関東~関西・関東~東北の長距離ドライバーAさんの1週間
長距離ドライバーは運ぶ荷物によってスケジュールや走行距離は大きく変わります。また、定期便のように毎回同じルートを配送するケースと、配送先がコロコロ変わるケースがあり、所属した運送会社によって異なることが特徴です。
今回インタビューをお願いしたAさんは、南関東の運送会社に勤務する40代の男性です。運んでいる荷物は企業秘密だそうですが、関東から関西のコースと関東から東北のコースを担当しています。
会社の規模は中堅ですが、Aさんいわく「ブラック企業みたいなスケジュールを組まれることもある」とのこと。実際にどんなスケジュールで動いているのか、8月の関西便を例に挙げて教えてもらいました。
おおよそのタイムスケジュール
「うちの会社は関西便は朝の出発、東北便は夜の出発となっていますが、しなければいけないことやタイムスケジュール的にはあまり変わりはありません。ただし関西便の方が時間がかかるので、少し前倒しで出発することもあります。」
時刻 | 業務内容 |
---|---|
4:30 | 前日に積み込みをした荷物の確認 |
5:00 | 運行前点検・アルコールチェック・点呼 |
5:30 | 出庫 |
9:00 | 休憩・朝食 |
9:30 | 運行再開 |
14:00 | 休憩・ちょっと遅い昼食 |
15:00 | 運行再開 |
20:00 | 休息 |
翌6:30 | 運行再開 |
9:00 | 荷降ろし先へ到着・荷降ろし |
「法律に則ってるのかどうかは正直わかりませんが(笑)、これが1運行のスケジュールです。帰りは集荷がある時とない時で運行が大きく変わりますが、自分の場合はあまり集荷がないので、できる限りその日のうちに家へ帰れるようにちょっと無理して走っちゃいます。」
3日で1運行がメイン
Aさんの会社は3日で1運行がメインになっているとのこと。
「会社のスケジュールでは、荷降ろしした日の次の日に帰るようになっています。だからそんなに無理をして寝ずに走るなんていうことはありません。ただ、連休や行楽シーズンなんかで渋滞がすごいときは、思うように走れなくて、休憩時間や睡眠時間を調整しなくちゃいけないこともあるのが現実ですね。
昔いた会社は、荷待ち時間がすごくて、寝ずに走ったこともありました。その時に比べたら今はまだマシな方だと思います。」
Aさんによると、運ぶ荷物によって時間をうるさく言われたりすることもあるそうです。同じ長距離ドライバーでも1週間のスケジュールも大きく異なることがあると教えてくれました。
現場は2024年問題が不安
運送業界は深刻な人手不足が続いています。それに追い打ちをかけるかのようにやってくるのが2024年問題です。
運送業界の2024年問題とは、時間外労働時間が年間960時間に制限される働き方改革法の適用によって起こるさまざまな問題のことです。
働き方改革法は、大企業が2019年4月・中小企業が2020年4月に適用されていますが、運送業に適用されるのが2024年4月です。2019年から2024年までの5年間は猶予期間とされ、2024年4月から本格的な適用となっています。
特に、現場で懸念されているのは、ドライバーの給料減少についてだそうです。
「労働時間が減るっていうことは、自分達にとっては給料が減るっていうことなんです。長距離ドライバーは残業時間が多いので、残業代でもらっている金額の割合が大きいんですよ。
うちの会社は長距離ばっかりなので、何がどう変わるのかはわかりませんが、残業代が減るのならその分基本給を上げて欲しい。そうしないと手取りの金額は減ることになるでしょう?
仲間内には、家のローン抱えてたり親の面倒見ていたりする人なんかもいるから、どうなるんだろうってみんな不安がってます。未だに会社からは具体的な話が出ていないので、どうなるかわからないところも不安材料です。」
現役長距離ドライバーに聞いたよくある質問
Aさんいわく、長距離ドライバーは誤解の多い仕事だといいます。ここでは長距離ドライバーに関する質問をAさんに回答してもらいました。
長距離ドライバーってキツくない?
