【2022】運送業の労働時間はどれくらい?トラックドライバーの2024年問題とは?

労働時間の長さは、運送業界にとって改善すべき課題として長年掲げられていたものです。

労働時間の長さ=仕事が大変というイメージが浸透し、若い世代の定着も進んでいません。

深刻な人材不足を受けて、国が主導したさまざまな施策が打ち出されています。中でもトラックドライバーに影響が大きいといわれているのが「働き方改革法」です。2024年4月から適用される働き方改革法によって、トラックドライバーにどのような影響が出るのか、これから転職を検討する人はどんな運送会社を選ぶべきなのかくわしく解説します。

運送業界2024年問題の概要

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運送業界の2024年問題とは、時間外労働時間が年間960時間に制限される働き方改革法の適用によって起こるさまざまな問題のことを指しています。

  • 上限時間の遵守=罰則の制定
  • 会社の売り上げや利益の減少
  • トラックドライバーの収入減少(残業代の削減)
  • 荷主による運賃の上昇

などが考えられます。

働き方改革法は、大企業が2019年4月・中小企業が2020年4月に適用されていますが、運送業に適用されるのが2024年4月です。2019年から2024年までの5年間は猶予期間とされ、2024年4月から本格的な適用となっています。

年間960時間の時間外労働を超えた場合、罰則として6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰⾦が課されることも定められています。

2024年問題で運送業界に何が起こる?

運送業へ適用される働き方改革法。2024年4月には本格的に適用されることが定められていますが、働き方改革法が適用されることで運送業界にはどのような影響があるのでしょうか?

具体的に起こり得る問題を4つピックアップして考えてみましょう。

ドライバーの収入減少

運送業のトラックドライバーは、時間外労働が当たり前の環境にあります。交通渋滞・工事・通行止めなど、道路事情によって運行時間が長引いたり、荷待ちで思わぬ残業になったりすることはドライバーあるあるです。

職種(一般)2019年・固定給(円)2019年・変動給(円)小計(円)
男性運転者平均178,600157,100335,700
男性・けん引運転者203,100180,400383,500
男性・大型運転者177,900178,100356,000
男性・中型運転者155,300127,500282,800
男性・準中型運転者178,000106,900284,900
男性・普通運転者196,00086,000282,000
女性運転者平均160,300114,100274,400
女性・けん引運転者203,500144,800348,300
女性・大型運転者163,800156,400320,200
女性・中型運転者137,800109,900247,700
女性・準中型運転者164,600126,600291,200
女性・普通運転者176,50039,700216,200

参考:「2019年度版トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態」について | 全日本トラック協会

2019年に全日本トラック協会が調査した結果では、変動給の多さが特徴となっています。変動給とは、残業代などが該当する部分です。割合の大きさから考えても、収入減少につながることは明白といえるでしょう。

ドライバーの不足

2024年問題でもっとも危惧されているのが、ドライバーの離職による人材不足です。2022年現在、運送業におけるトラックドライバーの不足は深刻な問題です。

国土交通省が発表した『トラック運送業の現状等について』によると、貨物自動車運転手の平成30年10月の有効求人倍率は2.79でした。全職業の有効求人倍率は1.49ですので、トラックドライバーの人材不足が顕著に表れている結果といえます。

2024年問題で残業時間の減少による収入減少が現れた場合、離職をするドライバーが増えさらなる人材不足になる可能性が高くなるのです。コロナ禍におけるECサイトの需要増などによって現状でも人材確保が厳しい中、ドライバーの不足は社会生活の基盤を揺るがす事態になりかねないといわれています。

運送会社の倒産

残業時間の上限が設定されることで、減少するのはドライバーの給料だけではありません。運送会社の売り上げや利益も連動して減少することが考えられます。

運送会社側には、人件費の他にも毎月決まって支払わなくてはいけない固定費があります。売り上げが減少し、固定費の割合が大きくなればなるほど利益が出ず、ドライバーの離職などが重なれば、事業が立ち行かなくなる可能性も考えられるのです。

会社全体の利益が減少する可能性があり、最悪の場合は倒産する運送会社も出てくることを考えておく必要があります。

荷主の受ける影響は甚大

労働時間の減少・売り上げや利益の減少が考えられる2024年問題では、荷主の受ける影響も甚大です。

運送会社側は、残業時間が減ったことで生じる損失を運賃の上昇で埋めようとするでしょう。運送業界全体が運賃の上昇を積極的に働きかけた場合、荷主の物流コストは大きく跳ね上がることになります。

運送業のドライバーが長時間労働になる原因

運送業のトラックドライバーは長時間労働が当たり前のようになっていますが、そもそもなぜ長時間労働が課せられるのでしょうか?運送業のドライバーが長時間労働になる原因を考えてみましょう。

交通渋滞

交通渋滞は、運送業のドライバーにとって避けては通れないものです。大型車などは普通車のように抜け道を使えることも少なく、渋滞解消まで我慢していなくてはなりません。

連休や帰省ラッシュなど、あらかじめ予測が立てられる場合は対処法もありますが、急な事故による渋滞や緊急工事による通行止めなどはどうしようもないのです。

特に、高速道路の場合はICで降りることもできずに渋滞にはまっていなくてはならないため、延着しないかどうかハラハラすることも多くあります。いったん渋滞に巻き込まれれば、運行スケジュールは大きく押してしまうので、最終的に帰着する時間が伸びて残業時間として計算されることになるのです。

