【2022】運送業の求人に「未経験」でも応募して良い?注意したい求人内容のポイントとは

運送業界は、比較的転職者の多い業界です。未経験者で運送業界に挑戦しようという人も少なくありません。

ただし、経験がないからこそ、知っておきたい注意点やポイントがあります。入社後のギャップに苦しめられないためには、事前の情報収集を徹底し、失敗しないための準備が必要です。

どんなことに注意をして求人内容を見るべきか、元トラックドライバーの筆者が注意したい求人内容のポイントについて解説します。

運送業未経験でも求人に応募して大丈夫?

未経験で運送業へ転職することは可能なのか?答えは「YES」です。

運送業は転職者が多く、他業種からも転職しやすい傾向にあります。運送業にはさまざまな職種があり、「未経験OK」「未経験者歓迎」などと募集要項に書かれていれば、未経験の方でも転職は可能です。

未経験OKとしている企業は、未経験者に対してしっかりとした研修を行います。中には、運転免許取得の支援制度を設け、普通免許から準中型・中型・大型と、入社後にスキルアップをさせてくれるケースもあるため、未経験者でも活躍できるフィールドは用意されているといえるでしょう。

運送業についての基礎知識

未経験者の方が一番しなくてはならないことは、運送業に関する知見を深めることです。運送業とはどのような業界でどんな業務を行うのか、運送業に関する基礎知識をくわしく解説します。

仕事内容

運送業の仕事内容は、大まかに分類すると下記のようになります。

トラックの大きさ・小型(積載量2t以下)
・中型(積載量4tクラス)
・大型(積載量10tクラス)
トラックの種類・平ボディ
・バンボディ
・保冷車
・冷凍冷蔵車
・ウイングボディ
・ダンプ車
・トレーラー など
トラックを使用した業務・荷物の輸送・配送
・宅配引っ越し など
所属する企業・運送会社
・メーカー
・宅配会社
・引っ越し会社 など

運送業=トラックドライバーの仕事内容は、職種や所属する企業によって異なります。同じ運送業でも仕事内容が異なり、配達先や荷主も変わることが特徴です。

職種仕事内容
長距離輸送荷主から請け負った荷物を所定の配送先まで届ける
ルート配送特定の荷主から特定の配送先へ荷物を届ける
宅配便個人宅や会社・店舗などへ請け負った荷物を届ける
引越し荷物の運び出し・搬入・設置・梱包・輸送を行う
集荷依頼のあった個人宅や企業へ荷物を受け取りに行く
荷物の積み下ろし運ぶ荷物をトラックに積み込む⇒配送先で積み込んだ荷物を下す

収入

運送業の収入について、2019年に全日本トラック協会が行った調査結果では以下のように報告されています。

職種(一般)2019年平均賃金(円)2018年平均賃金(円)対前年比(%)
男性運転者平均335,700338,50099.2
男性・けん引運転者383,500391,50098.0
男性・大型運転者356,000355,100100.3
男性・中型運転者282,800297,10095.2
男性・準中型運転者284,900294,40096.8
男性・普通運転者282,000294,40095.8
女性運転者平均274,400294,70093.1
女性・けん引運転者348,300344,500101.1
女性・大型運転者320,200316,200101.3
女性・中型運転者247,700279,00088.8
女性・準中型運転者291,200281,500103.4
女性・普通運転者216,200263,10082.2

参考:「2019年度版トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態」について | 全日本トラック協会

厚生労働省が発表した令和2年賃金構造基本統計調査からは、平均年収を知ることができます。

  • 運送・物流会社:380~390万円
  • 宅配会社:370万円
  • 引越会社:375万円

上記の金額はあくまでも平均値であるため、転職先を選定する際の判断基準として覚えておくと良いでしょう。

適性と資質

運送業のドライバーは、向き不向きがハッキリとしている仕事です。運送業のドライバーに向いている人の適性や資質は次のようなものです。

  • 運転が好き・慣れている
  • 真面目に仕事に取り組める
  • 一人でいることが苦痛にならない
  • 体力がある
  • 最低限のマナーを守れる
  • 自己管理ができる

基本的に運送業は運転が好きで、体力に自信のある人が向いています。また、気が長く、多少のことではイライラしない資質を持っている人が望ましいといえます。

運送業の現状・人手不足は深刻

転職活動をしていると、運送業界の求人の多さに気付く人も多いはずです。運送業界は現在深刻な人手不足に悩まされています。

運送業界が現在どのような状態にあるのか、3つのポイントを紹介しましょう。

超売り手市場の運送業界

国土交通省が発表した『トラック運送業の現状等について』からは、次のことがわかっています。

  • 平成30年10月の貨物自動車運転手の有効求人倍率は2.79
  • 全職業の有効求人倍率は1.49

全職業に比べると、貨物自動車運転手の有効求人倍率は実に2倍にもなります。これは、トラックドライバーの人材不足が顕著に表れている数字です。

このことから、運送業界の人材不足がどれほど深刻なのかがわかります。言い換えれば、超売り手市場、喉から手が出るほど人員を確保したいというのが、業界全体の現状といえるでしょう。

