運送業は実際「やばい」のか?実態とやばい会社に入らないためのポイント

『運送業はやばい』と聞いたことはありませんか?仕事がキツイ・家に帰れない・給料が安い…特に異業種から転職を検討している人が不安を抱えています。

そこでこの記事では、運送業がやばいと言われる実態と、やばい会社に入らないためのポイントを元トラックドライバーがくわしく解説します。

運送業のやばい実態:会社編

やばい運送会社は実際に存在します。筆者も長い運転手生活の中で、自分の会社だけではなく、運転手仲間からのSOSは頻繁に聞きました。

中には、法律スレスレの問題や監査対象となってしまった事例もあります。どんなやばい実態があるのか、会社編からスタートです。

車両整備は運転手が担当

通常の運送会社には、自動車の点検・整備を行う整備管理者が必要であるため、自動車整備士の資格や研修を修了した整備管理者がいます。しかし、やばい会社の場合は、整備管理者は名前だけ登録し、実際の車両整備は運転手が行っているのです。

北関東の運送会社に勤務していた筆者の仲間は、タイヤ交換やローテーション・スタッドレスタイヤの履き替えは当然のように運転手が行っていると言っていました。作業のために勤務時間の1〜2時間前に出勤し、作業を行わないと会社から叱責を受けていたそうです。

運転手といっても整備のプロではありません。万が一事故につながるような整備不良があった場合、会社はどうするのでしょうか……。

荷物破損は自腹

運んでいる荷物を破損したら、給料から天引きされるという会社もあります。ホームセンターの店舗配送をしていた仲間は、出荷センターの荷造りが雑だといつも嘆いていました。

  • 重いものを軽いものの上に載せる
  • カゴ車から荷物がはみ出ている
  • 積載荷重量をオーバーするほど1つのカゴ車に詰め込む

そんな状態でトラック配送していたら、破損は起きて当たり前です。担当ドライバーの過失は一切ないのに、店舗での確認時に破損があれば、ドライバーの給料から破損した商品分の代金を天引きするという恐ろしい実態でした。

会社に出荷センターへの進言を提案しても、仕事をもらっている立場上何も言えないらしく、肥料の袋を破損した彼は、安い給料から2万円以上一気に天引きされたそうです。保険や会社の責任はどうなっているのでしょうか……。

高速使用不可

3県ほどまたぐ配送にもかかわらず、高速を使用させないという会社もあります。万が一高速を使用した場合の料金は、ドライバー負担です。

高速と一般道の配送時間の差を埋めるために、ドライバーは逆算して早めに出発しなければなりません。荷主からは高速代込みの料金をもらっているにもかかわらず、ドライバーには還元しないのです。

父親が倒れたという電話を受けた仲間が、事情を説明して帰路に高速を利用したときも、次回の給料からきっちり天引きされていて、そのことがきっかけで会社を辞めました。荷主からの指示であれば仕方ありませんが、会社が儲けるためだけに高速使用ができないというのは、ドライバーにとって異常事態です。その会社が未だに存続できていることに驚きを隠せません。

運送業のやばい実態:待遇編

運送業(特にトラックの運転手)は、給料と労働が見合わないと言われがちです。これはまんざら嘘でもなく、普通の会社ではちょっとあり得ない待遇の実態もあります。

やばい会社の待遇編も紹介していきましょう。

日給月給

正社員であるにもかかわらず、日給月給の会社もあります。日給月給は、働いた日数×日給分しか給料が支払われません。

当然有給休暇なんてものはなく、休めばきっちり給料は引かれます。仲間は父親が亡くなり、葬儀を済ませるまで一週間休みましたが、慶弔休暇もなく、次回の給料は休んだ分の日給が引かれていました。

その会社は恐ろしいことに、給料も手渡しだったそうです。いまどき有給休暇や慶弔休暇もなく、手渡しで給料……ちょっとしたカルチャーショックです。

雇用契約書がない

運送業には、雇用契約書なんてないという会社があります。会社として経営をしているのに、最低限必要なことも行っていない会社もあるのが実態です。

運転手仲間の男性から、ひどい話をたくさん聞いたときに「雇用契約書にはどんなふうに書かれているのか?」と尋ねると「そんなものは見た覚えがない」と言われました。

雇用契約書がない時点で、労働基準法に違反しますし、罰金や書類送検の対象にもなります。そんな状態を普通に続けていることもすごいですが、疑問を持たずに働いている従業員にも責任の一端があるのかもしれません。情報弱者になってしまうことで、やばい会社の実態も見抜けなくなるのです。

