目次
物流業界の職種と仕事内容
物流業界には大きく分けて5つの職種があります。
それぞれどのような仕事内容なのか、くわしく解説していきましょう。
職種 | 仕事内容 |
---|---|
保管 | ・生産者から受け取った荷物を保管しておく業務 ・輸入のタイミングなどの調整も含まれる |
荷役(にやく) | ・荷物の積み下ろし・倉庫内の持ち運びなどを行う業務 ・港湾作業員・倉庫作業員などがある |
流通加工 | ・物を運びやすいように加工する業務 ・包装・梱包・箱詰めなどがある |
運搬・輸送 | ・トラック・鉄道・船などで物資を運ぶ業務 ・トラック運転手・宅配便なども含まれる |
情報管理 | ・倉庫・運行などをシステム管理する業務 ・宅配便の荷物追跡サービスなどが代表的 |
保管
保管とは、預かった荷物を適切に管理する仕事です。働く場所としては物流倉庫や物流センターなどが挙げられます。
商品に合った環境を作り、品質を維持しながら荷物を保管することがメインの業務です。商品の収納・温度や湿度なども考えた品質管理・破損や盗難の対策なども行います。
効率的に出荷できるように在庫・出荷管理を行うため、情報管理の技術を駆使する現場も多く見受けられることが特徴です。
荷役(にやく)
荷役(にやく)とは、物流業界における取扱作業の総称です。物流倉庫や物流センターで荷物を出し入れしたり、移動・運搬したりする仕事です。
積み下ろし・運搬・積み付け・入庫・格納・仕分け・ピッキング・荷揃え・出庫など、荷役の仕事は多岐にわたります。輸入品の通関手続きも荷役の仕事に分類されるため、同じ荷役でも分担する部署によって仕事内容が大きく異なることが特徴です。
流通加工
流通加工は、物を運びやすいように加工をする仕事です。
衣服の検針作業やハンガー掛け、商品の値札やラベル貼りなど、消費者のニーズに合わせた加工を行います。ただ商品を出荷するだけではなく、さらなる付加価値を高めることが目的です。
物流倉庫や物流センターなどで行われることが多くなります。
運搬・輸送
品物を運ぶ仕事の総称が、運搬と輸送です。産地・メーカーから倉庫へ、そして購入者・消費者の元へ安全に荷物を輸送することがミッションです。
陸・海・空、どの業種にも運搬・輸送の職種はありますが、最もポピュラーなのはトラックドライバーです。近年ではECサイトやフリマサイトの需要が急増し、人手不足が深刻な課題となっていますが、個人宅へ配送する宅配便などもこの職種に分類されます。
情報管理
情報管理は、システムを活用して、物流工程の管理を行う仕事です。倉庫管理・配送管理・運行管理など、物流業界には多くの管理業務があります。
会社によっては、次のような管理業務が発生することもあります。
- 環境整備:敷地内の清掃・器具や設備の補修を行う
- 安全管理:事故が起きないよう設備などのメンテナンスを行う
- 設備管理:機械の点検・修繕の計画の立案などを行う
近年宅配便などでは、荷物の配送状況や配達予定日などがシステム化によって可視化されているのをご存知の方も多いでしょう。物流というと現場仕事のイメージが強いですが、情報管理は管理部門として物流がスムーズに行われる基盤づくりを行っている仕事です。
物流業界の現在と今後
物流業界へ転職を検討する場合は、業界自体の動向を知っておくことが大切です。ここでは、物流業界における現状の課題や今後の動向について解説します。
現状の課題
物流業界における現状の課題としてもっとも重要なのは、人手不足です。新型コロナウイルスの感染拡大に伴って増加した巣ごもり需要に、物流業界でも特に運送業の人手不足は非常に深刻な状況となっています。
国土交通省が発表した「トラック運送業の現状等について」では、次のように報告されています。
- 平成30年10月の貨物自動車運転手の有効求人倍率は2.79
- 全職業の有効求人倍率は1.49
さらに厚生労働省の調査では、運輸業・郵便業の欠員率が5.7%と報告されており、欠員率は医療・福祉・飲食などよりも多くなっています。
ウクライナ情勢や急激な円安傾向による燃料の高騰も物流業界を苦しめています。燃料の高騰による輸送コストの変動は、運送業にとどまらず、物流業界全体の課題として、取り組みが行われています。
今後の動向
物流業界の課題を解決すべく、国は「改正物流総合効率化法」を平成28年に施行しました。
流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律(物流総合効率化法)は、流通業務(輸送、保管、荷さばき及び流通加工)を一体的に実施するとともに、「輸送網の集約」、「モーダルシフト」、「輸配送の共同化」等の輸送の合理化により、流通業務の効率化を図る事業に対する計画の認定や支援措置等を定めた法律です。
