【体験談】運送業が「きつい」理由は?元運転手がリアルな実態を紹介

運送業界は深刻な人手不足に悩まされています。求人を募集しても応募者が来ない、入社してもすぐに辞めてしまう……人手不足の原因として考えられるのが、仕事自体がきついということです。運送業、特にトラック運転手の人手不足は歯止めがかからず、離職率も増加しつつあります。

そこで今回は、運送業の仕事はきついと言われる理由を、元トラック運転手の筆者が運送業の実態を紹介します。運送業全体が現在抱えている問題や、実際にどんな仕事内容がきついといわれるのかなどを具体的に解説しますので、ぜひ参考にしてください。

運送業がきついと言われる理由

運送業がきついといわれる理由は複数あります。筆者が実際に働いて「きつい」と感じた5つの理由をピックアップして紹介しましょう。

仕事内容と給料のバランスが悪い

運送業がきついといわれる最大の理由は、仕事と給料のバランスが悪いことです。

運送業の仕事内容は、以前と変わっていません。筆者が勤務していたバブルの頃は、トラックに3年乗れば家が建つなんていうことがいわれていました。

当時、トラック運転手が人気のある職業だった理由は、とにかく稼げたことです。年齢・学歴に関係なく、やる気と体力があれば家族を養うことなんて簡単でした。

それが現在では給料が下がったにもかかわらず、仕事内容が変わらず厳しいという状況に陥っています。多少仕事がきつくても、それに見合った給料がもらえるなら簡単に仕事を辞めたりはしません。

仕事はきついのに給料が安い……そんな状態では誰もが「きつい仕事」というレッテルを貼りたくなるでしょう。

体力・精神力を要する

運送業、特にトラック運転手の仕事は体力と精神力が必要です。運転が好きな人でも、長時間ハンドルを握るのは疲れますし、常に時間を気にして走るのには相当なプレッシャーがかかります。

運ぶ荷物にもよりますが、自分自身で積み込み・荷降ろしをするのであれば、相当な体力も必要。運転も危険と隣り合わせであるため、集中力を切らさない精神力も求められます。

体力に自信のない人や、運転自体が嫌いな人、孤独が苦手な人にとっては、これ以上ないストレスがかかるため、イコール「きつい仕事」といわれてしまう可能性も否めません。

人手不足による負担増

業界全体が人手不足に悩んでいる今、そのしわ寄せは現役運転手に降りかかっています。

単純に100の仕事を100人で行うのと、20人で行うのでは一人ひとりの負担が異なります。一時の穴埋めであれば我慢できる範囲でも、それが常に行われているような状態では、現役運転手たちは増え続ける負担から逃れることができません。

人手不足を補うために現役運転手の負担が増える⇒負担に耐え切れない運転手が辞める⇒人手不足が悪化するという負のスパイラルに陥っているのです。

ブラック企業のイメージ先行

残念ながら運送業界にはブラック企業と呼ばれる悪質な会社が存在します。

  • 残業代や賃金の未払い
  • トラックの整備不良
  • 無理な運行
  • 法定福利厚生制度への未加入

運送業界は働き方改革関連法の適用が2024年からとなっていますが、おそらく従わない(従えない)企業も少なくないといわれています。

世間一般の人が見る運送業界は、3K・ブラックなど、ネガティブなイメージが先行しがち。あまり実態を知らない人でも「運送業はきつい」というレッテルを貼ってしまいがちな状況にあるといえます。

運転手に対する偏見と差別

トラックの運転手には、いわれのない偏見や差別が存在します。以前ネットで炎上した「底辺の職業」という記事でもランキング入りしていました。

  • 労働時間の長さ
  • 給料の低さ
  • 学歴不問で勤務できる
  • 資格がいらない

などが原因として挙げられていましたが、確かにすべてが嘘ではありません。ただし、イメージとして思い描いているものと、実際に働いて感じることはまったく違います。

「何となく」思い描いているイメージが悪いため、運転手という仕事に対する偏見や差別が生まれてしまっているのです。「運送業の仕事はきつい」という固定観念に縛られている人が多いことも理由の一つでしょう。

運送業の現状はどうなっている?

運送業に関する長時間労働は社会的な問題となり、深刻な人手不足に国がさまざまな施策を出しています。改善の足がかりとなるのか、運送業の現状について紹介しましょう。

運送業の雇用・求人状況

運送業・トラック運転手の人手不足がどれほど深刻なのか、数値を用いて紹介しましょう。

令和3年(2021年)11月の厚生労働省の労働経済動向調査では、運輸業・郵便業の欠員率が5.7%と報告されています。欠員率とは、常用労働者数に対する未充足求人数の割合のことで、医療・福祉は2.5%、宿泊・飲食は5.5%です。

コロナ禍における外出制限などを加味しても、運輸業・郵便業の5.7%はもっとも高い数字となっています。また、国土交通省が発表した「トラック運送業の現状等について」では次のように報告されています。

