【体験談】運送業の「ホワイト企業」「ブラック企業」の見分け方は?

運送業は、新3K=「キツい」「給料が安い」「帰れない」というマイナスなイメージが強く、若年層の方からの業界離れが見受けられます。運送業にはブラック企業ばかりではなく、ホワイト企業も確実に存在しますが、転職前にきちんとチェックしないと、ブラックな環境で働かなければいけなくなる可能性もあります。

そこで今回は、未経験者の方が運送会社を見極めるにはどんなことをチェックすれば良いのか、転職時のポイントを紹介します。元トラック運転手の筆者が実体験を基に解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

運送業のイメージはブラック!運送業の実態は?

運送業にはブラックなイメージが根強く残っていますが、実態はどうなのでしょうか?なぜ運送業はブラックといわれるのか、その原因やブラック脱却の施策などについて解説します。

ブラック企業が多いのも事実

一般の企業と比較すると、運送業界にはブラック企業が多いことも事実です。筆者の知り合いには実際にブラック企業で働いていた人も多く、「いまどきこんな会社があって良いのか?」と思うような会社も実在します。

原因としては、働いている人が情報弱者になってしまっていること、企業側が従業員の足元を見ていることなどが考えられます。

情報弱者とは、自分の置かれている状況をおかしいと判断できる力がないということです。ブラック企業とはどんなものなのか、労働者としての権利はどんなものがあるのか、会社の義務は何なのか……少々難しい話ではありますが、他の業界や一般常識と自分の状態を比較すればすぐにわかることです。

企業側も従業員に適切な情報提供を行わず、情報弱者であることを承知の上で雇用しています。「こんなものだ」と思わせることで飼い殺し状態にしているため、ブラック企業の存在は明らかにならず、是正が行われないという結果になってしまっているのです。

ホワイト企業を増やすための国の施策

国は、運送業界の実態を調査し、是正するための施策を行っています。トラック運転手がブラックといわれる原因は、長時間労働にあるとし、長時間労働を是正するために厚生労働省がトラック運転者の労働時間等の改善基準のポイントを作成し、事業者だけではなく荷主にも理解を求めるよう働きかけています。

また、国土交通省は2014年から『トラガール促進プロジェクト』を展開し、人材の確保や育成に取り組んでいます。人材不足を解消することで、現在の労働環境を少しでも改善できるように、国としても取り組みを行っているのです。

労働基準法改正は追い風になるのか

2019年に労働基準法が改正され、トラック運転手の労働時間などについて、改善基準が設けられました。この改正は運送業も例外ではなく、トラック運転手の過酷な労働環境を改善し、少しでも魅力のある職場づくりを行おうという動きがあります。

  • 労働基準法の改正(拘束時間・休息期間の定義徹底など)
  • 時間外労働への罰則金(36協定)

実態を把握した上で法律を改正し、罰則を設けることで過重労働を防ぐ施策を展開しています。ブラック企業の横行を止め、少しでもトラック運転手にとって働きやすい環境になることを目指した施策といえるでしょう。

しかし、ブラック企業は法律をすり抜ける術を持っていることが多く、法律改正が一気に追い風になることは難しいといわれています。自分自身で会社を見極める力を持ち、ブラック企業には近づかないようにすることが一番の防衛策といえるでしょう。

未経験者必読!ホワイトな運送会社を見極めるポイント

運送業の未経験者にとっては、「ブラック企業」と「ホワイト企業」は何が違うのか、見極めが難しいという方が多いのではないでしょうか?一度ブラック企業に転職してしまうと大変なことになります。では、ホワイトな運送会社を見極めるポイントを5つ紹介しましょう。

社内規定が整っている

社内規定が整っているかどうかは、最大のチェックポイントです。

  • 就業規則
  • 給与規定

があることは当たり前ですが、ブラック企業には存在しないことがあります。また、運送業ならではの社内規定として、事故を起こしたときの対応については必ず確認してください。

保険加入の有無、事故免責の金額など、ホワイト企業であればきちんと規則があるはずです。一般の人よりも多くの時間を運転するトラック運転手は、事故に遭う確率も高いです。万が一のときに大きな損害を背負わされることがないよう、きちんとチェックしてください。

福利厚生制度が充実している

福利厚生制度が充実しているかどうかもチェックしたいポイントの一つです。

福利厚生制度は、会社側が従業員のために定めている制度なので、福利厚生が充実していない会社の場合は、結果的に従業員が損をしてしまう可能性があります。

法定福利厚生制度・健康保険
・雇用保険厚
・生年金保険
・介護保険
・労災保険 など
法定外福利厚生制度・通勤手当・住宅手当
・社宅
・育児休暇・介護休暇の設置
・疾病見舞金・弔慰金
・社内預金制度 など

