大型免許に関する基礎知識
大型免許の取得がなぜ難しいのかを知る前に、大型免許に関する基礎知識を押さえておきましょう。
大型免許とは?
大型免許とは、普通免許とは異なる大型の車両を運転するために必要な自動車免許です。
- 車両総重量:11t以上
- 最大積載量:6.5t以上
- 乗車定員:30人以上
大型免許には以下の2種類の免許があります。
免許の種類 | 運転できる車両 |
---|---|
大型自動車第一種免許 | トラック・タンクローリー・ダンプ |
大型自動車第二種免許 | 路線バス・観光バス |
トラック運転手になるには、大型自動車第一種免許が必要になり、指定自動車教習所へ通って技能卒業検定に合格するか、運転免許試験場で技能試験を直接受験することで取得することが可能です。
大型免許の受験資格
大型免許の受験資格は、普通免許とは異なります。
21歳以上の方。中型、準中型、普通、大型特殊免許のいずれかの運転免許を現に受けており、かつ、当該いずれかの運転免許を受けていた期間(当該免許の効力が停止されていた期間を除く。)が通算して3年以上の方。赤色、青色、黄色の識別が出来ること。10メートルの距離で、90デシベルの警音器の音が聞こえること視力が両眼で0.8以上、かつ、一眼でそれぞれ0.5以上であること。三桿法の奥行知覚検査器により3回検査し、その平均誤差が2センチメートル以下であること。
引用:大型免許試験(直接試験場で受験される方)|警視庁
ここで注意したいのは、令和4年5月に改正された道路交通法の施行です。
この改正により、大型免許取得の条件が変更になっています。
道路交通法の一部を改正する法律等の施行により、令和4年5月13日から、一定の教習を修了することにより、19歳以上で、かつ、中型免許、準中型免許、普通免許又は大型特殊免許のいずれかの運転免許を受けていた期間が1年(当該免許の効力が停止されていた期間を除く。)以上あれば受験することができます。
引用:大型免許試験(直接試験場で受験される方)|警視庁
- 21歳以上⇒19歳以上
- 普通免許等保有3年以上⇒1年以上
以上の2点が大きな変更点であるため、今まで受験することができなかった若年層の方も大型免許を取得するチャンスが広がったといえるでしょう。
大型免許取得にかかる費用・日数
大型免許の取得方法は、指定自動車教習所へ通って技能卒業検定に合格するか、運転免許試験場で技能試験を直接受験することの2種類があります。
- 教習所へ通う場合の平均費用は約350,000円
- 中型免許を既に持っている場合は約250,000円
- 直接受験の場合は約40,000円
取得までの日数は、通学と合宿、保有している免許によって異なります。
通学 | 合宿 | |
---|---|---|
普通免許保有の場合 | 20~40日程度 | 約2週間 |
中型免許保有の場合 | 約2週間 | 約10日間 |
大型免許の合格率
警察庁交通局運転免許課が令和元年に発表した統計によると、大型自動車第一種免許の合格率は92.2%と高い数字が報告されています。
しかしこれは教習所に通った場合と直接受験の場合を総合的に見たものです。
一般的によほどトラックに乗り慣れている人以外は、教習所へ通った方が確実に合格できます。
大型免許の何が難しい?実際に運転してわかった理由
大型免許の取得は難しいといわれています。筆者が免許を取得する際も、周囲からは『難しい』『時間がかかる』とずいぶん脅かされました。
4tトラック(ウイング車)に3年以上乗車した筆者が、実際に大型トラックを運転してみて何が難しいと感じたのか、7つのポイントをご紹介します。
とにかく車がデカい!
大型車はとにかく車がデカいです。大型トラックにも複数の種類がありますが、後ろに箱の付いているタイプ(箱車)は、全く後ろが見えません。
比較的楽なのは長さの短いダンプですが、幅は普通車と比べるとかなりデカいです。
普通車では何も気にせずに走った道路が狭く感じたり、対向車が来るとすれ違えるかどうかビビったりします。
車の大きさになれるのが、はじめの一歩といえるかもしれません。
バックが難しい
大型車はバックが難しいです。理由は後ろが見えないから。バックモニターが付いているトラックでも、はじめの頃はバックモニターの感覚をつかめないことすらあります。
車庫入れはもちろんですが、多くの大型車が止まっていて、1台いれるのがギリギリのセンタープラットフォームへのバックは、命が縮まる思いです。
他のトラックのミラーにぶつけたり、箱をこすったり、思いきりバックしすぎてホームに当たったり…という肝の冷える思いを多くの運転手は経験しています。
トラック初心者はエアブレーキにビビる
普通車にはないトラックのエアブレーキ…トラックの近くを走ると『プシューッ』という空気の抜けるような音を聞いたことはありませんか?