  • 平成30年10月の貨物自動車運転手の有効求人倍率は2.79
  • 全職業の有効求人倍率は1.49

全職業に比べると、貨物自動車運転手の有効求人倍率は実に2倍にもなります。運送業の雇用・求人状況の厳しさ・人材不足が顕著に表れている数字といえるでしょう。

2024年問題について

2024年問題とは、時間外労働時間が年間960時間に制限される働き方改革法の適用によって、運送業界が抱えるさまざまな問題のことです。運送業界が抱える課題には、次のものなどが挙げられています。

  • 上限時間の遵守=罰則の制定
  • 会社の売り上げや利益の減少
  • トラックドライバーの収入減少(残業代の削減)
  • 荷主による運賃の上昇

働き方改革法は、大企業が2019年4月・中小企業が2020年4月に適用されていますが、運送業に適用されるのが2024年4月。2019年から2024年までの5年間は猶予期間とされていて、2024年4月から本格的な適用が開始されます。

年間960時間の時間外労働を超えた場合、罰則として6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰⾦が課されることも定められていますが、反面、残業代を削られたトラック運転手の収入面も懸念すべき課題です。

国が主導する施策の効果は?

運送業界の人手不足を懸念した政府は、国土交通省・厚生労働省が連携して人手不足の解消に繋がるような施策を打ち出しています。目的は2つあり、人材確保と育成と魅力のある職場づくりを掲げています。

  • トラック運送業への入職促進
  • 事業主などによる人材育成の推進
  • 関係団体などとの連携による人材育成・定着支援の推進
  • 女性の活躍促進
  • 取引環境・長時間労働・賃金などの労働条件の改善
  • 雇用管理に資する助成制度の活用促進
  • 雇用管理の知識習得・実践の推進
  • 現場の安全管理の徹底
  • 雇用管理制度の導入支援
  • 職場定着支援助成金による支援

さまざまな施策が行われていますが、特に課題が解決しているというわけでもありません。

これから迎える2024年問題と併せて、国にはさらなる施策の実施と徹底をお願いしたいというのが本音といえます。

運送業できついと言われる仕事内容はこれ!

運送業がきついといわれる漠然としたイメージではなく、実際に働いた人間の「これはきつかった!」という経験談は、説得力のあるものです。筆者や現役運転手たちの本当にきついと感じた仕事内容について紹介します。

荷物の手積み手降ろし

荷物の手積み手降ろしはもっともきつい仕事といっても過言ではありません。

  • 2つの家が同居する新居への引越し。荷物の量が半端なくて死ぬかと思った。
  • ベンダーへの飲み物の納品。冷蔵品だった&冬場だったこともあってあれはきつかった。
  • ホームセンターへ納品した葦簀。トレーラーから降ろして積んで納品…地獄だった。

トラック運転手には職種が複数あるため、全部の仕事に荷物の積み降ろしがあるわけではありません。しかし、運んでいる荷物によっては、長時間の運転よりも荷物の積み降ろしがきついということがあります。

荷待ちや渋滞などのイレギュラーな拘束

荷待ちや渋滞など、イレギュラーなことで拘束時間が長くなるのもかなりきついです。

  • 距離的には100キロ位なのに荷待ちで5時間待たされた。当然残業で待ちくたびれた。
  • 連休中に高速で事故。通行止めになって無理やり一般道へ。2倍以上時間がかかった。
  • 荷待ちを申し訳ないと思わない荷主。当たり前みたいな感じで2時間以上待たされた。

トラック運転手は、思っているよりも時間に追われて走っています。そんな中でイレギュラーな事態が起きると「きついなぁ」と感じてしまいます。

変則的な勤務時間

勤務時間が変則的になるときついです。ずっと夜間帯・ずっと早朝帯など、固定されていれば身体が慣れることできつさは緩和されるのですが、急な勤務時間の変更があると、身体は相当きつく感じます。

  • いつもは夜間帯の勤務なのに、急に1日だけ日勤に出てくれと言われた。調整もしてもらえなかったのでものすごくきつかった。
  • 夜中から朝までの仕事で休みの日も朝方に帰ってくる。疲れていてどこへも行けない。
  • 夜勤帯の勤務は年齢を重ねるときつくなる。急なシフト変更にはもう対応できない。

運ぶ荷物や距離によっては、変則的な勤務になることがあります。身体が慣れていなかったり、前日までの疲労が回復してなかったりすると、変則勤務はきついと感じるものです。

ノルマ・時間制限のある業務

ノルマや時間制限の厳しい業務は、精神的にきついです。

  • 宅配の集荷のノルマがある。コースに当たり外れがあるので住宅街担当のときはきつかった。
  • 時間厳守の納品先がある。渋滞などのどうしようもない事情で遅れても嫌な顔をされる。
  • 休憩時間を取れと言われるけれど、休憩を取っていたら納品に間に合わない。