法定外福利厚生制度は企業の規模などによって異なりますが、法定福利厚生制度は企業に義務付けられている制度です。法定福利厚生制度を導入していない企業は論外、できる限り法定外福利厚生制度が充実している会社を選ぶことが、ホワイト企業を見極めるポイントです。

離職率が低い

「離職率が低い」というと難しく聞こえますが、簡単にいえば「人の出入りが激しい会社は避ける」ということです。

離職率は、入社した社員に対する辞めた社員の割合です。離職率が高ければ高いほど、人の出入りが激しいということです。人の出入りが激しいということは、退職する理由が何かしらあると考えるべきなのです。

面接で「御社の離職率は……」と聞くわけにはいかないので、平均の勤続年数を聞いてみると良いでしょう。社員の年齢なども加味すれば、離職率が高いか低いかは一目瞭然です。

経営が安定している

ホワイト企業は経営が安定しているため、従業員への還元があります。

  • ボーナスがきちんと支給されている
  • 有給休暇の取得や健康診断の実施などが適切に行われている
  • 福利厚生制度が充実している

当たり前のことのように思えますが、このような従業員向けの還元は、ブラック企業にはあり得ません。どんな企業もピンチはあるかもしれませんが、基盤のしっかりしているホワイト企業であれば、やがて持ち直して行くはずです。

面接時は緊張してしまいがちですが、会社の様子やボーナスの支給実績などは確認するようにしましょう。

トラックの整備を丁寧に行っている

トラックの整備は、ドライバーの命はもとより会社の信頼に関わるものなので、ホワイト企業であれば丁寧に行う部分です。

運送会社のトラックは、一般家庭の車よりも消耗が早いため、修理・点検・買い替えなどを徹底して行う必要があります。仮に古いトラックだとしても、きちんと洗車をし、タイヤ交換などを行っていれば問題はありません。

トラックの中身は外見ではわかりませんが、排気ガスの様子である程度メンテナンスの度合いを知ることができます。黒い排気ガスをモクモク出しているトラックは、オイル交換をしていません。

荷台の幌が切れていたり、観音(後ろのドア)がへこんでいたりするのは整備不良です。ピカピカの新車ではなくても、どの程度メンテナンスを行っているのかがブラック企業とホワイト企業の分岐点といえるでしょう。

運送業にありがちなブラック企業

一般的なブラック企業と、運送業のブラック企業では、少々特徴が異なります。運送業にありがちなブラック企業の特徴を紹介しますので、万が一該当するものがあったら要注意です。

手続きせずすぐに働ける

運送業にありがちなブラック企業の特徴は、「すぐに働けるよ」という安易さです。

入社する際、一般的には契約書や保険関係の書類など提出する書類があり、手続きをした後に入社となります。運送業のブラック企業の場合、最悪のケースは契約書が存在しない、もしくは勝手に作成されていることがあります。

完全に法律に抵触しますが、まかり通ってしまうこともあるので注意しましょう。するべき手続きを省略するようであれば、ブラック企業の可能性大です。

トラックがボロボロ

たまに、自分の車を運転していて、洗車もされていないボロボロのトラックを見かけることはありませんか?中には社名が剥げかけていたり、色が褪せたりしているとんでもないトラックがあります。

そんなボロボロのトラックに乗せている運送会社は要注意です。ブラック企業あるあるの一つなので注意が必要です。

面接に行ったら、運送会社の車庫をチェックするとよくわかります。昼間出払ってしまっている場合は、朝や夜などに再度確認に行くことをおすすめします。

担当者・受付など社員の感じが悪い

ホワイト企業は、社員教育が徹底されているため「感じが悪い」ということはあまりありません。しかし、ブラック企業の場合は、「社員教育って何ですか?」という感じが脈々と受け継がれているため、基本的に社内にいる人のほとんどが感じ悪いです。

受付があまりにもぶっきらぼうだったり、担当者なのにやる気がなさそうだったり、酷い場合は社内で怒鳴り合っている会社もあります。

感じが悪いのは、何か不満を抱えている証拠です。働きにくい環境に追い込まれている人は、無愛想で感じが悪くなるのが運送業のブラックあるあるです。

常に求人募集されている

どんな媒体でも、常に求人が掲載されている企業は、要注意です。ブラック企業の可能性が非常に高いです。

新聞の折り込みやフリーペーパー、求人サイトなど、近年では複数の媒体があるので、一つの媒体で成果が出なければ、ブラック企業は常に募集を出し続けます。理由は、社員がいないから。入ってもすぐに辞めてしまうからです。