なぜ人手不足なのか

運送業界が人手不足となっている要因はいくつか考えられます。

  • 物量の増加
  • ドライバーの高齢化
  • 賃金の安さ
  • 業界へのマイナスイメージ

コロナ禍においても、運送業界のドライバーはエッセンシャルワーカーとして社会基盤を支える重要な役割を果たしています。ECサイトやフリマアプリの利用増加に伴う物量の増加は、現役ドライバーの負担を増やしていることにもなるため、「仕事がキツイ」というマイナスイメージが先行してしまう感も否めません。

運送業界は転職志向が高い

運送業界の特徴として、転職志向が高いことが挙げられます。実際運送業界で勤務していた筆者も何回か転職をしましたし、周囲にも転職経験者が多くいました。

免許は共通なので、条件が良い会社があれば転職という意識が高く、会社へのエンゲージメントは他の業界に比べると低い傾向があります。業界内の転職だけではなく、他職種からの転職者も活躍できる状況にあるため、未経験者にとってはハードルの低い業界といえるでしょう。

運送業未経験者が注意したい求人内容のポイント

未経験の人にとって、運送業界の求人内容はわかりにくいかもしれません。業界経験者であれば、仕事内容と給料のバランスを考えたり、業務のおおまかな流れがつかめたりしますが、未経験者にとっては未知の領域です。

運送業未経験者が求人内容を見極めるポイントを3つ紹介しますので、求職時にはチェックしてみてください。

給料の相場を知る

運送業界の給料の相場を知ることは非常に重要です。加えて、運送業界の特徴として変動給の割合が大きいことが挙げられます。

職種(一般)2019年固定(円)2019年変動(円)小計(円)
男性運転者平均178,600157,100335,700
男性・けん引運転者203,100180,400383,500
男性・大型運転者177,900178,100356,000
男性・中型運転者155,300127,500282,800
男性・準中型運転者178,000106,900284,900
男性・普通運転者196,00086,000282,000
女性運転者平均160,300114,100274,400
女性・けん引運転者203,500144,800348,300
女性・大型運転者163,800156,400320,200
女性・中型運転者137,800109,900247,700
女性・準中型運転者164,600126,600291,200
女性・普通運転者176,50039,700216,200

参考:「2019年度版トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態」について | 全日本トラック協会

変動給とは、夜勤手当や残業手当など業務内容や業務量に応じて発生する金額のことで、毎月一定の額ではありません。給料が異常に高い場合でも、変動給が多いということはその分残業や休日出勤なども多いということです。

だいたいの相場を押さえておき、その前後であれば問題は少ないはずです。

仕事内容を理解する

運送業とはどんな仕事内容になるのか、仕事内容を理解しておかないと、入社後に自分がどんな業務に就くのかが想像できません。

自分にとってキツイのか、やり遂げられそうなのかの見極めもつかないので、ある程度の仕事内容はわかるように勉強しておきましょう。

乗車するトラックの大きさ・種類

同じ運送業でも乗車するトラックの大きさや種類によって、仕事内容は大きく異なります。

  • 小型(積載量2t以下)
  • 中型(積載量4tクラス)
  • 大型(積載量10tクラス)

またトラックの種類もたくさんあります。

平ボディ荷台がフラットになっているタイプ・箱などはついていない
バンボディ荷台がアルミ製の箱型のトラック・風雨から荷物を保護することができる・運送業でもっとも利用されている形状
保冷車荷台に断熱加工がされているトラック・低温で輸送することができる
冷凍冷蔵車冷凍・冷蔵装置が付いているトラック・荷台が冷凍庫や冷蔵庫のようになるため生鮮食品や冷凍品の配送が可能
ウイングボディバンボディの両側が開くトラック・荷物の積み下ろしがしやすい特徴がある
ダンプ荷台の前の部分が持ち上がるトラック・土や砂利などを簡単にすべり降ろすことができる
トレーラー通常のトラックでは運べない大きな荷物やよりたくさんの荷物を運ぶことができるトラック(セミトレーラー・フルトレーラー・特殊トレーラー)

参考:事業用トラックの種類 | 全日本トラック協会

どの大きさのどんなトラックに乗るのか、求人内容を見ただけでわからない場合は、きちんと調べて理解することが必要です。

1日に想定できる走行距離

1日にどのくらいの距離を走るのかによって、仕事内容がだいたいわかってきます。

  • 地場配送:20km〜500km
  • 中距離:300km~700km
  • 長距離:500km~1,000km

各職種で幅はありますが、おおよその走行距離を知っておくことで、どの職種を担当するのかがわかるはずです。求人票には「長距離ドライバー」「県内の配送」などと書かれていることが多いので、応募前に確認することをおすすめします。