エアブレーキとは、ブレーキペダルとブレーキシリンダーの間のパイプを高圧の空気で満たしている制動装置のことで、空気圧を使って車両を停車させる仕組みのブレーキです。
油圧式の普通自動車とは構造が異なるため、乗り慣れないうちはエアブレーキにビビります。
踏み込みすぎて急ブレーキになってしまうことが多く、練習中はトラックが前後に揺れるような感覚に襲われることもあります。
死角が多い
大型車と普通車の違いの一つは運転席の高さです。大型車の方が運転席が高く、車体も大きいため死角が多くなります。
前方も下の方は全く見えませんし、特に車体の後ろの方はミラーをきちんと確認しないといけません。
大型に乗り始めの頃は補助ミラーを付ける人もいるほど。普通車の感覚では絶対に乗りこなせない死角があります。
教習車と仕事で使うトラックが違いすぎる
これは比較的穴場な難しさですが…教習車のほとんどは平ボディーの車両です。平ボディーとは、大きさや幅は変わりませんが、後ろに箱がついていないトラックのこと。
ダンプや平ボディーのトラックに乗る予定の人は問題なし…でも冷凍車や冷蔵車、通常の箱車に乗る予定の人は、感覚があまりにも違います。特にバックは要注意!
平ボディーは箱車に比べると視界が確保できますが、箱車はモニターを確認するか、ミラーで確認しながら感覚に頼るかのどちらかです。教習車と実際に乗るトラックが異なる人は気をつけましょう。
内輪差に怯える
普通車にはない内輪差には、乗り始めの頃かなり怯えます。どのくらいのタイミングでどの程度ハンドルを切るのか…車体の大きさに慣れないとわからないため、気がついたら後ろのタイヤが縁石に乗っかっていたということも少なくありません。
ニュースで報道されるのも、トラックの内輪差に巻き込まれた自転車や歩行車などとの交通事故が多くあります。かといってあまりにも大回りすると対向車線にはみ出してしまうので、感覚を磨くことが大切です。
オーバーハングの感覚が掴めない
オーバーハングとは、後輪より後ろの部分を指します。普通車では全く気にしない部分ですが、トラックでは荷台の部分になります。
大型トラックはこのオーバーハングが長いことが特徴。なかなか感覚がつかめないので、非常に難しいです。
ハンドル操作を誤るとカーブ・右左折のときに隣の車線にはみ出す危険性があります。前項で紹介した内輪差に加えて、オーバーハングにも注意しないといけません。
難しい大型免許をスムーズに取得する6つのコツ
大型免許は、確かに簡単な免許ではありません。しかしちょっとしたコツを掴んでしまえば、合格できないということはないでしょう。
大型免許をスムーズに取得する6つのコツをご紹介します。
左折時は内輪差に注意
左折時は内輪差に注意しましょう。内輪差に気を取られすぎるとオーバーハングを忘れてしまいがちですが、しっかりと確認をする必要があります。
内輪差を恐れて大回りになることはNGです。ハンドルをきるタイミングや戻すときの感覚を早くつかむことがポイントといえます。
カーブは必ず減速
カーブの際は必ず十分に減速してください。教習所でスピードを出しすぎることはありませんが、スピードの出た状態でカーブに突っ込むと、荷台が大きく振られてトラック全体が揺れます。
実際の道路では横転する危険性もあるので、カーブでは十分に減速する癖をつけましょう。
後方確認は荷台の後ろの端をチェック
後方確認を行う際は、荷台の後ろの端をチェックしましょう。教習車は平ボディーの大型車なので、荷台の後ろまでが目視で確認できます。
後方確認は試験で失敗することの多い技術なので、荷台の後ろの端っこをチェックしながら行うのがおすすめです。
方向転換は軸タイヤがポイント
方向転換も大型免許取得では難しいとされる課題の一つです。普通車の方向転換とは異なり、後ろ2輪の前側にある軸タイヤを中心に考えましょう。
ポイントは後輪の助手席側に注意すること。後輪の軸タイヤが角に到着する頃にハンドルを軽く回してみてください。
ちなみに教習所の試験では、方向転換で車両が曲がっていても縁石に乗り上げたり、ポールにぶつかったりしなければOKです。
ブレーキはゆっくり軽くかける
ブレーキはゆっくり軽くかけるようにしましょう。大型車はブレーキが効きやすい構造になっていますので、普通車と同じ感覚でブレーキを踏み込むとものすごい急ブレーキになります。
