【体験談】運送業で「年収1000万」はあり得るのか?現状と問題点を解説

「運送業は稼げない」近年ではネガティブなイメージが増えてしまった運送業ですが、以前は違いました。学歴や経験がなくても、免許さえ持っていればかなり稼げる仕事に入っていたのです。「3年乗れば家が建つ」「自分でトラックを購入して稼ぐ」ということも少なくありませんでした。

では、現状の運送業はどうなのでしょうか?元トラックドライバーの筆者が、現在の運送業が抱える問題点や、年収をアップさせる方法についてくわしく解説します。

運送業で年収1,000万円稼ぐのは無理?現状を知る

結論からお伝えすると、現在の運送業において従業員として働くことを前提とすると、年収1,000万円を叶えるのは至難の業です。どんな働き方をしようと、年収1,000万円を稼ぎ出すことは難しいでしょう。

年収1,000万円を稼ぎ出す術を考える前に、運送業の現状について解説します。

働き方改革の影響

運送業が稼げていた頃のからくりは、残業代などの変動給が大きく影響しています。運送業の特徴として、変動給の割合が大きいことが挙げられますが、近年の働き方改革で運送業の長時間労働が問題視されました。

職種(一般)2019年固定給(円)2019年変動給(円)小計(円)
男性運転者平均178,600157,100335,700
男性・けん引運転者203,100180,400383,500
男性・大型運転者177,900178,100356,000
男性・中型運転者155,300127,500282,800
男性・準中型運転者178,000106,900284,900
男性・普通運転者196,00086,000282,000
女性運転者平均160,300114,100274,400
女性・けん引運転者203,500144,800348,300
女性・大型運転者163,800156,400320,200
女性・中型運転者137,800109,900247,700
女性・準中型運転者164,600126,600291,200
女性・普通運転者176,50039,700216,200

参考:「2019年度版トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態」について | 全日本トラック協会

上記の調査結果からもわかるように、多い場合は給料の約半分が変動給となっています。残業代で稼げていた部分がカットされることで、ドライバーが得る給料が低くなってしまっているのです。

運送業では、2024年に予定されている働き方改革法の適用によって、さらに問題が生まれるといわれています。

  • 上限時間の遵守=罰則の制定
  • 会社の売り上げや利益の減少
  • トラックドライバーの収入減少(残業代の削減)
  • 荷主による運賃の上昇

時間外労働時間が年間960時間に制限されることで、さらなる減収が見込まれてしまうのです。

運賃の値下げから発生する低賃金

荷主による運賃の値下げは、トラックドライバーの年収を引き下げる原因の一つです。

筆者が勤務していた頃は、バブル期も含めかなり景気の良い時代であったため、1運行の運賃が非常に高く、給料もかなり好条件でした。とにかく製品・商品の消費がものすごいスピードだったため、出荷が追い付かない状況になっていたのです。

出来上がった製品・商品をいち早く顧客に届けなければならないため、時間帯も関係なく、「〇〇円出すから走って!」というような状況がまかり通っていました。それでも経済が高水準で動いていたことから、運賃の上昇も当たり前とされていたのです。

しかし、日本経済の景気の低迷を受け、運賃は一斉に下がりました。バブル期のようなお祭り騒ぎにならないと、以前のような高い運賃で運行することは難しいのかもしれません。

荷主の提示する運賃が低ければ、当然運送会社が支払う賃金も低くなります。日本経済全体が上昇傾向にならない限り、運送業界の低賃金は続いてしまうでしょう。

労働意欲の低下

「一生懸命働いても給料が安い」これは、ドライバーの労働意欲を低下させます。以前のように働けば働いただけ稼げる、給料が楽しみになるというような状況でない上に、運賃の値下げや残業の削減など、ドライバーの給料が上がる条件がないのです。

コロナ禍においてECサイトの需要が急増したため、運送業界は深刻な人手不足に陥っていますが、個々のドライバーの収入が上がることがない限り、人手不足は解消しないと思われます。

残業時間を増やせない以上、勤務時間内の労働がきつくなっていることは明白です。収入が上がらないのに仕事だけがきついという状況は、現場のドライバーの労働意欲を低下させる大きな原因となっています。

運送業の年収は現在どのくらい?