すぐに働ける

面接したらすぐにその日から働ける…運送業には実際にそんな会社があります。手続きも契約も関係ありません。これには運送業界の深刻な人手不足も影響しています。

しかし、転職には手続きが必要ですし、通常は余裕を持ったスケジュールで研修などを行うべきです。いきなり同乗して仕事をさせられたり、ひどいケースでは現場に連れていかれてそのまま仕事をさせられたりすることもあります。

こういったケースでは、前項で紹介した雇用契約書がないといった、根本的に会社としての責任を果たしていないことが多々見受けられ、思ったより給料が安いなどという後々のトラブルにつながりやすいのです。

運送業のやばい実態:労働環境編

運送業のやばい実態…最後は労働環境です。運送業の仕事はキツイと思われがちですが、仕事以前に働く環境が整っていないことがあります。驚きの実態を紹介しましょう。

男尊女卑の昭和社会

運送業、特に大型トラックに乗る長距離ドライバーの会社は、男尊女卑の昭和社会が根強く残っています。筆者がドライバーとして最初に勤務した会社はまさにこの類いでした。

女にはできない仕事という変な認識があり、「生意気だ」「女のくせに」などという理由でイジメられたり、仕事をくれなかったりした経験があります。会社が雇用してくれた以上、周りにガタガタ言われる筋合いはありませんが、筆者の場合は運行管理責任者が男尊女卑の権化みたいな人だったので、さんざん嫌がらせを受けました。

今でこそトラガールなどと女性の進出が認められつつある運送業界ですが、中には古い感覚を持った人たちも多く存在するのです。

休憩時間の認識がない

運送業がやばいと思われてしまう原因の一つとして、長時間労働が挙げられます。ホワイトカラーの仕事とは異なり、確かに一度ハンドルを握ったら目的地まで一直線という意識があることは否めません。

厚生労働省は、『運転開始後4時間以内または4時間経過直後に30分以上の休憩等を確保する』と定めていますが、現場ではなかなか徹底されていないのが現状です。平成26年に運行記録計(タコグラフ)の装着が義務付けられましたが、ブラックな会社は従業員に対して「どうすればタコグラフに記録がされないか」といった話をします。

休憩時間・残業時間など、当たり前のことが当たり前ではない会社があることも悲しい事実です。

アルコールチェックは飲めない人が全員分

平成23年から、点呼時にアルコール検知器の使用が義務付けられました。ドライバーによる飲酒運転のニュースが後を絶たず、痛ましい事故が各地で起きています。

プロのドライバーである以上、飲酒運転は絶対に許されるものではありませんが、アルコールチェックが実施されたことで、「前日に飲めない」「休みの日に飲めない」といった妙な現象が見られるようになりました。

筆者の知り合いの運送会社には、アルコールチェック担当の『お酒を飲めない人』がいるそうです。「少しでもアルコールが検出されて、運行ができないと荷主に迷惑がかかる」という何ともすごい理由から、抜擢された人が全員分行っているのだとか。

それってどうなのだろうと頭をかしげるような状況を、会社が先導して作っていることは看過できませんが、それもまた事実なのです。

やばい会社に入らないためのポイント5選

運送業のやばい実態を紹介しましたが、運送業すべてがやばいというわけではありません。

実際に筆者は大好きな仕事でしたし、社会を動かすのに絶対に必要な仕事だと自負していました。

これから運送業に転職を考えている方も、やばい噂ばかりに気を取られてしまうと、転職ができない状況になってしまいます。運送業への転職は、やばい会社を見抜く目を持っていれば大丈夫です。

やばい会社に入らないためのチェックポイントを5つ紹介しましょう。

会社の情報収集を徹底的に行う

転職したい会社の情報収集を徹底的に行ってください。求人票に記載されている情報を鵜呑みにすることは、非常に危険です。

インターネットで検索をすると、ホームページだけではなく、口コミを見ることができるサイトなどもあります。実際に勤務している人や、何らかの事情で退職した人の生の声がわかるのでおすすめです。

職業安定所でも、問い合わせ前にいろいろ質問することはできますので、実態を探るつもりで情報収集をしましょう。

また常に求人が出ている会社や、あまりにも高待遇な条件を出している会社は、応募しない方が無難です。常に求人が出ているということは、よほどの人手不足か社員が定着しないということですし、あまりにも高待遇という場合は、業務内容が非常に過酷な可能性があります。