荷物の形状

どんな荷物を運ぶのかによって、仕事内容は大きく変わります。

  • 食品
  • 建材
  • 衣料品
  • 工場原料
  • 製品
  • 輸入品
  • 薬品
  • 土砂
  • 家具
  • 電化製品

など運ぶ物によって荷物の積み込み方法や取り扱いに違いが出るからです。「〇〇運送」「〇〇ロジスティックス』」などという社名だけではどんな荷物を扱っている会社かはわかりません。必ず取引先を確認し、どんな荷物を運ぶことになるのかを知ることが重要です。

積み降ろしの方法

何を運び、どんな方法で積み降ろしをするのかも重要なポイントです。運送業界には手積み手降ろしといって、自分の手で荷物を運び、積み込んだり降ろしたりする方法があります。

これは、積み降ろしの中でもっともキツイ方法で、体力のない人にはできません。2t~4t車に多く、引越しなどは手積み手降ろしの最たるものです。

基本的には、重量級の荷物はフォークリフトやクレーンを使用して積み降ろしを行うため、トレーラーやダンプの方が積み降ろしは楽だという暗黙の了解があります。どんな方法で荷物の積み降ろしをするのかは、入社前に必ず確認しておきたい項目です。

会社の福利厚生制度を確認する

確認したいポイントの一つとして注視したいのが、福利厚生制度です。福利厚生制度には、法定福利厚生制度と法定外福利厚生制度の2種類があります。

法定福利厚生制度法定外福利厚生制度
・健康保険
・介護保険
・厚生年金保険
・雇用保険労災保険
・(子ども・子育て拠出金)
・通勤手当
・住宅手当
・慶弔金制度
・財形貯蓄制度
・資格取得支援制度
・人間ドックの費用扶助 など

法定福利厚生制度は、企業に実施が義務付けられているもので、法定福利厚生制度すら整っていない会社は論外です。法定外福利厚生制度は、会社が従業員のために設けているもので、充実しているのは大手企業だけかもしれません。

ただし、会社がどの程度従業員を大切に思っているかの指標になりますので、必ずチェックしましょう。

運送業未経験者がハマる落とし穴

運送業の求人を見ていると、業界経験者であれば『絶対に応募しないな』というパターンがあります。ただし、未経験者の場合は魅力的に感じたり、勘違いをして応募をしてしまったりすることがゼロではありません。

では、未経験者がハマりやすい落とし穴とはどんなことなのでしょうか?

常に募集がかかっている

常に募集のかかっている運送会社は要注意です。

  • ブラック企業
  • 何らかの理由で従業員の入れ替わりが激しい
  • 経営が安定していない
  • 人手不足が深刻すぎて仕事になっていない

という可能性が非常に高くなります。

常に募集がかかっているということは、人材が足りないということです。ただし、‟常に足りない”というのはおかしな話で、新しく入社する社員より辞める社員の方が多いということです。

運送業界には残念なことにブラック企業と呼ばれる会社も存在します。常に募集が出ている会社は要注意です。

相場に見合わない高収入の条件

前項で紹介した給与の相場よりも、明らかに高い収入の条件が提示されている場合は、警戒すべきです。給料が高いということは、それなりに伴うものがあります。

  • 仕事内容がキツイ
  • 残業が多い
  • 高額の給料でも控除されるものが多い

筆者が実際に見聞きした例では、給料は非常に高い設定ですが、帰りの高速代が自腹というとんでもない会社がありました。長距離で50万円以上稼いでも、高速代が引かれてしまうので、手元にお金が残らないというのです。

そんなことは普通あり得ない話なのですが、その会社は何十年もそのやり方でやってきたそうで、会社のカラクリを知ってとても嫌な気分になったことを覚えています。そういった会社も実際に存在するため、何で給料が高いのかを確認してから応募することをおすすめします。

運送業界の年齢不問は健康年齢

運送業界の求人内容には「学歴・年齢不問」とよく書かれています。この年齢不問は一般的な年齢ではなく、健康年齢(健康診断の結果を使ってカラダは何歳相当なのかを統計的に判定したもの)であると心得ておいてください。

運送業の仕事は楽な仕事ではありません。体力・気力をフルに使います。

「腰が痛い」「膝が痛い」「肩が痛い」という話を現役時代によく聞きましたが、若くても身体を壊して辞める人はたくさんいました。反対に、年齢は重ねていても、どこも悪くなく若い人と同等にバリバリ働いている人もいました。

年齢不問と書かれていても、健康に不安のある人は避けた方が無難だといえます。

まとめ

運送業界は、転職志向が高い業界で、未経験でも勤務することは可能です。ただし、未経験者ならではの注意点もあるので、事前に情報収集を行い、できる限り仕事内容などを理解しておくようにしましょう。

現在、運送業界は深刻な人手不足に悩まされています。運送業界に少しでも興味のある人は、ぜひ挑戦してみてくださいね。

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