国土交通省では、昨今の物流分野における労働力不足や荷主や消費者ニーズの高度化・多様化による多頻度小口輸送の進展等に対応するため、同法に基づき、「2以上の者の連携」による流通業務の省力化及び物資の流通に伴う環境負荷の低減を図るための物流効率化の取組を支援しています。
引用元:物流:物流総合効率化法について|国土交通省
難しく書かれていますが、次の2点にまとめられるでしょう。
- トラックに頼っている現状の配送方法を別の配送方法に切り替えることを推進する
- 自社だけで対応するのではなく、他社との共同配送の取り組みなどを促したりする
事業の立ち上げや設備投資への金融支援・税制の特例などの支援措置も具体的になり、国をあげて物流業界の課題解決に取り組んでいます。これから迎える2024年問題も、物流業界には大きな影響を与えるでしょう。
人手不足や長時間労働という根幹の問題をどのように解決していくのか、物流業界はこれから大きな動きがあるといわれています。
物流業界の職種別に向いている人の特徴
物流業界には複数の職種があり、仕事内容も異なります。どんな人がどんな仕事に向いているのか、これから物流業界への転職を検討している方向けに解説しましょう。
保管
保管の仕事に向いているのは、几帳面で黙々と仕事ができる人です。
保管の仕事は倉庫作業員などが多く、ルーティンワークになりがちな特徴があります。決められたことをきっちりとこなすことに達成感を得られる人、商品(荷物を)丁寧に扱える人、整理整頓が苦にならない人が向いているといえるでしょう。
また、保管の業務は思っているよりも体力を使います。身体を動かすことが好きなことも条件の一つです。
荷役(にやく)
荷役の仕事は多岐にわたりますが、総じて体力に自信のある人が向いています。
商品(荷物)を直接取り扱うことが多く、重量や大きさのある物も少なくありません。フォークリフトやハンドリフトを使用することもありますが、常に身体を動かしていることが多いため、体力に自信のない人や持病で腰痛などに悩まされている人にはキツイ仕事になってしまいます。
港湾荷役作業員などの場合は、玉掛け作業者の資格を持っていると非常に有利です。資格取得・スキルアップに前向きな人も荷役には向いているでしょう。
流通加工
流通加工の仕事は、慎重で集中力を持続できる人が向いています。
流通加工の工程は、正確かつ丁寧に作業を行うことが必要です。同じ作業の繰り返しが苦にならない人、長時間の立ち仕事に耐えられる集中力と体力を持っている人が適しているでしょう。
流通加工の仕事は非常に幅広く、さまざまな業務に対応しなければいけないこともあるため、急な指示の変更に抵抗なく対応できる柔軟性も必要です。流通加工の仕事は比較的多様な働き方に対応できる職種であるため、正社員だけではなくパートやアルバイトなどで働きたいという人にも向いています。
運搬・輸送
運搬・輸送は、体力があり、一人の時間が苦にならない人が向いています。特に、トラック運転手などは、荷物の積み下ろし・積み込みなども兼務することが多く、長距離の場合は何日もかけてトラックを運転しなければなりません。
基本的に一人の時間が多いため、群れたい人やチームで成果を上げたいという人はストレスフルになる可能性があるので、避けた方が賢明です。また、刻々と変化する交通事情などに余裕を持って対応できる、気の長い人であることも重要な適性といえます。
情報管理
情報管理の仕事に向いている人は、コミュニケーション能力がある人です。
物流業界の情報管理部門は、多くの人とかかわることが特徴で、お客様(ユーザー)と直接対峙するケースも考えられます。システムを動かすだけではなく、管理というリーダー的存在でもあるため、リーダーシップを取れる能力があればなお良いでしょう。
また、物流の仕事はイレギュラーな状況が起きやすいので、臨機応変に対応できる柔軟性も求められます。
物流業界で働くメリット
物流業界は、安定性・柔軟な働き方が選択できることなどから、非常に人気の高い業界です。実際に勤務経験のある筆者から見た、物流業界で働くことで得られるメリットを解説します。
仕事がなくなることはない
物流業界で働く最大のメリットは、業界自体が安定しているため、仕事がなくなることはないということです。
離れた場所で商品を購入し手元に届くこと、買い物に行って欲しいものが手に入ることは決して当たり前のことではありません。物流業界で働く人たちがいるからこそ、社会生活の当たり前を維持できているのです。
社会情勢や景気に左右されることも多少はありますが、仕事自体がなくなるということはありません。生活を安定させ、収入を維持できるメリットがあります。
未経験でも働きやすい
物流業界は、未経験者でも働きやすいというメリットがあります。物流業界の求人では、学歴・年齢・性別に関係なく募集していることが多いため、業界未経験という人でも活躍することができるでしょう。
