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運送業の残業時間の平均は84.2時間!
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2024年問題を取り上げる前に、運送業の残業時間の現状はどうなっているのでしょうか?
厚生労働省が2017年に実施した『運送業における労働時間と働き方に関する調査』では、運送業の平均残業時間は84.2時間と報告されています。運送業の残業時間について、業界別に動向と特徴を解説します。
トラック業界の動向と特徴
トラック業界は深刻な人手不足が続いていますが、調査結果の中では以下のような働き方の特徴が報告されています。
・業務内容は大きく「長距離」と「短距離」とに分かれ「長距離」は夜勤が多い・賃金体系は「基本給」と「歩合給」から成っており「歩合給」のウェイトが大きい。
・届け先での「荷役」の影響で睡眠時間や休憩時間を削ることもある。
・大手では労働時間の管理は制度・運用ともに取組が進んでいるが中小では課題が残っている。
・業界としては休憩場所の確保と健康管理の充実が取組課題の重点事項である。
引用元:運送業における労働時間と働き方に関する調査|厚生労働省
トラック業界の特徴は、基本給よりも歩合給のウェイトが大きいこと。基本給が少なくても残業代で稼げるということは筆者も経験したことがあるのでわかりますが、確かに残業代は収入を上げる要素になっていることは事実です。「残業時間を減らすのは良いけれど、給料が減るのは困る」というトラック運転手はたくさんいます。
バス業界の動向と特徴
バス業界はここ数年大きな交通事故のニュースが報道され、安全性だけではなく運転手の健康管理や働き方に対しても大きな注目を集めました。
・基本給と各種手当からなる給与体系である。
・夜間の高速バス運転手の負荷は大きい。
・最終便の時間が遅くなり拘束時間は長くなる傾向にある。
・年次有給休暇は取得しやすい。
・人手を確保してゆとりのある運行ダイヤ・シフトの実現が必要である
中でも注目されているのは、夜間の高速バスの過酷な現状です。人手不足が原因となる拘束時間の長さや運転手の身体的な負担を軽減するために、早急な対応が必要だと提言しています。
タクシー業界の動向と特徴
私たちの生活に密着しているタクシー業界。高齢者の運転免許自主返納の代替手段としても注目されています。
・都市部では隔日勤務により深夜業務・長時間業務が恒常的になっている。
・休憩時間は厳密には管理できず、また歩合給確保のために自発的な労働時間延長もある。
・1ヶ月当たりの出勤日は 12~13 日であるが年次有給休暇は取得しにくい。
・ドライバーの裁量による自己管理をどこまで認めるかが大きな課題である。
タクシー業界が他の2つの業界と異なるのは、個人事業主の占める割合です。国土交通省の調査では、タクシー事業者総数のうち、約85%が個人タクシーであることが報告されています。個人の裁量に任されてしまっている部分が多いことが、運送業界の中でも特異な存在といえるでしょう。
トラック運転手の労働時間の現状
厚生労働省の調査で、もっとも時間外労働が多かったのはトラック業界でした。労働基準法では、労働時間は原則として1日8時間及び1週40時間以内と定められていますが、トラック業界では次のような驚くべき数字が報告されています。
- 45時間超:16.3%
- 60時間超:13.6%
- 80時間超:5.5%
- 100時間超:1.0%
トラックドライバーの長時間労働は、以前から解決すべき課題として取り上げられていました。国土交通省が平成27年に実施した調査では、次のような報告がされています。
・ドライバーの1運行の拘束時間は、全体では13時間以内が63.4%であるが、16時間超が13.0%となっている。車種別にみると16時間超の割合は、大型が16.6%と最も高く、中型で7.5%、普通で3.1%となっている。
・休息期間8時間未満の運行は全体では15.8%となっており、車種別にみると、大型が20.2%と最も高く、中型で8.9%・普通で4.2%となっている。
・連続運転時間4時間超の運行は、長距離で32.7%、短・中距離で5.7%となっている。
・走行距離帯別にみたドライバーの1運行の拘束時間は、16時間超は長距離で43.1%、短・ 中距離で5.3%となっている。
引用元:トラック輸送状況の実態調査結果(全体版)|国土交通省
トラック運転手の中でも、大型・長距離の運転手は拘束時間・連続運転時間が長く、休息時間が短いことがわかります。トラック運転手は残業時間や拘束時間が長い・体力的に厳しいというネガティブなイメージは、このような現状や転職・リタイヤした元運転手などが実体験を元に感じているエビデンスのあるものといっても良いでしょう。
2024年問題で大打撃を受けるのはトラック運転手?
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運送業界は大きな課題を抱える業界です。残業時間の多さや拘束時間の長さなどは、雇用者側が故意に行っているのではなく、運送業界ならではの理由があります。
これから迎える働き方改革法の適用により、運送業界はどのような打撃を受けるのでしょうか?