「キツくないといったら嘘になりますね。確かに眠い時もあるし。でも一番キツいって思ったのは、運転することじゃなくて荷物の積み降ろしです。重たい荷物を手積み手降ろししなきゃいけないのは、相当キツい。年齢的なもの(※Aさんは40代後半)もあるかもしれませんね。若い頃はあまりキツいと思わなかったんで。
確かに昔に比べたら1運行の負担が少なくなりました。でも同じ長距離ドライバーでも運んでる荷物によってキツさが違うんじゃないでしょうか。自分が何を運ぶのか、会社にどんな取引先があるのかを調べてから転職した方が良いかもしれませんね。」
運転していて眠くなることはある?
「あります(笑)。△△さん(筆者)が現役の時も、眠くならない方法みたいなのありましたよね?でも本当に眠い時って何をしてもダメなんです。
だから、自分の場合は、本当に眠くなったら15分でも20分でもパーキングで車止めて寝ます。それが一番手っ取り早い。眠いまま走り続けるのはあり得ないくらい危ない。エナジードリンクもガムもタバコも、眠い時は何してもダメなことがわかっているので、一旦寝ます。」
給料はいくらぐらいもらえるの?
「うちの会社は手取りで45万前後。これには残業代も含まれています。あと資格手当(※Aさんは大型とけん引免許)・住宅手当・通勤交通費も含まれてますね。
長距離ドライバーの給料って、本当に会社によって違いますよ。前にいた会社だと今よりキツいスケジュールだったのに手取りで35万円くらいのところもあったし。
自分の経験では同族企業は安いです。大手の運転手に話を聞くと、基本給は変わらないけど休みが多いし、福利厚生も充実している。だからやっぱりある程度規模のある会社じゃないと、ちょっと不安ですね。」
長距離ドライバーのメリット・デメリットを教えて!
「自分は運転が好きなので、好きなことで飯が食えるのが一番のメリットです。あと、めんどくさい人間関係がないことは良いと思います。
男ばっかりの業界なのに、たまにイジメみたいなのがあるんですよ。でもそれは本当に限られた環境だけなので、多少嫌なヤツがいても我慢はできます。あと免許を取ったりすればそれなりの給料がもらえること。これでも家族を何とか食わせていけてるので、感謝しています。
デメリットは……年を取ったら身体がキツいんだろうなっていうことと、たまに人からバカにされることくらいですね。運転手っていうと『あ~』みたいな顔されることあります。気にしてませんけど、社会的な地位は低いのかもしれません。」
長距離ドライバーを辞めたいと思ったことは?
「ビックリするくらいないですね。キツいな~って思うことはあるけど、それはどんな仕事でも一緒だと思うし、他にできる仕事があるわけじゃないですからね。
自分たちの世代はちょうど子どもにお金のかかる時期だし、一定の収入がないのは厳しいですよ。辞めたいっていうか、あんまりにも理不尽なことがあって『勘弁してくれ!』って思うことはありますけど、自分がこれだけ稼げる仕事はないって思って働いているので、その質問の答えはNOです。」
長距離ドライバーに向いている人ってどんな人?
「マイペースで仕事ができる人でしょうか。あとは一人でいることが苦にならない人っていうのもあるかもしれません。△△さん(筆者)もそうだけど、基本的に群れるのが嫌いっていう人が多いでしょ?だから、すごく気軽に付き合える。
気の合う仲間がいればそれはそれでOKだし、仮に仲の良い人ができなくても一人の時間が苦にならなければかえって良いのかもしれないし。体力勝負だから体力ある人の方が良いんでしょうけど、それは人それぞれですからね。やっぱり、気持ち的に一人が好きっていう人じゃないと、精神的にやられちゃう気がします。」
トラックで寝るのって疲れは取れる?
「慣れます(笑)。慣れればぐっすり眠れるし、疲れも取れます。大型トラックには座席の後ろにベッドがあるので、ちゃんと足を伸ばして横になれるスペースも確保されてるしね。
自分は東北に行くことがあるので、布団を積んでます。布団を敷いて寝れば、家のベッドとあまり変わりませんよ。」
家に帰れないのは寂しい?