物流業界にはさまざまな職種があります。英語力や貿易に関する知見など、専門的知識が必要な職種もありますが、基本的に「未経験OK」と書かれていれば転職は可能です。
未経験OKとしている企業は、未経験者に対してしっかりとした研修を行うため、これから物流業界に転職したいと考えている人にとっては大きなメリットになります。
黙々と仕事ができる
物流業界の仕事は、黙々と作業をすることが多いという特徴があります。
コミュニケーションを密に取らなければならない営業職や、チームで仕事をする企画系の職種とは異なり、最低限のコミュニケーションさえ取れればOKという環境もメリットとして挙げることができるでしょう。
特に、運送業や倉庫業など、現場の仕事には強くこの傾向が現れます。人と接することが苦手な人にはメリットを感じられる仕事です。
物流業界で働くデメリット
人気の高い物流業界はメリットが多いと感じられますが、反面デメリットも存在します。転職後のギャップを生まないためにも、しっかりと理解しておきましょう。
ルーティンワークになりやすい
物流業界の仕事は、ルーティンワークになりやすいというデメリットがあります。
職種によってはイレギュラーな業務が発生することもありますが、倉庫業などでは自分の担当業務を継続して行うことがほとんどです。同じ仕事を続けることに飽きてしまう人や、常に変化を求めるタイプの人にはデメリットの多い仕事だといえます。
イレギュラーな業務が発生しやすい
物流業界のデメリットは、職種によってイレギュラーな業務に対応しなければいけないことです。
商品(荷物)の破損・盗難・紛失、交通渋滞や通行止め、天候などにも影響されます。計画通りに進まないときに適切な対応を求められますが、経験の浅い人や指示に従うことに慣れている人にとっては、大きなストレスとなるでしょう。
時間に追われることが多い
物流業界は時間で動いていることが多いので、タイムリミットに追われることがデメリットです。
特に運送業の場合は、決められた時間までに納品をしなければいけないため、逆算して運行を行います。延着(時間までに到着しないこと)はタブーとされているので、荷待ちや交通渋滞などで予定が押した場合は、プレッシャーに押しつぶされそうになります。
また、倉庫業などでも決められた時間内に目標としている作業を終わらせなければならないため、迅速に対応することが求められることも少なくありません。
物流業界へ転職する際の注意点
物流業界は異業種からの転職者も多く、業界も安定していることから人気の高い業界だといわれています。しかし、物流業界へ転職をする際には、忘れてはならない注意事項があるので、しっかりとポイントを押さえて情報収集を行いましょう。
各職種の仕事内容をきちんと理解すること
物流業界の転職時には、各職種の仕事内容をしっかりと理解することが大切です。
先に紹介したように、物流業界には複数の業種・職種があります。自分に合った仕事はどんな仕事なのかを見極め、物流業界の中で自分を最大限活かせる職種を見つけなければなりません。
どんな職種があり、どのような仕事を行うのか、それぞれの適性や資質なども理解しておくことをおすすめします。
未経験の方はできるだけ大手企業を選ぶこと
物流業界に未経験で転職される方は、できるだけ大手企業を選びましょう。理由は、物流業界全体の深刻な人手不足にあります。
大手企業はネームバリューや実績などから、人員の確保が中小企業よりも効率的に行われています。また、福利厚生の充実や残業時間の管理など、コンプライアンス経営にも積極的です。
人手不足の状態はどこも同じですが、法令を遵守しない中小企業の場合は、一人ひとりの労働を増加させることで人手不足を解消しようとします。
大手企業の場合は、研修制度もしっかりとしていて、未経験者に対するフォロー体制が整っているため、業界自体をあまり知らないという人は、大手企業から始めてみることがおすすめです。
ブラック企業には要注意
物流業界には、残念ながらブラック企業と呼ばれる悪質な会社が存在します。倉庫業では外国人労働者を低賃金で雇用したり、運送業では違法な残業を強要したりする例があとを絶ちません。
人手不足ということもあり、個々の負担が増えているのは業界全体の問題ですが、故意に従業員を貶めるような会社があるのは事実です。
ブラック企業を見極める方法は、情報収集を徹底的に行うこと。少しでも違和感を覚えるようなことがあれば、そのまま転職することのないように注意しなければなりません。
まとめ
物流業界は、さまざまな職種があり、それぞれ担当する業務が異なります。物流業界は業界自体が安定していることが最大のメリットですが、適性や資質によってはデメリットも存在することを理解しておきましょう。
物流業界への転職を検討する際には、業界全体の動向や応募する企業に関する情報収集を徹底してください。
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