トラック運転手の残業時間が長い理由
トラック運転手の残業時間が長くなる理由は3つあります。交通渋滞・人手不足による過重労働・そして荷待ちの時間です。
荷待ちとは、荷主などの都合によってドライバーが待機している時間のことです。
- 荷物が出来上がるまでの待機時間
- 荷下ろしの順番待ち
などが該当します。平成27年に国土交通省が実施した調査では1運行あたりの荷待ちの発生状況が次のように報告されています。
- 30分以内:22.5%
- 1時間超2時間以内:26.4%
- 3時間超:5.1%
この調査結果の荷待ち時間は1運行当たりで報告されているため、1ヶ月に換算するとかなりの時間が荷待ちとして費やされていることは明白です。通常の荷役作業や運行ではなく、荷待ち時間が長時間労働の原因になっているといっても過言ではないでしょう。
2024年問題とは
運送業界における2024年問題とは、時間外労働時間が年間960時間に制限される働き方改革法の適用によって、運送業界が受ける大きな影響のことです。
- 上限時間の遵守=罰則の制定
- 運送会社の売上・利益の減少=倒産
- 残業代の削減によるトラック運転手の収入減少=離職率アップ
などの問題が考えられます。働き方改革法は、大企業が2019年4月・中小企業が2020年4月にすでに適用されています。運送業に適用されるのは2024年4月。急な適用には対応できないと見なされたため、2019年から2024年までの5年間は猶予期間とされたのです。
年間960時間の時間外労働を超えた場合、運送会社に対しては罰則として6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰⾦が課されることも定められています。会社側も運転手も、大きな影響を受けることは間違いありません。
予想できるトラック運転手の大打撃
トラック運転手の収入の特徴として挙げられるのが、変動給の割合の多さです。
職種(一般) | 2019年固定給(円) | 2019年変動給(円) | 小計(円) |
---|---|---|---|
男性運転者平均 | 178,600 | 157,100 | 335,700 |
男性・けん引運転者 | 203,100 | 180,400 | 383,500 |
男性・大型運転者 | 177,900 | 178,100 | 356,000 |
男性・中型運転者 | 155,300 | 127,500 | 282,800 |
男性・準中型運転者 | 178,000 | 106,900 | 284,900 |
男性・普通運転者 | 196,000 | 86,000 | 282,000 |
女性運転者平均 | 160,300 | 114,100 | 274,400 |
女性・けん引運転者 | 203,500 | 144,800 | 348,300 |
女性・大型運転者 | 163,800 | 156,400 | 320,200 |
女性・中型運転者 | 137,800 | 109,900 | 247,700 |
女性・準中型運転者 | 164,600 | 126,600 | 291,200 |
女性・普通運転者 | 176,500 | 39,700 | 216,200 |
参照元:「2019年度版トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態」について | 全日本トラック協会
月給の2割以上、多い場合は5割近くを占める変動給の中には残業代が含まれています。この残業代が法律で規制されてしまうことで、トラック運転手の収入が減少することが予想されるのです。
減収となった場合、今までの生活の根幹が揺らぎ、転職を余儀なくされる人も出てくるでしょう。そうなると、人手不足の状態はますます加速し、運送会社の倒産を招く可能性もゼロではありません。
運送業の残業時間問題に解決策はある?
多くの業界の中でも残業時間の平均値が高い運送業界。これから迎える2024年問題も含めて、根本的な解決策はあるのでしょうか?
