【2022】トラックドライバーの労働時間はどれくらい?規制やルールは?

トラックドライバーの労働時間には、とてもマイナスなイメージを持っている方が少なくありません。転職を検討されている方の中にも、労働時間がネックとなり、運送業界へ足を踏み込めない方もいらっしゃるのではないでしょうか?

トラックドライバーの労働時間問題については、2019年に労働基準法が改正され、国を挙げて労働環境の見直しを行っている最中です。今回は、法律の改正でトラックドライバーの労働時間はどう変わったのか、これからの展望はどうなるのかについて、現状も踏まえた上で詳しく解説します。

トラックドライバーの労働時間・現状を知る

トラックドライバーの長時間労働は、以前から解決すべき課題として取り上げられていました。国土交通省が平成27年に実施した調査では、次のような報告がされています。

  • ドライバーの1運行の拘束時間は、全体では13時間以内が63.4%であるが、16時間超が13.0%となっている。車種別にみると16時間超の割合は、大型が16.6%と最も高く、中型で7.5%、普通で3.1%となっている。
  • 休息期間8時間未満の運行は全体では15.8%となっており、車種別にみると、大型が20.2%と最も高く、中型で8.9%・普通で4.2%となっている。
  • 連続運転時間4時間超の運行は、長距離で32.7%、短・中距離で5.7%となっている。
  • 走行距離帯別にみたドライバーの1運行の拘束時間は、16時間超は長距離で43.1%、短・ 中距離で5.3%となっている。

引用:トラック輸送状況の実態調査結果(全体版)|国土交通省

この調査は運送事業者1,252社、所属するドライバー計5,029名に対して実施されたものです。トラック運転手の過酷な実態が明らかになった調査結果といえるでしょう。

特に、大型・長距離のドライバーは、拘束時間・連続運転時間が長く、休息時間が短いことがわかります。運送業の仕事はキツイ・稼げないといったネガティブなイメージは、あながち嘘ではないということです。

こういった調査や現状を受けて、国を挙げて労働環境の見直しが行われています。

2019年の労働基準法改正でトラックドライバーの労働時間はどう変わった?

2019年に労働基準法が改正され、トラックドライバーの労働時間などについて、改善基準が設けられました。法律の改正で労働時間はどのように変わったのでしょうか?2つのポイントから変更点について解説します。

拘束時間と休息期間

まず初めに、拘束時間と休息期間の定義を押さえておきましょう。

  • 拘束時間:始業時間から就業時間までの間の時間・労働時間+休憩時間(仮眠時間)の合計時間
  • 休息期間:前の勤務と次の勤務の間の期間

今回の改正では、次のように定められました。

  • 1日の拘束時間は13時間以内が基本・延長する場合でも16時間が限度
  • 1日の休息期間は継続して8時間以上が必要
  • 1日の拘束時間を延長する回数は1週間につき2回が限度

トラックドライバーの仕事に不可欠な荷待ち時間は、拘束時間に含まれます。休憩時間・仮眠時間も拘束時間に含まれるため、今回の法律改正が厳密に守られるのであれば、トラックドライバーの労働時間問題も、緩和されるはずです。

大企業だけではなく、中小企業においても2020年4月から施行されています。長時間の労働が当たり前になっていたトラックドライバーの労働時間が変わりつつあるということでしょう。

時間外労働への罰則金(36協定)

36協定(サブロクキョウテイ)とは、会社側(雇用者)がドライバー(労働者)に対し、原則1日8時間・週40時間・週1日の法で定められた休日を超えて労働させる場合に、書面で契約をすることを定めた協定です。締結された協定は、労働基準監督署へ届け出ることが義務付けられており、月45時間、年間360時間を超えた時間外労働があった場合には、罰則が設けられました。

仮にドライバーの同意があっても、規定された労働時間を上回ることは、原則として認められていません。

トラックドライバーは、変動給の割合が他の業種に比べて多いことがわかっています。変動給には残業代も含まれるため、今までいかに残業代が多かったかということです。

トラックドライバーならではの拘束時間問題

労働基準法が改正され、36協定の遵守義務などがあっても、トラックドライバーの労働時間問題はなかなか解決されないといわれています。その理由は、トラックドライバーならではの拘束時間です。

ここでは、荷待ち時間や休憩時間・休息期間などについて、問題点を挙げてみましょう。

拘束時間は短くなる?