「子どもが小さかった頃は寂しいなぁと思う時期も正直ありました。特に下の子は自分があんまり家にいなかったので、懐かなかったんですよ(笑)。家に帰って抱っこして泣かれたりして、寂しいなと思ったことはあります。
でも、子ども達もだいぶ大きくなってきて、自分の仕事を理解してくれるようになってからは、夜にLINEやメールをくれるので、寂しさはあまりなくなりました。うちは奥さんが運転手の仕事に理解を示してくれているので、助かっています。」
長距離ドライバーに転職するときのポイントとは?
今回のAさんへのインタビューの中で、これから運送業、長距離ドライバーへ転職を検討している方向けに、転職するときのポイントについてもお話を聞いてみました。
専門用語を理解しておく
「運送業界には専門用語があって、当たり前のように面接のときでも専門用語を使う人が多いです。そのため、一定の専門用語は知っておいた方が良いですね。
そうでないと何を言ってるのかわからないっていうことになりますから。話を聞いていてわからなかったら説明を求めるくらいでちょうど良いと思います。」
運行スケジュールを必ず確認する
「会社によって運行スケジュールは全く違います。必ずどんなスケジュールで運行をしているのかを確認した方が良いです。
自分の昔の同僚で、とんでもないブラック企業に転職しちゃった人がいて、その人は身体を壊して退職したという例もあります。何を運ぶのか、どこまでどのくらいの時間をかけて運ぶのか、しっかりと確認した上で入社するべきです。」
事故に関する規程はどうなっているか
「事故を起こしたときの規定を確認することも大事だと思います。特に自己負担の割合は絶対に確認しておくべきです。
運送会社の中には、修理費は全額自己負担とか、免停になったら仕事を干されるとかいろんなペナルティを与えるところがあります。保険に入ってるはずなのに、修理費全額自己負担なんてありえないですよ。免停はこの仕事をしていたら可能性はゼロじゃない。自分の過失が大きい場合はしょうがないけど、一般的な交通事故だったらある程度会社に守られるべきだと思うんです。
ちなみに、うちの会社は自己負担はゼロです。でも無事故手当が半年間もらえなくなる。それは仕方のないことだと納得ができるので、実際にどんな規程になっているのか、聞けるのであれば事故を起こした人の例がわかると良いですね。」
荷主や運ぶ荷物の確認は必須
「荷主や運ぶ荷物の確認は絶対にするべきです。同じ長距離でも生鮮食品と機械部品とでは扱いも負担も違う。自分の場合、荷待ち時間が長かったのは乳製品の工場でしたね。
商品が出来上がるまで待たなくちゃいけないから、平気で2~3時間は待たされるんです。数が多ければ多いほど待つ時間は長くなって、荷主もそれが当たり前だと思っている。
それではこっちの身体がもたないんですよ。未経験の人だと知らないだろうって高を括られちゃうこともあるから、荷主と荷物は絶対に確認して欲しいと思います。」
家族の理解を得ておく
「長距離ドライバーは家族の理解がないと長く続けられません。自分もそうですけど家に帰れないっていうことは、奥さんに家事や育児をすべて任せなければならないし、当然仕事があれば学校行事とかにも参加できないですから。同僚の中には奥さんに反対されて辞めることになったり、ひどい場合は離婚したっていうこともあったりします。
うちは自分がこの仕事をしていることで家族が生活できているっていう認識を奥さんが持ってくれているので、子ども達の不満とかは奥さんが受け止めてくれてるんですよね。あとは、ものすごく危険な仕事だって勘違いしていることもあって、反対されるケースもあるんです。長距離ドライバーの仕事はどんな感じなのか、実際の生活はどうなるのかを家族でシミュレーションするのが良いと思います。」
まとめ
Aさんのインタビューは、現役長距離ドライバーの生の声として、非常にリアリティがありました。運送業界は深刻な人手不足に悩んでいる上、これから2024年問題など課題は山積していることが現実です。
しかし、そんな中でも現役のドライバーたちは、社会生活を支えるために頑張っています。Aさんの実体験から得られたポイントを理解して、転職活動を行えると失敗に終わることは少ないはずです。
同じ長距離ドライバーでも、運ぶ荷物やスケジュールなどは異なります。自分の希望に合った条件なのか、一人の転職活動が不安だという方は、ぜひ「ドライバーコネクト」にご相談ください。
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