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女性だからってバカにするな!本当に腹が立ったエピソード
筆者がトラック運転手として勤務していた頃は、とにかく女性に対する蔑視が強かったのが印象的です。「女のくせに」「女だから」と言われることが多く、荷主や荷降ろし先でも「あれ?女の人なんだ」などと驚かれたこともありました。
女性というだけで下に見てバカにされる世界…今では考えられないかもしれせんが、筆者が腹が立ったエピソードを3つご紹介しましょう。
男性ドライバーよりも給料が安いってどういうこと?
当時は同じ仕事をしていても、男性より女性の運転手の方が給料が安かったです。仕事内容も乗っているトラックの大きさも同じなのに、月給で2~3万円ほど安かったのを覚えています。
大型免許を取得して長距離をやっていたときも、つい最近入ってきた年下の男性が4トン車で地場仕事(地元を拠点とする仕事)をしている金額とあまり変わりがありませんでした。会社が悪いのではなく、業界全体が男尊女卑…女性は何となく下に見られて、同じように働いても給料が安いというあり得ない状況でした。
面接のときに志望動機とかを異様に聞かれるのは何故?
運送会社へ転職の面接に行くと、必ず志望動機を異様に聞かれました。「女性なのに何でトラックに乗ろうと思ったの?」「他にやりたい仕事はないの?」何でトラックの運転手になりたいのか…というのは志望動機として当然のことなのですが、「女性なのに」という言葉はいらないですよね?
挙句の果てに「うちは女性ドライバーがいないから」という理由で、面接に落ちたこともあります。はなから「女性にはできない」と思い込まれていて、女性の採用なんて考えてもみなかったんだろうなぁと思いますが、こっちには実績もあるのに…と非常に不可解で腹が立ちました。
荷主や荷降ろし先で当たり前のようにバカにされる
運送会社だけではなく、荷主や荷降ろし先でも女性だからという理由でバカにされたことがあります。「ずいぶん元気だね~」と嫌味たっぷりにからかわれたり、「昔はヤンキーだったの?」などと訳の分からないことを聞いてくるオジサマ達も多かったです。
他社の運転手に意味もなく張り合われたり、「大丈夫なの?」と信用してもらえなかったりすることもありました。仕事はきっちり行っていたので、クレームなどを受けることはありませんでしたが、業界に飛び込んで最初の4~5年は非常に働きづらかったのを覚えています。
女性でも稼げるの?トラック運転手のお財布事情
よく周りから聞かれたのは、「トラック運転手って女でも稼げるの?」ということ。筆者を含めた当時の女性トラック運転手は、バブル期ということもあり年収でいうと600万円以上が当たり前でした。
特に大型の長距離運転手は、男性並みに稼いでいたものです。ちなみに2019年に全日本トラック協会が行った調査結果を基に、トラックドライバーの平均賃金(給料)をご紹介しましょう。
職種(一般) | 2019年・平均賃金(円) | 2018年・平均賃金(円) | 対前年比(%) |
---|---|---|---|
男性運転者平均 | 335,700 | 338,500 | 99.2 |
男性・けん引運転者 | 383,500 | 391,500 | 98.0 |
男性・大型運転者 | 356,000 | 355,100 | 100.3 |
男性・中型運転者 | 282,800 | 297,100 | 95.2 |
男性・準中型運転者 | 284,900 | 294,400 | 96.8 |
男性・普通運転者 | 282,000 | 294,400 | 95.8 |
女性運転者平均 | 274,400 | 294,700 | 93.1 |
女性・けん引運転者 | 348,300 | 344,500 | 101.1 |
女性・大型運転者 | 320,200 | 316,200 | 101.3 |
女性・中型運転者 | 247,700 | 279,000 | 88.8 |
女性・準中型運転者 | 291,200 | 281,500 | 103.4 |
女性・普通運転者 | 216,200 | 263,100 | 82.2 |
参考:「2019年度版トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態」について | 全日本トラック協会
トラック運転手には複数の職種があり、乗車するトラックの大きさなども給料のベースになります。上記の表を見ても、女性の大型運転手は男性の中型運転手よりも稼いでいますよね?女性だからといって稼げないというのは違います。
職種によって違うというだけで、性別は関係ありません。筆者の同僚にはシングルマザーとして子育てをしながら働いていた人がいましたが、子ども達を大学まで進学させ、何不自由ない生活を送っていました。一生懸命働いた対価としてもらえる給料は、決して低いものではありません。
女性のトラック運転手って結婚生活に支障はある?