運送業の中心となるトラックドライバーの平均賃金について、2019年に全日本トラック協会が行った調査結果を基に解説しましょう。

職種(一般)2019年平均月給(円)
※1ヶ月平均の賞与含む
2019年平均年収(円)
※平均月給×12ヶ月
男性運転者平均371,5004,458,000
男性・けん引運転者434,7005,216,400
男性・大型運転者394,1004,729,200
男性・中型運転者305,7003,668,400
男性・準中型運転者310,3003,723,600
男性・普通運転者313,1003,757,200
女性運転者平均299,1003,589,200
女性・けん引運転者384,1004,609,200
女性・大型運転者355,1004,261,200
女性・中型運転者264,3003,171,600
女性・準中型運転者312,5003,750,000
女性・普通運転者235,3002,923,600

参考:「2019年度版トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態」について | 全日本トラック協会

この調査結果をみると、年収が500万円に届いているのは「男性・けん引運転者」だけです。仮に賞与を加算したとしても、年収1,000万円は程遠い金額であることがわかります。

運送業で年収1,000万円は稼げない問題点

運送業の実態では、年収1,000万円は程遠い状態であることがわかります。では、なぜ以前よりも稼げない状態になってしまったのでしょうか?ここでは、どんな問題があるのか検証してみましょう。

高齢化

業界全体の高齢化も、運送業界にとっては大きな問題となっています。働き手となる若い世代が増えないことで、トラックドライバーの平均年齢が上がってしまっているのです。

厚生労働省の調査では、トラックドライバーにおける40歳以上の比率は70%。29歳までの若年層は9.1%にとどまっています。若年層の全産業平均は16.3%です。トラックドライバーの業界は高齢化の問題にも直面していることが一目瞭然といえるでしょう。

若年層が育たなければ、高齢化は一層進み、団塊の世代が退職の年齢を迎えたときにさらなる人手不足に襲われる可能性が高まります。

慢性的な人手不足

運送業がこれから迎える2024年問題でもっとも危惧されているのが、ドライバーの離職による人材不足です。

2022年現在、運送業におけるトラックドライバーの不足は深刻で、国土交通省が発表した「トラック運送業の現状等について」によると、貨物自動車運転手の平成30年10月の有効求人倍率は2.79でした。全職業の有効求人倍率は1.49となっているため、トラックドライバーの人材不足が顕著に表れている調査結果といえるでしょう。

さらに、2024年問題で残業時間の減少による収入減が顕著となった場合、離職するドライバーが増えることは容易に想像できます。エッセンシャルワーカーとしての役割を担うドライバーの不足は、社会生活の基盤を揺るがす事態になりかねないのです。

ブラック企業の台頭

運送業界には残念ながらブラック企業と呼ばれる悪質な運送会社が存在します。ブラック企業にとって働き方改革や2024年問題は関係ありません。

長時間労働の常態化・低い賃金の据え置きは、離職率を上げ、運送業全体のイメージ悪化にもつながります。大手の運送会社の場合は法律を遵守し、雇用者を増やすことで働き方改革に対応していますが、ブラック企業の場合は個々の労働時間を増やしているのです。

不景気が続く現在の日本で、仕事がないから仕方がないとブラック企業で働いているトラックドライバーは確実に存在します。ドライバーから搾取することを何とも思わないブラック企業の存在は、運送業界の大きな問題となっているのです。

運送業で年収1,000万円稼げる可能性のある仕事は?

現在の状態で、運送業で年収1,000万円を稼ぎ出すことは非常に困難ですが、何とか近づける方法はないのでしょうか?年収1,000万円は無理でも、少しでも近づける可能性のある仕事を考えてみましょう。

歩合給の高い仕事

歩合給の高い仕事であれば、年収をアップさせる可能性はあります。筆者の元同僚は運送業で年収800万円をキープしていますが、彼が行っているのは大手宅配会社の宅配業務です。