拘束時間とは、始業時間から就業時間までの間の時間です。労働時間+休憩時間の合計された時間のことで、仮眠時間や休憩時間、残業も含まれます。

国土交通省の調査にもある通り、トラックドライバーの拘束時間は、16時間超が13%、特に長距離ドライバーの1日の運行の拘束時間は、43.1%が16時間超でした。この結果は、従来のトラックドライバーの拘束時間がいかに長かったかという実態を表しています。

この実態は、トラックドライバーの仕事はキツイ・家に帰れない・過酷な残業があるといったマイナスイメージに直結し、運送業界離れを引き起こす要因になったと考えられるでしょう。しかし、拘束時間はドライバーが自ら望んで長時間にしているわけではありません。

荷待ち・渋滞・工事・事故など、思いもよらない事情で、残業を余儀なくされることがほとんどなのです。深刻な人手不足を抱える現在の運送業界で、拘束時間の問題を解決できるようにするためには、運送会社とドライバーだけではなく、荷主にも理解を求めなくてはならないと考えられます。

荷待ち時間はどうなる?

トラックドライバーの労働時間が長くなる原因の一つに、荷待ち時間があります。前項で紹介した国土交通省の調査では、荷待ちの発生状況を1運行あたりでみると、

  • 30分以内22.5%
  • 1時間超2時間以内:26.4%
  • 3時間超:5.1%

と報告されています。3時間超の荷待ちが5.1%もあるというのは、驚きの結果です。

運送会社の中には、荷待ち時間が長くなると、休憩時間とみなす会社もあります。しかし、荷待ち時間は本来拘束時間に含まれることを忘れてはなりません。

荷主が過度の要求をしてくる場合には、政府が勧告や是正指導を行うことができます。荷主・雇用者(運送会社)・労働者(ドライバー)が一体となって、労働環境の改善に取り組むべき問題とされています。

休憩時間と休息期間の違いを知る

休憩時間と休息期間の違いを業界全体が認識する必要があります。

  • 休息期間:前の勤務と次の勤務の間の期間・1日の休息期間は継続8時間以上とする必要がある
  • 休憩時間:運転を中断し休憩や休息を取る時間・ 運転開始後4時間以内または4時間経過直後に30分以上の休憩等を確保しなければならない

休憩時間は働いている時間の中に含まれるため、拘束時間として使用者の管理下にある状態です。休息期間は仕事から離れた、プライベートな時間で、睡眠時間も含まれます。似たような響きがありますが、まったく異なる定義になっているのです。

異業種からの転職の場合は、不当な長時間労働や休息期間の短縮は認められていないことを覚えておいてください。長く運送業界で働いている方の転職の場合も、以前とは認識が異なっているということを知り、当たり前のことだと思わないようにしてください。

トラックドライバーの労働時間問題は、少しずつですが改善しているのです。

トラックドライバーの労働時間・特例とは?