女性がトラック運転手を続けるうえで一番問題となるのが、結婚や出産です。
筆者の仲間には、既婚者もシングルマザーも独身者もいました。彼女たちはライフスタイルの変化と仕事の両立をどのように行ってきたのか、現役の運転手に話を聞きました。
普通の家庭を築きたいならすすめない
【Tさんのプロフィール】
- 40代・既婚
- ダンプカーの運転手
Tさんは会社員の旦那さんと子ども二人の4人家族。働き始めたころは旦那さんとの喧嘩が絶えなかったそうです。
「うちは旦那が普通の会社員で、土日休みの会社に勤めてます。結婚する前からトラックの運転手をしていたので、ある程度どんな仕事かは伝えてあったけど、実際に一緒に生活するとなると難しい部分は多いですね。旦那が休みでも私が仕事だったり、子どもの行事に休めなかったりすると、「何で休みも取れないんだ」とか言うんですよ。
でもこっちは仕事があれば走らなきゃいけないし、忙しい時期は休みが思うように取れなかったりするから、わかってほしいといくら話をしても、価値観が違いすぎてダメでした。子ども達の方が理解があって、疲れて帰ってくると家事を手伝ってくれたり、気を遣って寝かせてくれたりするんですけど、旦那は違う。
だから普通の家庭を築きたいって思うんだったら、あまりおすすめはしません。でも私はこの仕事が好きだし、別に旦那の価値観が一番ではないと思うので、辞める気はないですよ。」
旦那もトラック運転手ならOKかも
【Kさんのプロフィール】
- 50代・既婚
- 旦那さんと同じ会社でルート配送を担当
Kさんは筆者の元同僚で、社内結婚をした人です。夫婦ともにバリバリと働いている現役のトラック運転手で、筆者も随分お世話になりました。
「私の仕事はコンビニのルート配送です。とにかく時間は不規則だし、連休は取りにくいし…結構大変な仕事かもしれませんが、旦那が同じ会社なので、理解はありますね。
仕事はきついけど福利厚生はしっかりした会社なので、私は育休を取りながら仕事を続けました。今でこそ子どもも大きくなって手がかからなくなったけど、やっぱり小さい頃は大変でしたよ。
でも旦那が同じトラック運転手だと、働きやすいんですよね。同じ会社っていうこともあるけど、協力体制が作りやすい。価値観とかも似てる気がするし、お互いの大変さがわかる…みたいな感じで。
だからトラック運転手だから結婚が不利とか、そういうことは思ったことはありません。確かに普通の会社員とかだったら難しい部分もあるのかもしれないけど、旦那もトラック運転手なら、意外とうまくいくことが多いですね。」
子どもが産まれたら仕事を選ばなきゃいけない
【Gさんのプロフィール】
- 40代・シングルマザー
- 大手宅配会社の地場配送を担当
Gさんは子育てをしながら、現役でバリバリ働くシングルマザーです。離婚をきっかけに長距離運転手から宅配会社へ転職をしました。
「トラックの運転手は、大好きな仕事です。うちは離婚して旦那がいないから、子どもを責任もって育てなきゃいけない。でも子育てってすごいお金がかかるんですよ。
食費・教育費・光熱費…大きくなればなるほど、かかる金額がでっかくなるし、元旦那は養育費も払ってくれないようなダメ男だったから、私が稼ぐしかなかった。本当は長距離でバリバリ稼ぎたかったけど、子どものお弁当とか学校行事とかが結構あって、家を長く空けるのは無理ってなって、宅配の会社に転職しました。長距離の運転手はできなかったけど、職種によっては子育てしながらでも十分働ける仕事だと思います。」
国の推進するトラガールプロジェクトってどう思う?
トラガール促進プロジェクトとは、2014年から国土交通省が主導で行っている取り組みのことです。女性ドライバーを増やすだけではなく、経営者等に新しい視点を提供し、業界のイメージ改革を図るための施策です。
深刻な人員不足を課題とする運送業界に新しい風を吹き込む意味で行われていますが、実際の現場ではどのように捉えられているのでしょうか?
カッコつけたって根本を変えなきゃ継続しないかも
Tさん「トラガールプロジェクトっていうのがあるのは知っています。でも現場は何も変わってないですよ。うちは特に建築現場とか、道路工事とか男性の多い現場にお世話になる仕事なので、女性が増えたっていう感覚はありません。
トラガールとかってカッコつけてるけど、女性が働きやすい職場づくりが肝心なんじゃないかと思います。未だに女性が働きにくい環境は多いし、業界自体が男性至上主義みたいなところがあるでしょ。そういう根本的なことを変えないで「働いてください」って言ったって、働きにくければ皆辞めちゃいますよね。」
業界にはびこる男尊女卑を何とかして!
Kさん「男女平等社会とか言われてる今の日本で、男尊女卑みたいな感覚はおかしいと思いますね。女性だから何?って思うことが多いけど、結局昔からの悪しき習慣が残っているっていうことだと思うんです。
トラック野郎の映画見てても思うけど、かっこいい男の象徴みたいな部分があるじゃないですか。そうなると女性なんて…っていうことになるんじゃないかな。
未だに「女のくせに」とか言う人もいますよ。パワハラ・セクハラ・モラハラ…運送業界は何でもアリなんでしょうか?(笑)
働く女性を増やしたいのなら、女性が働きやすい職場を作るべきです。そして男尊女卑みたいな部分を失くさなければ、どんどん女性の運転手は減ってしまうでしょうね。」
女性でもできる仕事じゃなくて女性だからできる仕事では?
Gさん「トラックの運転手って、楽しいけど難しい仕事だと思うんです。特に私は宅配の会社に勤めているので、女性ならではの心遣いを評価してもらえることがあります。
よく求人とかを見ると「女性でもできる」っていうキャッチコピーを見るけど、女性でもじゃなくて女性だからできる仕事って考えるべきなんじゃないかと思うんです。
トラガール推進プロジェクトは、一応女性がトラック運転手になる啓発活動みたいですが、実態がつかめていないし、まだまだ「女性でも働ける」みたいな感覚が多いと思います。『女性でも』じゃなくて『女性だから』できる仕事なんだっていうことを、もっとみんなにわかってもらうことの方が先なんじゃないでしょうか?」
まとめ
女性トラック運転手の本音はいかがでしたか?女性の運送業界進出は未だ難しい部分もあるかもしれませんが、実際に業界で活躍している人は多くいます。
人材不足を解決する施策として行われている『トラガールプロジェクト』も、現場に則した内容でない限り、劇的な支援とはならないかもしれません。ただ人材不足が問題となっている今、少しでも女性トラック運転手が増えると良いのに…と願っています。
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