荷待ち

荷待ちとは、荷主などの都合によってドライバーが待機している時間のことです。

  • 荷物が出来上がるまでの待機時間
  • 荷下ろしの順番待ち

などが該当します。

平成27年に国土交通省が実施した調査では1運行あたりの荷待ちの発生状況が次のように報告されています。

  • 30分以内22.5%
  • 1時間超2時間以内:26.4%
  • 3時間超:5.1%

30%を超えるドライバーが1時間以上の荷待ちをし、3時間超にも及ぶ荷待ちが5.1%もあるのは驚きです。この荷待ち時間は1運行当たりの時間のため、1ヶ月に換算するとかなりの時間が荷待ちとして費やされていることがわかります。

通常の荷役作業や運行ではなく、荷待ち時間が長時間労働の原因になっているとも考えられるでしょう。

人材不足

運送業界の人材不足は深刻です。BtoCの市場規模はこの10年で約2.5倍にまで拡大し、フリマアプリ等の影響でCtoCの取引も増加しています。

ECサイトの利用急増に伴って宅配業界はドライバーの確保に躍起になっているのが現状です。人材不足は、在籍している現役ドライバーの負担を増やします。

  • 荷物の増加
  • 荷下ろし先の増加
  • 集荷先の増加

どれをとっても現役ドライバーの負担=労働時間の増加を意味するものです。人材は不足していてもこなさなければならない仕事量は変わらないという状態は、長時間労働を招く大きな原因と考えられます。

運送業ではどんな会社に転職すべき?

2024年問題で大きな影響が出ると予測されている運送業界ですが、中にはこれから運送業界へ転職しようと考えている方もいらっしゃるはずです。

そこで、これから運送業へ転職しようと検討している方や、業界内での転職を考えている方に向けて、どんな会社を選ぶべきなのか、選択のポイントを紹介します。

労働環境の見直しに積極的な会社

2024年問題は、運送会社にとっても大きな影響を受けるものです。労働時間の上限が定められ、罰則もあることから、不足する人材の確保を早急に行う必要があります。

社員の離職率を低くし入社希望を増やすためには、まず労働環境の見直しや改善を積極的に行わなくてはなりません。今まで以上に働きやすい会社、人を紹介しても良いと思ってもらえる会社でなければ、この困難な状況を乗り切ることはできないでしょう。

労働環境の見直しに積極的な会社は、社員のことを考え、企業としての姿勢を示していることになります。

以前ブラック企業として騒がれてしまった大手宅配会社が大掛かりなテコ入れを行い、労働環境の改善に努めていることは周知の事実です。人手不足に手をこまねいているだけではなく、企業として積極的な働きかけを行っている会社を選びましょう。

ITの活用を行っている会社

運送・物流業界の人材不足や、2024年問題で起こり得る問題解決には、ITの活用が有効だといわれています。直近の話ではなくても将来的にITの活用を検討していたり、既にITの活用を行っていたりする会社を選択することがおすすめです。

運送業界でのIT活用には、下記のような例が挙げられます。

  • ITシミュレーション:無駄のない積載方法を確認し効率を上げる
  • 輸送管理システム:荷下ろし後の帰り便を活用し輸送回数を減らす
  • 配車管理システム:必要なデータから最適な配送プランを組み立てる
  • スケジュール管理システム:スマートフォンの位置情報でスケジュール管理を行う

運送業界は驚くほどアナログな業界でもあり、人手が必要なシステムを変えていかなくてはなりません。設備投資は必要ですが、ITの活用を積極的に行うことで、業務の効率化や人手不足の解消が実現するため、ITの活用を積極的に行っている会社は将来性があるといえるでしょう。

法律の遵守を徹底している会社

運送業界には残念ながらブラック企業と呼ばれる会社が存在します。

ブラック企業と呼ばれる会社の特徴は、法律を守っていないことです。今回の働き方改革法には、違反した場合の罰則も定められています。ブラック企業は法律の抜け目をかいくぐっているため、一向に労働環境が改善されません。

2024年問題はドライバーだけではなく、会社や荷主にも大きな影響があります。法律を熟知した上での企業努力が求められているといっても過言ではないでしょう。

法律に則った経営を行い、労働環境を常に改善しようという意欲のない会社は淘汰されていきます。ドライバーはブラック企業を見極める目や法律に関する理解を深める必要があるのです。

利益が減少していたとしても、イコール法律遵守のためであれば、企業努力として評価すべきものといえます。

まとめ

運送業の2024年問題は、ドライバーだけではなく業界全体に大きな影響を及ぼすと考えられます。しかし、今回の法律改正はドライバーの権利や生活を守るための第一歩です。この機会に転職を検討されている方は、業界全体が労働環境の見直しに動き出していることを知った上で、転職活動を行ってください。 トラックドライバーの仕事には、さまざまな職種があり、選択肢がたくさんあります。運送業界への転職は、ぜひ当サイト「ドライバーコネクト」にご相談ください。業界に精通した専任のスタッフが、手厚いサポートで転職をフォローし、条件や希望に合った仕事探しをお手伝いいたします。