宅配業界は、ECサイトの需要増に伴い、人手不足に悩んでいます。大手宅配会社の下請けとして、軽貨物で個人宅への宅配業務を請け負っているのです。

個人事業主として軽貨物を3台保有して対応し、1つの荷物を配達完了すると○○円、1ヶ月で○○個以上配達するとインセンティブがもらえる、という仕組みだとか。

インセンティブとは歩合給と同じ意味です。実際に行った仕事に対する報酬なので、頑張れば頑張った分だけもらえます。歩合給の高い仕事であれば、年収を上げることは難しくないでしょう。

特別な免許が必要な仕事

運送業で働くには運転免許が必要ですが、普通免許だけで年収1,000万円を稼ぐことは不可能です。資格手当がもらえる特別な免許を持っていれば、年収をアップさせることができます。

大型免許・けん引免許・危険物取扱者・玉掛け作業者の免許などを使う仕事は、運送業の中でも高収入です。また、現場だけではなく運行管理者や運行管理補助者など、管理に関わる仕事の資格は、業界内の転職にも非常に有利になります。

同じ運送業界でも、特別な免許が必要な仕事は高給になる傾向が高いため、資格や免許を取得することで、年収アップが近づくといえるでしょう。

賞与実績のある大手運送会社の仕事

毎月の給料で年収1,000万円は厳しくても、賞与実績のある大手運送会社の仕事であれば年収アップの可能性が高くなります。

賞与は業務実績によるため、儲かっていない会社の場合賞与の支給は期待できません。しかし、大手の運送会社であれば、4~5ヶ月分近い賞与実績を持つ会社もあるのです。

賞与が年収に加われば、非常に大きな年収アップにつながります。同じ運送業界の中での転職の際に、大手の運送会社へ転職することができれば、同様の仕事内容で年収を上げることが可能です。

運送業で年収1,000万円を叶えるには?

運送業で年収1,000万円を目指すことは容易ではありませんが、そんな中でも年収1,000万円に近づけるためにはどんな方法があるのでしょうか?筆者の元同僚の事例をもとに、年収を上げることができる方法を紹介します。

独立する

雇用されるのではなく、自分自身で運送業を起業する・独立するという方法があります。

前述の軽貨物運送を行っている同僚は、独立することで年収500万円から800万円へアップすることを実現しました。大きなトラックを購入するには資金が足りなくても、軽自動車であれば準備ができたことが起業のきっかけだったといいます。

実際に数年間ドライバーとして働き、信頼関係を構築した上での独立だったため、起業後はとてもスムーズに業務委託を請け負うことができたそうです。運送業、特に宅配業界は人手を欲しがっていたこと、歩合給(インセンティブ)の高い契約であったこと、1台ではなく複数台で対応し基本となる配達個数を稼げていることが年収アップにつながった要因だと話してくれました。

独立するタイミングや資金は見極めることが重要ですが、雇用されるのではなく、自身で起業するという発想の転換は、年収アップに欠かせない積極的な姿勢だといえるでしょう。

役職・資格取得を目指す

独立以外の方法として考えられるのは、役職手当や資格手当でベースアップをすることです。

道路交通法の改正で、運転免許は大きく変わりました。運送業界で稼ぐのであれば、中型免許・大型免許の取得は必須です。大型免許、できればけん引免許を取得することで仕事の幅が広がり、年収アップにもつながります。

また、組織内で勤務するのであれば、役職手当がもらえるよう昇進を目指すことも一つの方法です。企業によって手当の金額は異なりますが、毎月もらえる役職手当は年収を上げる重要な役割を担います。

筆者の勤務していた会社では、グループごとのグループ長、グループ長をまとめる次長、次長の上司となる課長……というように、昇進の道がありました。グループ長から役職手当がもらえていたので、冗談で「手当もらってるんだからおごって」などと話していた記憶があります。

起業にはそれ相応のリスクや覚悟が必要になりますが、勤務している会社内での昇進であれば、誰でも挑戦できることがメリットです。

まとめ

運送業界で年収1,000万円を稼ぎ出すことは至難の業です。

働き方改革や2024年問題など、運送業界はさらに稼ぐことが難しくなることが予想されますが、それでも賞与実績のある会社や歩合給の高い会社へ転職し、年収アップを目指すことは可能です。

運送業で年収を上げていくためには、条件の良い会社を選ぶことと資格・免許取得に積極的に取り組むことが重要なポイントになります。

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