自分のアンテナに少しでも違和感があったら、ちょっと立ち止まる勇気が必要といえるでしょう。

面接時に会社の状況をチェックする

面接のために会社へ行くことがあったら、状況をくまなくチェックしてください。実態を知る最大のチャンスです。

受付や社員・担当者の態度が悪い社員教育が行き届いていない・もしくは不要と考えている
保有しているトラックがボロボロ利益が出ていない・整備を行わない慣習がある
従業員の車が汚い給料が安い・洗車する時間も気力も残されていない
会社の備品が壊れている利益が出ていない・部外者が来社することがない
電話が鳴らない仕事がない
部屋の中が雑然としている人員が足りない・余裕がない

以上のような状況が確認できたら、転職先を考え直す方が良いでしょう。また先に紹介した「すぐに働いてください」といったワードが出たら、要注意です。

雇用契約書の有無や厚生年金・健康保険の手続き関係についても、必ず確認してください。

「知らなかった」では、後々自分が大変な思いをすることになります。

資格を取得する

運送業で活かせる資格を取得し、より好条件で働ける環境を作りましょう。運送業に転職するには運転免許は必須ですが、下記の資格を取得することで、会社を選択する幅が広がります。

【準中型自動車運転免許】

条件18歳以上
取得方法1. 公安委員会指定の自動車教習所へ入校 (技能教習41時限・学科教習27時限)
2. 卒業後、試験場で適性検査・学科試験を受験
運転できる車両・車両総重量3.5t以上7.5t未満
・最大積載量2t以上4.5t未満

【中型自動車運転免許】

条件・20歳以上
・普通免許等保有2年以上
取得方法・指定自動車教習所へ通って技能卒業検定に合格する
・運転免許試験場で技能試験を直接受験する
運転できる車両・車両総重量7.5t以上11t未満
・最大積載量4.5t以上6.5t未満

【大型自動車運転免許】

条件・21歳以上
・普通免許等保有3年以上
取得方法・指定自動車教習所へ通って技能卒業検定に合格する
・運転免許試験場で技能試験を直接受験する
運転できる車両・車両総重量11t以上
・最大積載量6.5t以上

【けん引車免許】

条件・満21歳以上
・普通運転免許の経験3年以上
・片眼で0.5以上、両眼で0.8以上の視力があること(眼鏡・コンタクト可)
・深視力検査3回の平均誤差が20mm以内であること
取得方法1. 自動車教習所へ入校⇒卒業
2. 運転免許センターで適性検査(学科・実技免除)
運転できる車両・トレーラー

異業種からの転職の場合は、中型免許まで取得しておくことをおすすめします。運送業界内の転職であれば、大型免許・けん引免許を持っていると、給料アップにつながることが多いでしょう。

大手の運送会社に応募する

ブラック企業は、大手よりも中小企業に多い傾向があるといわれています。異業種から転職を検討する場合は、大手の運送会社に応募することも一つの方法です。

大手の運送会社は、良い意味でも悪い意味でもネームバリューがあるため、社会の注目度が異なります。ニュースで、宅配会社のドライバーが荷物を蹴飛ばす動画が紹介されたことがありました。

以前は大手の会社でもブラックに近い状態で働いている人がたくさんいたことも事実です。しかし、働き方改革の推進により、運送業界にも多くの見直しが行われています。

特に、大手の運送会社は先陣を切って施策に取り組みます。福利厚生面などを考慮しても、大手の運送会社であれば、超ブラックということはないといえるでしょう。

転職エージェントを活用する

自分でブラックな運送会社を見極めるのが難しいと思われる方は、転職エージェントを活用しましょう。転職エージェントは、転職したい業界にくわしい担当者が、サポートやアドバイスをしてくれます。

経験豊富なエージェントであれば、業界内の動きや口コミなどをリサーチし、自分に合った会社を紹介してくれるでしょう。

転職エージェントは責任を持ったアドバイスを行ってくれるため、安易にやばい会社を推薦したりはしません。運送業が初めてでわからない・以前自分自身で行った転職に失敗してしまったという人は、転職エージェントの活用を検討してみてください。

まとめ

運送業には実際にやばいといわれる会社が存在しますが、決して運送業自体がやばいというわけではありません。

運送業は社会の基盤を支える、やりがいのある仕事です。学歴や年齢も不問、未経験者もOKという転職しやすい職業の一つともいえます。

会社を見極める目を持ち、徹底した情報収集を行うことで、やばい会社に就職してしまうリスクは十分回避できるでしょう。

運送業の仕事には、さまざまな職種があり、選択肢がたくさんあります。より良い転職につなげるために、ぜひ当サイトにご相談ください。きっと自分に合ったドライバーの仕事が見つかるはずです。

【参考】