車両を運行するという仕事の特性上、運送業界に認められた特例があります。主な2つの特例について、詳細を紹介しましょう。

休息期間の分割

厚生労働省が発表したトラック運転者の労働時間等の改善基準のポイントには、次のように定められています。

業務の必要上、勤務の終了後継続した8時間以上の休息期間を与えることが困難な場合は、当分の間、一定期間(原則として2週間から4週間程度)における全勤務回数の2分の1の回数を限度として、休息期間を拘束時間の途中及び拘束時間の経過直後に分割して与えることができます。

この場合、分割された休息期間は、1日において1回当たり連続4時間以上、合計10時間以上としてください。

引用:トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント|厚生労働省

これは、仕事の性質上、まとまった休息期間が取れないことがあるため、特例としてあらかじめ定められたものです。

注意したいのは、連続4時間以上という部分です。特例が適用されていても、連続して4時間の休息時間が取れない場合は、休憩時間と見なされてしまいます。

同乗者がいる場合・拘束時間の延長

長距離の運行などで、長時間の運転を行うとわかっている場合に、運転手が二人乗務の状態ならば、1日あたりの最大拘束時間の延長・休息期間の短縮が認められる特例も定められています。

運転者が同時に1台の自動車に2人以上乗務する場合(ただし、車内に身体を伸ばして休息することができる設備がある場合に限る)においては、1日の最大拘束時間を20時間まで延長でき、また、休息期間を4時間まで短縮できます。

引用:トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント|厚生労働省

同乗者を帯同させるメリットは、運転交代による負担の軽減にあります。人件費が高くつくというデメリットから、バス業界などには多く見られますが、トラックドライバーにはあまり浸透していません。

トラックドライバーの労働時間はどうなる?転職する際の3つの心得

ここまで、トラックドライバーの労働時間に関する現状や課題、法律改正による改善点を紹介しました。

では、運送業界に転職をしたいと検討するときには、どんなことに注意するべきなのでしょうか?運送業界に転職する際の心得について3つのポイントを解説します。

法律改正の概要を理解しておく

前項までで紹介した労働基準法の改正点をしっかりと理解しておきましょう。どんなことが改善され、ドライバーや雇用主はどうあるべきなのか、どんな処遇が罰則の対象になるのかを知っておくだけで、自分の身を守ることができます。

転職先を選定する上でも、法律改正に則った勤務体制になっているかどうかを見極めることが可能ですし、入社前に問題点に気づくことができれば、会社選びを間違わずに済みます。

少々難しい内容もありますが、理解しておくことは大切なポイントです。

自浄作用のない会社は見切りをつける

入社後に、万が一法律を遵守する会社でないことがわかってしまった場合は、見切りをつけて次の転職を検討することをおすすめします。

残念なことに、運送業界にはブラック企業と呼ばれる会社が存在するのが事実です。そのまま勤務を継続していても、過酷な長時間労働やハードなシフトなどで疲弊してしまうのが目に見えています。

短期間での転職は不利になると思われがちですが、正当な理由であればハンデにはなりません。自浄作用のない会社には、見切りをつける勇気を持ちましょう。

大手の運送会社に転職する

運送業界未経験の方は、できる限り大手の運送会社への転職に挑戦してください。

大手の運送会社は、今回の法律改正を遵守し、労働環境の改善に対して積極的な取り組みを行っています。大手の運送会社は良くも悪くもネームバリューがあるため、法律に違反をしたり、罰則を受けたりするようなことはしません。

人手不足は業界全体の問題ですが、中小企業に比べると人員確保に経費をかけることもできます。大手の運送会社であれば、研修・教育制度や福利厚生制度も充実していることが多いので、未経験の方でも安心して勤務することができるでしょう。

まとめ

トラックドライバーには、残業や継続運転などが多く労働時間に不安がある職種だというネガティブなイメージがあります。確かに、以前はそのような実態がありましたが、2019年に施行された労働基準法の改正や36協定の締結義務などにより、少しずつですが課題解決に向けて動き出しています。

今回の法律改正は、ドライバーの権利や生活を守るための第一歩です。ネガティブなイメージだけではなく、業界全体が労働環境の見直しに動き出していることを知った上で、転職活動を行ってください。

トラックドライバーの仕事には、さまざまな職種があり、選択肢がたくさんあります。より良い転職につなげるために、ぜひ当サイトにご相談ください。きっと自分に合ったトラックドライバーの仕事が見つかるはずです。

【参考】