社して仕事教えてもらっている間も、怖いと思ったことは一度もなかったです。通行区分違反で捕まったときに怒られたときはすごかったけど、それだって俺のことを考えて怒ってくれてたんで、ありがたかったです。
見た目はいかついけど、いい人ばっかり。転職して良かったってずっと思ってるし、声をかけてくれた△△さんには、未だに頭が上がりません。」
Oさんはフリーター生活から脱するためにお試し気分で運送業に転職したそうです。それでも実際に働いている中で、先輩運転手の優しさや厳しさに触れて、今でも同じ会社で頑張って働いています。
トラック運転手へ転職するポイント
最後に、運送業への転職を検討している方に向けて、転職をする際のポイントを紹介します。
人を見た目で判断しない
トラック運転手にはいかつい人が多いですが、見た目で判断することは避けましょう。いかついという見た目は、「怖い」「意地悪」「ガラが悪い」ということとイコールではありません。
中には権力を振りかざしてしまうような人もいるかもしれませんが、多くの人は嫌なヤツではありません。「いかついから」という固定観念は持たずに、人として付き合えるように努力しましょう。
言いたいことはハッキリ言う
いかつい相手に自分の意見を言うのは勇気が必要ですが、言いたいことはハッキリと言うことも大切です。ワガママを言えということではなく、理不尽なこと・違法なことにはハッキリとNOを言える人間であって欲しいということです。
相手がいかつかろうと何だろうと、ダメなものはダメだし、いかついからといって悪がのさばるのはNG。いかつい人だからといって何も言わずに従っているだけでは、ただのパシリになってしまいます。
いかつくない人をバカにしない
トラック運転手の中には、筆者の元同僚のようにいかつくない人もいます。いかつくないからといってバカにすることは絶対にやめましょう。彼らは元々いかついタイプではないけれど、いかつい人が多い運送業で頑張っている人たちです。
前述したように人を見た目で判断しないというのは基本中の基本。いかつくないから仕事ができないということではありません。
わざといかつく見えるような言動はしない
自分を大きく見せるために、わざといかつく見えるような言動をするのはNGです。いかつい態度は誤解を招くことが多く、特に新人の場合は生意気だと敬遠されてしまうことがあります。
筆者がいた会社の新入社員で、やたらと居丈高な人がいましたが、彼は自分の弱さを隠すためにわざといかつく振舞っていました。ただ、中身が伴わないので、周囲からは敬遠され、最終的には孤立して退職してしまったのです。
別にトラック運転手だからといって、いかつくなければいけないということはありません。わざといかつく見せるような言動は慎むべきです。
まとめ
確かに、トラック運転手はいかついイメージのある仕事です。ただし、そのイメージは決して悪い意味ではなく、自然といかつくなってしまったり、防衛策としていかつく見せていたりすることが多かったりします。
いかつい=悪い人ということではありませんので、決して見た目だけで判断せず、仕事への姿勢や人間としての価値を見ていくことが大切です。
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