運送業の中でも宅配は集荷のノルマがあります。また、店舗配送は時間に厳しいですし、急ぎの運行などの場合はタイトなスケジュールを組まなければなりません。

あまりにも厳しいノルマや時間制限は、精神的に追い詰められてしまうので、きついと感じます。

お客様からのクレーム対応

お客様からのクレームを運転手が受けることもありますが、これはきついです。特に、toCの業務で個人相手の運送業の場合は、かなり多くのクレームを受ける羽目になります。

  • 置き配を指示したのはお客様なのに、荷物が濡れたといってクレームをつけられた。
  • 荷物の破損。運転手の弁償責任はないはずなのに、荷主が抵当な理由をつけて給料から差し引かれた。
  • 荷物の内容は知らないけれど壊れていたらしい。出荷元に問い合わせるように言ったけれど散々文句を言われた。

自分自身の過失であれば仕方のないことですが、お門違いのクレームを受けるのは、正直精神的にやられます。自分が悪くはないとわかってはいても、怒っている人の相手をすることで、きついと感じてしまう職種もあるのです。

【体験談】運送業はきついだけ?元運転手が語るメリット

運送業はきついと感じることも多いですが、決してデメリットだけではありません。筆者は20年近くトラック運転手の仕事に就いていましたが、たくさんのメリットを感じることもできました。実際に働いてみて、これは良かったと思うメリットを5つ紹介しましょう。

人間関係に疲弊しない

トラック運転手は人間関係に疲弊することが少ないです。一般のオフィスのように仕事をしている間ずっと顔を突き合わせているということがないからです。

同じ会社の同僚や取引先で「合わないな」と思う人がいても、接するのは最低限の時間だけなので、我慢できます。仲の良い人達とは普通に付き合って、合わない人とは距離を置ける……人付き合いが苦手・一人の時間を大切にしたいという人にとって、トラック運転手は非常にメリットの多い仕事です。

職種が多く転職がしやすい

トラック運転手には複数の職種があります。また、業界全体として転職志向が高いため、転職のハードルが低いこともメリットといえるでしょう。

筆者も数回転職をしましたが、転職者だからといって不利になることはまったくありませんでした。

大きな会社であれば複数の部門があり、長距離・中距離・ルート配送などを部署変更だけで経験できるという強みもあります。トラック運転手の職種はそれぞれ特徴も異なるので、同じ運転手を続けながら自分に合った仕事を探すことができるのです。

年齢・学歴不問

基本的に、トラック運転手は年齢・学歴不問で勤務することができます。必要なのは乗るトラックに応じた運転免許だけ。あまりにも転職回数が多いと敬遠されてしまうこともありますが、たいていの場合はやる気重視で面接をしてくれます。

「学歴がなければ仕事がない」「年齢を重ねているから正社員は難しい」運送業界であればそんなことは関係ありません。筆者も、女性というだけで断られた仕事がありましたが、運送業界はウェルカム状態で、20年近く勤務することができました。未経験でも丁寧に指導してくれる会社が多いのも嬉しいメリットです。

好きなことで稼げる

車の運転が好きな人にとって、トラック運転手は好きなことで稼げる良い職業です。好きなことを仕事にすることは難しいとよくいわれますが、筆者の場合は車の運転が好きという理由で転職を決めたようなものでした。

周囲の人たちも「車いじりが好き」「一人でできる仕事が好き」「車の運転が好き」など、自分の好きなことを仕事にできている人が多かったため、これは大きなメリットだなと感じていました。

好きなことを仕事にできると、仕事自体が楽しくなります。多少きついことや嫌なことがあっても、仕事が楽しければ吹っ切ってしまえるし、仕事を辞めようとまで思うことが少なくなるのです。

「好きなことをして稼げて家族を養えるのは幸せだ」と言った同僚がいましたが、正にその通り!好きなことで稼げるのは大きなメリットといえます。

自分の裁量で仕事ができる

トラック運転手には自分の裁量で仕事ができるというメリットもあります。特に、長距離運転手などは、ある程度のスケジュールを組んだ上で、自分に合った運行ができるのです。

  • とりあえず頑張って目的地付近まで行く人
  • 全体的なバランスを見て計画的に運行する人
  • 寝る時間をしっかりと確保したいために少し時間を前倒しにする人

筆者の同僚にもさまざまなタイプの人がいましたが、みんな自分に合った運行を理解していて、無理のないように工夫を凝らしていました。こんなふうに自分の裁量で仕事ができるのは、トラック運転手のメリットの一つだといえます。

まとめ

運送業、特にトラック運転手は決して楽な仕事ではありません。実際に働いていた筆者でも「きつい」と感じることは多くありました。

ただし、どんな仕事も同じかもしれませんが、決してきついだけではなく、メリットも確実に存在します。きつさとメリットを天秤にかけて、メリットの方が大きければ長く勤務することが可能になるでしょう。

筆者はトラック運転手として約20年勤務しましたが、きついことばかりではなくメリットも多い仕事です。運送業へのより良い転職につなげるために、ぜひ当サイト「ドライバーコネクト」にご相談ください。業界に精通した専任のスタッフが、手厚いサポートで転職の成功をフォロー致します。