生産性の向上
運送業における残業時間の削減は、長い間課題として掲げられ、解決すべき問題として取り組まれてきました。2024年問題を抱えた以上、生産性の向上を図ることが非常に重要な解決策といえます。
運送業界における生産性の向上について、国土交通省は以下の3つの柱を提言しています。
- 実車率
- 実働率(距離・時間)
- 積載率
KPI | 生産性の向上 | 取り組みイメージ |
---|---|---|
実車率 | ・積卸(荷役・検品・附帯業務)等の効率化 ・荷待ち時間の削減 ・片荷への対応 | ・適切に整理した仕分けの徹底による積卸時間削減 ・積卸専門社員の配置によるドライバーの負担軽減 ・荷主とトラック運送事業者の出荷貨物等の情報共有による荷待ち時間の削減 ・入庫受付システムの導入による荷待ち時間の削減 ・共同配送による帰り荷の確保 |
実働率 | ・トラックの非稼働時間(使用されていない時間)の削減 | ・中継輸送のネットワークの形成による長距離輸送の防止によるトラック実働率の向上 |
積載率 | ・各種の共同化、運送条件の変更に伴う空き重量、容量の削減 | ・荷主間の協力による共同配送 ・物流拠点の共同化 ・荷主、トラック運送事業者の協力による共同配送 ・幹線輸送の共同化 |
参照元:トラック運送における生産性向上方策に関する手引き|国土交通省
限られた人材の中で生産性を向上させるには、運送業界全体の仕組みを見直し、取り組んでいく必要があります。
運送会社の経営改善
運送会社の経営改善も残業時間問題を解決する方法の一つです。公益社団法人全日本トラック協会が平成30年に発表した『トラック運送業界の働き方改革実現に向けたアクションプラン』には、次の4つの項目が挙げられています。
- 労働生産性の向上
- 運送業者の経営改善
- 適正取引の推進
- 多様な人材の確保・育成
中でも、運送会社として取り組むべき事項として、次の2つはは喫緊の課題とされています。
- ドライバーの処遇改善
- 経営基盤の強化
経営基盤を強化し、コンプライアンス経営を行うよう指示が出されていますが、難しい問題として取り組みがなかなか行われていないのも現実です。働きやすい環境を整備することで離職率を下げ、人材確保が叶えば残業時間問題も解決に向かうといえるでしょう。
人材確保・育成
運送業界の大きな問題の中には、深刻な人材不足が挙げられます。BtoCの市場規模はこの10年で約2.5倍にまで拡大し、フリマアプリ等の影響でCtoCの取引も増加している中で、労働人口は減り続けているのです。
厚生労働省は働き方改革の中で「柔軟な働き方の実現」を掲げています。運送業界における柔軟な働き方とは、次のような項目が考えられるでしょう。
- 高齢者や女性の積極的な採用
- 産休・育休の取得実績を作り働き続けることができる環境づくり
- 短時間勤務や副業の許可
労働人口が減り続けていく中でも、運送業界はエッセンシャルワーカーとして社会生活を支えなければいけません。2024年問題を解決するためにも、運送業界自体の古き悪しき常識を覆し、多様な働き方ができる環境を作っていくことが重要です。
運送業で違法な残業時間がある場合の対処法
運送業界、特にトラック業界には独特の固定観念があります。たとえば、「残業は当たり前」「眠い目をこすって運転するのが当たり前」といったことです。
過労死の問題などが起きている以上、業界全体で是正に取り組むことが重要です。しかし、中には、ブラック企業と呼ばれる法令遵守に背を向ける会社があることも否めません。
「違法な残業時間がある」「休日出勤を強要される」など、働いている現役運転手の方が問題に直面した場合の対処法について解説しましょう。
法律について理解する
ブラック企業と呼ばれる会社の最大の特徴は、法律を守っていないことです。今回の働き方改革法には、残業時間や拘束時間の規定に違反した場合の罰則も定められています。
自分達が不当な扱いを受けているという意識を持てること、何がどう違反しているのかを調べる姿勢と理解が必要です。企業が守らなければならない法律とその内容を知り、自分達が置かれている状況を理解できるように努力しましょう。
改正されない場合は相談・転職
勤務する会社が、法律を遵守しない・指摘を受けても改正されない会社であることがわかった場合は、しかるべき機関への相談、もしくは転職を検討することをおすすめします。違法行為がある場合や、悪質な勤務状況が継続する場合は、労働基準監督署へ相談することで法律上の正しいアドバイスをもらうことが可能です。
会社に違法行為があると認められた場合には、調査や是正勧告などの措置が取られることがあります。また、自浄作用のない会社には見切りをつけて、別の運送会社へ転職するのも有効な対処法です。
大手運送会社は法令に則った経営を行っており、特に労働問題が表面化した場合などは、積極的な労働環境改善に努めています。同じくらいの給与だったとしても、福利厚生面や賞与実績などを考えると、大手運送会社の方が安心して働ける環境が整っていることが多いため、転職を検討してみるのも良い方法です。
転職するならエージェントの活用を
転職を成功させたいのであれば、転職エージェントの活用もおすすめです。
転職エージェントは、ほとんどが無料で利用できることに加えて、業界に精通したアドバイザーが的確な企業選定を手伝ってくれます。転職経験の少ない人や、未経験で転職を検討されている方には、業界の情報をくわしく教えてくれるので、自分一人で行う情報収集とは質も量も異なります。
運送業界にはブラック企業とよばれる悪質な会社もあるので、せっかくの就職を失敗で終わらせないよう、転職エージェントの利用も視野に入れてみてください。
まとめ
運送業界の残業時間問題は、簡単に解決できることではないかもしれません。しかし、2024年の改正労働基準法の適用を受けて、業界全体が解決する方向へ舵を切り、取り組みを強化していくことで、労働環境も少しずつ改善されていくと願いたいです。
運送業界の仕事には、さまざまな職種があり、選択肢がたくさんあります。運送業界への転職は、ぜひ当サイト「ドライバーコネクト」にご相談ください。 業界に精通した専任のスタッフが、手厚いサポートで転職をフォローし、条件や希望に合った仕事探しをお手伝いいたします。