一時停止の場合は、アンダーミラーで停止線を確認してください。停車位置までに余裕を持って、ゆっくり軽くブレーキをかけることで、急ブレーキや停止線超えを防ぐことができます。
まずは中型免許を取得
普通車しか乗ったことのない人と、中型免許を取得している人では大型免許の難易度が異なります。筆者は中型(4t車)に乗っていた状態で大型免許を取得したのですが、同じ教習所に通っていた人の中には普通車からいきなり大型免許を取りに来ている人もいました。
彼らは口々に『難しい』『感覚がつかめない』と言っていましたが、普段4t車に乗っている筆者にとっては、それほど難しく感じたものはありませんでした。できれば中型免許を取得して、少し運転に慣れてから大型免許を取得するのが一番スムーズに取得できます。
難しい大型免許を取得するメリットとは?
大型免許の取得には日数も費用もかかり、おまけに難しい…何で大型免許が必要なんだと考える方もいるでしょう。
しかし運送業界で働く上では、大型免許取得には大きなメリットがあります。
難しいと言われる大型免許を取得するメリットを3つご紹介しましょう。
給料が上がる
大型免許を取得すると、同じ運送会社でも給料が上がることが多いです。
資格手当が付く会社はもちろん、中型や準中型で運べる荷物と、大型で運べる荷物は大型の方がはるかに多いので、多くの会社では大型運転手の給料は他の運転手よりも高めに設定されています。
2019年に全日本トラック協会が行った調査結果では、トラックドライバーの平均賃金(給料)が以下のように報告されています。
職種(一般) | 2019年・平均賃金(円) | 2018年・平均賃金(円) |
---|---|---|
男性運転者平均 | 335,700 | 338,500 |
男性・大型運転者 | 356,000 | 355,100 |
男性・中型運転者 | 282,800 | 297,100 |
男性・準中型運転者 | 284,900 | 294,400 |
男性・普通運転者 | 282,000 | 294,400 |
女性運転者平均 | 274,400 | 294,700 |
女性・大型運転者 | 320,200 | 316,200 |
女性・中型運転者 | 247,700 | 279,000 |
女性・準中型運転者 | 291,200 | 281,500 |
女性・普通運転者 | 216,200 | 263,100 |
参考:「2019年度版トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態」について | 全日本トラック協会
男性・女性共に、大型の運転手はもっとも給与が高く、平均値よりも上回っていることがわかります。むしろ平均値を引き上げているのは、大型運転手の存在ともいえるでしょう。
運送業界で大型免許を持っていれば、他のドライバーよりも稼ぐことができますよ。
転職の幅が広がる
大型免許を持っていることで、転職の幅が広がるのもメリットの一つです。もともと運送業界は転職志向が高く、『少しでも良い条件の会社があれば転職をする』という傾向があります。
大型免許を持っていれば、かなり‟引く手あまたの状態”になることが可能です。運送業界にはさまざまな職種があり、同じトラック運転手でも仕事内容が異なります。
準中型しか持っていない、中型までしか取得していないという状態よりも、大型を持っていることで仕事を選択する幅が広がるのです。
他のドライバーから一目置かれる
大型免許を持っているドライバーは、他のドライバーから一目置かれます。大型免許+けん引免許を持っているトレーラーのドライバーなどは、筆者たちの間では『神』と呼ばれていました。
それほど運転技術が高く、会社に貢献できる人材ということです。『大型を取りたかったけど取らなかった』『仕事が忙しくて教習所に通う時間がなかった』というドライバーも多いので、大型免許を取得したことだけでも、評価に値します。
まとめ
大型免許の取得は、確かに簡単ではありません。しかし運送業界で長く働きたい・稼ぎたいと考えている方は、絶対にチャレンジして取得しましょう。
運送業界における大型免許のメリットは多くあります。特に給与の面では他のドライバーと大きく異なる面も多いので、検討してみてください。
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