【2022】深刻なトラックドライバー不足の現状・原因は?解決策はあるのか

運送業界はドライバー不足に悩まされています。トラックドライバーの人材不足は深刻で、日本全国どの地域でも、求人には運送会社の募集が出ているのが現状です。

どんなことが原因でトラックドライバーの不足が起きているのか、これから解決する方法はあるのか、さまざまな取り組みが行われていますが、元トラックドライバーの筆者がわかりやすく解説します。

トラックドライバーの不足の現状

トラックドライバーの不足がどれほど深刻なのか、数値から見ていきましょう。国土交通省が発表した『トラック運送業の現状等について』からは、次のことがわかっています。

  • 平成30年10月の貨物自動車運転手の有効求人倍率は2.79
  • 全職業の有効求人倍率は1.49

全職業に比べると、貨物自動車運転手の有効求人倍率は実に2倍にもなります。これは、トラックドライバーの人材不足が顕著に表れている数字です。

厚生労働省の調査では、運輸業・郵便業の欠員率が5.7%と報告されています。欠員率とは、常用労働者数に対する未充足求人数の割合のことです。

たとえば、医療・福祉は2.5%宿泊・飲食は5.5%などとなっており、運輸業・郵便業がもっとも高い数字となっています。

トラックドライバーが不足している原因

トラックドライバーが不足している原因はどこにあるのでしょうか?考えられる5つの原因を探っていきましょう。

物量の増加

コロナ禍におけるECサイトの利用増加で、宅配などの物量は確実に増えています。

平成30年度に国土交通省が行った調査では、平成30年度の宅配便取扱個数は約43億個、前年度比較で1.3%の増加と報告されました。これは平成30年、つまり新型コロナウイルスが流行する前の話なので、確実に物量は上がっていることになります。

宅配だけではなく、店舗への配送なども増加傾向にあるため、物量の増加は人材不足を生み出す大きな原因になっているといえるでしょう。

高齢化

高齢化も、運送業界にとっては大きな問題となっています。若手が増えないことで、トラックドライバーの平均年齢が上がってしまっているのです。

厚生労働省の調査では、トラックドライバーの40歳以上の比率は70%に及び、29歳までの若年層は9.1%にとどまっています。若年層の全産業平均は16.3%であることを考えると、トラックドライバーの業界は高齢化の問題にも直面していることが一目瞭然です。

このまま若年層の割合が増えなかった場合、より深刻な高齢化問題を抱えてしまうことが考えられます。

不規則な生活

トラックドライバーは不規則な生活になりがちだという認識が、転職希望者を遠ざけている原因とも考えられます。

確かに、職種によっては昼夜逆転の生活や、土日祝日も勤務するというケースもあります。長距離ドライバーの場合は、車中泊などもあるため、不規則な生活になる=身体を壊す・キツイというイメージが先行してしまうのでしょう。

実際は、過重労働にならないようなシフトで運行していますし、休日もしっかりと取れています。普通の会社員のようなタイムシフトとは異なるのですが、不規則な生活を敬遠する若い世代が業界に足を踏み入れないことも原因の可能性があります。

賃金の安さ

厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、令和2年におけるトラックドライバーの年間所得額は、次のように報告されています。

  • 大型トラック:456万円
  • 中・小型トラック:419万円

全産業の年間所得額は501万円であるため、大型トラックで約1割、中・小型トラックで約2割低い結果ですので、決して賃金の高い職業とはいえません。

ただし、これはあくまでも平均の金額です。トラックドライバーは変動給の割合が大きいことが特徴なので、職種によっては平均以上の年収をもらえる可能性もあります。

トラックドライバーへの誤解

トラックドライバーの仕事に対する誤解・トラックドライバーへの偏見が人材不足を招いていることも考えられます。

  • トラックドライバーは柄が悪い
  • トラックドライバーの仕事はきつくて大変
  • ブラック企業が多い
  • トラックドライバーは男性の仕事
  • トラックドライバーは稼げない

実際にネットでは「トラックドライバー やばい」などの検索ワードが上位にあります。これは、実態を知らない人が何となく抱いているマイナスなイメージや、運送業界・トラックドライバーへの誤解が業界離れを起こしている原因です。

トラックドライバー不足解消なるか?国を挙げての施策

トラックドライバーは、生活の基盤を支える重要な仕事です。トラックドライバーの不足は、国民の生活に大きな影響があると考えた国は、労働基準法の改正などを含めたさまざまな施策を打ち出しています。

トラックドライバーの人材不足を解消できるのか、国が行っている施策を紹介しましょう。

人材確保・育成

国土交通省は2014年から『トラガール促進プロジェクト』を展開し、人材の確保や育成に取り組んでいます。

トラックドライバーの女性比率は2.3%とまだまだ低い状況です。男性の仕事と思われているトラックドライバーに、女性を積極的に採用することで、人材不足を少しでも解消しようとしているのです。

また、経営者・荷主に対しても、女性ドライバーという新しい視点を持ってもらい、業界のイメージアップを図るという目的も兼ねています。

魅力ある職場づくり

トラックドライバーの過酷な労働環境を改善し、少しでも魅力のある職場づくりを行おうという動きもあります。

  • 労働基準法の改正(拘束時間・休息期間の定義徹底など)
  • 時間外労働への罰則金(36協定)

など、実態を把握した上で法律を改正し、罰則を設けることで過重労働を防ぐ施策を展開しています。「トラックドライバーの仕事はきつい」「長時間の残業を強いられる」などのマイナスイメージを払拭することができるのか、結果はこれからになりますが、少しでもトラックドライバーの労働環境が改善されるような動きが見られています。

トラックドライバー不足にモノ申す!「こんなに楽しい」ドライバー生の声

筆者は元トラックドライバーですが、友人には現役バリバリの運転手がたくさんいます。彼らが長い期間トラックドライバーとして頑張れているのは、それなりのメリットややりがいを感じているからです。

では、実際に彼らはどんな思いで働いているのか、生の声を紹介しましょう。

キツイ・汚い・危険……3Kなんて嘘!

