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運送業界の人手不足は深刻!現状とその原因
人手不足といわれている運送業界、トラック運送業は現在、どのような状況にあるのでしょうか?また、国はどのような対応をしているのかについて解説していきましょう。
トラック運送業の現状
トラックドライバーの不足がどれほど深刻なのかは、数値でわかります。国土交通省が発表した『トラック運送業の現状等について』では、次のような現状が明らかになりました。
- 平成30年10月の貨物自動車運転手の有効求人倍率は2.79
- 全職業の有効求人倍率は1.49
全職業に比べると、貨物自動車運転手の有効求人倍率は実に2倍にもなります。これは、トラックドライバーの人材不足が顕著に表れている数字といえるでしょう。
厚生労働省の調査でも、運輸業・郵便業の欠員率は5.7%と報告されています。欠員率とは、常用労働者数に対する未充足求人数の割合のことで、運輸業・郵便業がもっとも高い数字となっています。
トラックドライバーが不足している原因
トラックドライバーが不足している原因は一つではなく、複数の要素が絡み合って生じています。
- コロナ禍における物量の増加
- 業界の高齢化
- 仕事内容に対する賃金の安さ
さらには、業界に対する誤ったイメージや、トラックドライバーに対する偏見なども挙げられるでしょう。特に、コロナ禍におけるECサイトの需要増は、他の業界とは違った意味で、運送業界に大きなダメージを与えています。
- 人手不足 ⇒ 従業員一人当たりの負荷が増加 ⇒ 労働環境の悪化 ⇒ 離職者の増加
という負のループを生み出し、従業員のモチベーションを下げてしまう結果につながっています。
人材不足解消に乗り出した国の施策
トラックドライバーの不足は、国民の生活に大きな影響を与えると考えた国は、労働環境整備のために、労働基準法の改正などの施策を打ち出しています。
また、国土交通省が2014年から『トラガール促進プロジェクト』を展開し、女性の人材確保や育成に取り組んでいるのをご存知でしょうか?トラックドライバーの女性比率は2.3%とまだまだ低い状況ですが、働く意欲のある女性を雇用することは、人手不足解消のための打開策だと考えられています。
「男性社会」「キツい仕事」というイメージを払拭し、少しでもトラックドライバーを雇用するよう、運送会社への働きかけなども積極的に行われているのです。
若者はトラックドライバーをどのように見ている?
実際に、若者はトラックドライバーをどのように見ているのでしょうか?10代後半~20代の若者に直接聞いてみました。
仕事がキツいのに給料が安い
- 「仕事がキツそうなイメージがある。その割に給料が特別良いわけではない。」(20代・男性)
- 「父親が運転手だけど、いつもお金がないと言っている。大変そうな仕事なのに、給料が安い仕事だと思う。」(20代・女性)
- 「トラック運転手の人が荷物を降ろしているところを見たことがある。重そうな荷物を担いでいて、自分にはできないだろうなと思った。」(10代・男性)
- 「学校の就職課で、キツイ仕事だと言われた。」(10代・男性)
確かに、重い荷物を担いで荷降ろしをしているドライバーを見たら、若い人は大変な仕事だと思うでしょう。また、実際に自分の親が運転手だというケースでは、普段の様子を見ていて、給料と仕事内容が見合わないと感じている子どもの感情は複雑です。
学校の就職課、免許のこともあるとは思いますが、一般論としてキツイ仕事だと思われていることがわかります。
3K
本来の3Kとは、今までの「キツイ・汚い・危険」を表したものです。運送業界の3Kとは『キツイ・危険・帰れない』を表しています。
- 「事故に遭う可能性が上がりそう。」(10代・女性)
- 「とにかく仕事がキツイというイメージがある。SNSで宅配の人がキレてる動画を見たけど、あんな風になるのは仕事が大変だからだと思った。」(20代・男性)
- 「長距離運転手は家に帰れないって聞いたことがある。結婚して旦那が運転手だったら、全然帰ってこないことになりそう。」(20代・女性)
一昔前、バブル期のトラックドライバーには、3Kは実際あったことです。筆者も長距離のドライバー時代はほとんど家にいませんでしたが、その分稼げていたので文句はありませんでした。
事故に遭う可能性は、確かに高くなりますね。一般のドライバーと比べたら、運転している時間が格段に長いので……。
宅配便のドライバーの動画は、衝撃的でした。業界を知らない若い世代の人があの動画を見たら、ストレスMaxの仕事だと思われても致し方ないでしょう。
ブラック企業が多い
- 「会社にこき使われそう。」(20代・男性)
- 「何となく社会の底辺っていうイメージがある。働いている人が訳ありで、他の会社では働けないから、足元を見ているブラック企業が多いと思う。」(20代・女性)
- 「トラックの運転手は柄の悪い人が多い。ああいう人たちが働いてるんだから、会社もヤバい会社だと思う。」(10代・女性)
若い世代の人なりの価値観で、職業としてトラックドライバーを見ていることは、とても素晴らしいことです。若い世代の価値基準に、一部のトラックドライバーが悪いイメージを与えているのかもしれませんね。
トラックドライバーに若者が不足している原因
人手不足は、高齢化社会が進む日本全体の問題として考えられていますが、運送業界の人手不足は非常に深刻です。社会のインフラを支える重要な仕事であるにも関わらず、若い世代に敬遠されてしまうのは、どんな理由からなのでしょうか?
悪しきイメージの浸透
前出の若い世代の方の持っているイメージは、決してポジティブなものではありませんでした。実際に自分の家族がトラックドライバーだという人でも、「楽しそう」「やりがいがありそう」などという意見が聞けなかったことはとても残念です。
身近にトラックドライバーがいない人たちは、インターネットの情報や、街で見かけるドライバーを見て、ネガティブなイメージを持つことが多いのではないでしょうか?トラックドライバーや運送業界に対する悪しきイメージの浸透が、若者を運送業界に呼び込めない原因の一つと考えられます。
運転免許の改正
2017年に改正された道路交通法で、運転できるトラックの種類が変わり、準中型免許が新設されました。
準中型自動車免許 | 18歳以上 車両総重量3.5t以上7.5t未満 最大積載量2t以上4.5t未満 |
中型自動車免許 | 20歳以上・普通免許等保有2年以上 車両総重量7.5t以上11t未満 最大積載量4.5t以上6.5t未満 |
大型自動車免許 | 21歳以上・普通免許等保有3年以上 車両総重量11t以上 最大積載量6.5t以上 |
準中型免許は、18歳以上であれば運転歴に関係なく取得できますが、18歳で免許を取得したとしても、中型免許は20歳にならないと取得できません。
準中型免許でも就職は可能ですが、思うように稼げないという現実もあります。「免許持っていればトラックドライバーで稼げる」という時代が終わり、若者が就職や転職を考えるハードルが上がってしまったと考えられるでしょう。
若者の車離れ
若者が車を持たない理由は、いくつか挙げることができます。
- 電車やバスなどの公共交通機関のほうが便利
- ガソリン代・車検代など維持費がかかる
- 渋滞が嫌・時間が読めない
- 駐車場が高い
- お酒が飲めない
また、カーシェアリングなどのサービスが提供されている現在は、必要なときにレンタカーやカーシェアリングを利用すれば十分という人が増えています。
筆者がトラックドライバーだった頃は、車は一つのステータスで、没頭できる趣味でもありました。「運転が好き、車が好き、だから仕事も車関係が良い」という人が一定数存在したのです。
若者の生活に車の必要性がなければ、車を使った仕事に就こうと考える機会も少なくなるはずです。
現役の方の声「実際トラックドライバーはどうなのか?」
トラックドライバーに対する若者のイメージを、現役のドライバーに伝えてみました。彼らはショックを受けたと同時に、現在の悪しきイメージを払拭したいと、実際のトラックドライバーの姿を教えてくれました。
給料は安くない
「給料が安いっていう人がいるけど、そりゃバカみたいには稼げない。今の若い子の金銭感覚はわかんないけど、うちは奥さんと子ども3人、俺の給料で普通に暮らせてるよ。
上の子どもは普通に私立の学校とか行けてるし。運転手にもいろんな仕事があるから、全部がそうだとはいわないけど、少なくとも俺の場合は、普通に稼げる仕事だと思う。」(40代・長距離運転手)
トラックドライバーには複数の職種があって、走行距離・運ぶ荷物・トラックの大きさなどによって、給料は大きく変わってきます。一概に「トラックドライバーの給料は安い!」とはいえないので、間違ったイメージを持っている人が多いことがわかりますね。
人間関係がラク
「トラックドライバーのメリットは、面倒な人間関係がなくてラクなこと。私はいくらお給料が高くても、ドロドロした人間関係とか、イジメやハラスメントが多い仕事はお断りですね。
女性は人間関係が面倒なことが多いから。一人の時間が多いから、ストレスなく仕事ができて、おすすめなんだけどね。」(ルート配送・40代女性)
筆者の同僚にも、人間関係が原因で前職を退職し、トラックドライバーになったという人がいました。トラックドライバーは基本的に一人で仕事をすることが多いので、面倒な人間関係はあまりありません。
ラクに仕事ができること、嫌な思いをしなくても良いことは、トラックドライバー最大のメリットともいえます。
学歴関係なく働ける
「私は高校中退なので、学歴上は中卒です。今まで何度か転職をしたけど、やっぱり中卒っていうのがネックになったり、入社しても認めてもらえなかったりすることがありました。
でも、運転手は違いましたね。学歴なんて関係ない。頑張ってけん引免許まで取ったら、給料は上がるし、役職までもらえた。トラック運転手は底辺の仕事なんかじゃないし、頑張れば頑張っただけ認めてもらえる仕事ですよ。」(陸送・50代男性)
トラックドライバーは学歴や経験に関係なく働けるメリットがあります。そのハードルの低さが、底辺といわれる所以なのであれば、それは間違いだといえるでしょう。
学歴・経験不問ということは、頑張り次第で評価してもらえるということ。ハードルが低いからそれなりの人間しか集まらないというのは、大きな誤解なのです。
まとめ
若者のトラックドライバーに対するイメージは、決してポジティブなものではありません。しかし、そのイメージは誤ったものが多く、実体験に反した誤解も多くあることがわかります。
運送業界は深刻な人手不足や高齢化に悩まされており、若い世代の人材確保が喫緊の課題だといわれています。少しでも運送業界やトラックドライバーに興味のある方は、ぜひ転職の選択肢の一つに加えてみてください。
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