新規事業の拡大や新しい事業所の開設などは別として、複数人を常に募集している企業は注意が必要です。

会社の義務を果たしていない

どんなに小さな企業でも、人を雇うときには会社の義務が発生します。

  • 労働者災害補償保険の加入
  • 雇用保険の手続き
  • 労働者名簿・賃金台帳の調整
  • 定期健康診断
  • 社会保険の加入

などが義務付けられていますが、ブラック企業はこのような会社の義務を果たしていないケースが多いものです。

特によく見られるのが、社会保険に加入しないパターンです。会社員のはずなのに国民健康保険に加入しているという場合は要注意です。会社が経費の負担から逃れている可能性があります。

面接時には社会保険の有無を確認することが手っ取り早いので、必ず確認しましょう。

運送業の未経験者にありがちな転職失敗事例

筆者は元トラックドライバーです。筆者の周囲には多くの転職経験者がいましたが、彼らが未経験で初めて運送業へ飛び込んだときに、いくつか失敗をしたという話をよく聞かされました。運送業界未経験の方にありがちな、転職の失敗事例を3つ紹介します。

求人票の条件と実際の条件にギャップがある

求人票の条件と実際の条件にギャップがある……これは運送業界未経験者の方によくある失敗例です。業界を知らないということは、専門用語や経験者なら見抜けるウソがわからないということです。職安や転職エージェントを利用せずに応募した場合によく起こります。

  • 求人票に記載されている給料と実際の給料が違う
  • 求人票の勤務時間とは全く違う勤務時間を指定された
  • 求人票には週休2日記載されているのに実際は週休1日だった
  • 求人票に記載されている仕事内容とは異なる仕事を任された

これは紛らわしい記載をしている企業が悪いのですが、確認をきちんとしなかった応募者にも責任があります。未経験の方は、自分一人で転職活動を行うのではなく、職安(公共職業安定所)を通したり、転職エージェントを活用したりして、アドバイスを受けながら活動するのが一番安全です。

必要な手続きをしてくれない

入社に必要な手続きだけではなく、引越しや結婚、出産など、変化するライフステージに必要な手続きをしない会社は、要注意です。

従業員として雇用される以上、従業員の生活に関わる手続きは会社が行うことが多いため、早急に対処するのが当たり前です。入社時に雇用契約書を確認せず、「すぐ働いてくれると助かる」と言って働かせるような会社は、ブラック企業の確率は果てしなく100%に近いといえるでしょう。

簡単な見分け方としては、事務担当の社員がいるかどうかです。同族企業で仮に身内であっても、社員の管理を行う担当者のいない会社は入社を再検討する必要があります。

事故に関する規定が整っていない

トラック運転手として働く上で、一番注意したいのが事故に関する規定です。交通事故は、自分に過失がなくても遭遇してしまうことがあります。過失があった場合に、会社としてどのような対応をするのかをきちんと確認することが大切です。

  • 事故に関わる賠償はすべて自腹
  • トラックの修理なども保険は使わない(来年度の保険料が上がるから)
  • 免許が停止や取り消しになったら解雇

これは、実際に筆者の周囲で実際に起こった事実です。いずれも入社時に事故に関することについて確認をせず、会社側から「規定に書いてある」と言われたケースだったため、最終的には転職を余儀なくされています。

一般のドライバーよりも交通事故のリスクが高い分、会社としての対応方法を確認し、納得がいかなければ勤務しない方が無難です。

まとめ

運送業界は深刻な人手不足に悩んでいる状態です。経験者だけではなく、未経験の方にもぜひ挑戦して欲しいというのが現状です。

しかし、運送業界にはまだまだブラック企業が存在し、ホワイト企業のイメージすらも侵害しているといえるでしょう。運送業界にブラック企業があるのは事実ですが、見極めることができるポイントもあるので、自分の応募する企業を徹底的にチェックしましょう。

未経験の方で自分の情報収集に自信がない場合は、ぜひ当サイト「ドライバーコネクト」にご相談ください。未経験者の転職を成功に導くためには、業界に精通した専任のスタッフによる手厚いサポートが必要です。 ブラック企業への就職を阻止するためにも、「ドライバーコネクト」を活用してみてください。