  • Aさん(45歳)
  • ドライバー歴20年以上
  • 長距離・中距離ドライバー
  • 妻・子ども3人の家族あり
  • 奥さんも元ドライバー(結婚・妊娠を機に退職)

「キツイ・汚い・危険と、ドライバーはよく3Kなんて言われるけど、そんなことはないと思うよ。確かにキツイ仕事もあるし、事故に遭う可能性はゼロじゃないから危険なのかもしれないけど、そんなのどんな仕事にもリスクはあるはずだよね。

うちは嫁さんも運転手だったから理解はある方だけど、子どもが小学校に上がる前は家もかなり大変だった。だけどしっかり話をして、今でもドライバーを続けられてるよ。

俺は学がないから、公務員とか普通の会社員にはなれなかったけど、ドライバーは学歴なんて関係なく稼げる。子どもたちも俺がドライバーってことに誇りを持ってくれてるし、俺の留守中にはママを守るなんて生意気言ってる。

よく思うのは、トラックドライバーに対する偏見が多いなっていうことだよね。何でか理由はわかんないけど、トラックドライバーの仕事は別にひどい仕事じゃない。やりがいだってあるし、楽しい仕事なんだけどね。」

車の好きな人なら天職!

  • Bさん(32歳)
  • ドライバー歴8年
  • 接客業から転職
  • 中距離ドライバー
  • 筆者の先輩の息子さん

「俺の場合は、親父が運転手だったから、かなり身近な仕事だったんです。でも、何となく他の仕事をしていて、24歳のときに転職しました。

俺は車が好きで、整備士の資格を持ってます。本当ならディーラーとかに勤めるつもりだったんだけど、ものすごい不景気な時に就職活動しなきゃいけなくて、就職浪人になっちゃったんです。

働かなきゃいけないって思って、アルバイトで接客業をしてたんですけど、やっぱり車が好きだから、車に関係する仕事がしたかった。そんなとき親父の会社で運転手を募集してるって話を聞いて、転職を決めました。

俺は車が好きなので、トラックドライバーの仕事はめちゃくちゃ楽しいです。好きなことを仕事にできるってすごく幸せなことだと思うし、好きだから苦にならない。朝早いときとかは正直キツイけど、好きな仕事だから頑張れます。」

女性でも活躍できる!やる気優先の業界

  • Cさん(49歳)
  • ドライバー歴20年以上
  • シングルマザー
  • 宅配業者 ⇒ 中距離ドライバー ⇒ ダンプ運転手
  • 子ども3人は既に独立

「私はシングルマザーなので、とにかく子どもを育てるだけの稼ぎが欲しかったんです。かといって水商売は向いてないし、稼げるっていうだけでドライバーになりました。

子どもが小さい頃は家を空けることができなかったから、宅配をやってました。子どもが大きくなるにつれて、教育費もかかるようになったので、転職して中距離のドライバーになったんです。

宅配に比べると不規則だったし、運転する時間も長かったけど、その分稼げたので楽しかったですよ。

中距離ドライバーをやってるときに大型免許を取って、ちょっと身体がきつくなったこともあったのでダンプの運転手に転職しました。昔は女っていうだけでイジメられたりしたけど、仕事をきっちりやって経験積んでいけば、誰にも何にも言われないし、言われる筋合いもない。

子どもを育てるために必死だったけど、トラックドライバーになったおかげで、3人育て上げることができたと思ってます。

ダンプの運転手は大変だけど、女でも、年齢を重ねてもできる仕事。今じゃ‟お局”なんてあだ名付けられてるけど、女の世界みたいにウジウジしてないから、男社会はやっぱり楽です。

こんだけ離婚率が上がってシングルマザーも増えてるんだから、どんどんチャレンジすればいいのにって思う。やる気があれば、無理なく稼げる仕事だし、私はトラックドライバーになって良かったって思うことの方が多いです。」

まとめ

トラックドライバーの人材不足は深刻な状況ですが、国を挙げての施策なども展開され、改善する可能性はゼロではありません。トラックドライバーの仕事に対するマイナスなイメージや誤解などが多いこと、今までの労働状況があまり良くなかったことなどが業界離れの原因と考えられます。

しかし、実際にトラックドライバーで活躍している人の声を聞くと、「やりがいを感じている」「楽しい」「トラックドライバーになって良かった」という内容が多かったのが印象的でした。

トラックドライバーの不足を解消するには、こういった生の声をもっと届けていかなくてはならないのかもしれません。

トラックドライバーの仕事には、さまざまな職種があり、選択肢がたくさんあります。より良い転職につなげるために、ぜひ当サイト「ドライバーコネクト」にご相談ください。きっと自分に合ったトラックドライバーの仕事が見つかるはずです。

参考: