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運送業の平均年収に関する疑問とその回答
元トラックドライバーの筆者は、若い世代の人からよく質問をされます。それは、「昔は運転手ってもっと稼げたんですか?」ということです。
確かに、バブル期は今でも驚くくらい稼げていましたが、それは社会の景気に左右されていた部分が大きいため、参考にはならないと答えています。ただし、現在の運送業がまったく稼げない仕事なのかといったらそうではありません。
筆者の元同僚たちはしっかりと働き、家族を養ったり、趣味を楽しんだりできる年収を得ています。現役の運送業ではどのくらい稼げているのか、転職を検討する方が抱える疑問にお答えします。
運送業(トラックドライバー)の平均年収は?
現在のトラックドライバーはどのくらい稼げているのか、2019年に全日本トラック協会が行った調査結果から、現在の平均年収を職種別に紹介します。
職種(一般) | 2019年平均月給(円) ※1ヶ月平均の賞与含む | 2019年・平均年収(円) ※平均月給×12 |
---|---|---|
男性運転者平均 | 371,500 | 4,458,000 |
男性・けん引運転者 | 434,700 | 5,216,400 |
男性・大型運転者 | 394,100 | 4,729,200 |
男性・中型運転者 | 305,700 | 3,668,400 |
男性・準中型運転者 | 310,300 | 3,723,600 |
男性・普通運転者 | 313,100 | 3,757,200 |
女性運転者平均 | 299,100 | 3,589,200 |
女性・けん引運転者 | 384,100 | 4,609,200 |
女性・大型運転者 | 355,100 | 4,261,200 |
女性・中型運転者 | 264,300 | 3,171,600 |
女性・準中型運転者 | 312,500 | 3,750,000 |
女性・普通運転者 | 235,300 | 2,923,600 |
参考:「2019年度版トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態」について | 全日本トラック協会
トラックドライバーの給与体系は、変動給が大きいことが特徴です。変動給とは残業代などのことで、以前は膨大な残業時間や休日手当などが給与に組み込まれていたため、結果的に給料が高くなるという状態になっていただけでした。
現在の運送業の収入は、基本給自体が低いわけではなく、働き方改革などによる残業時間の減少によって、手取り額も年収も下がってしまったことが考えられます。
昔は稼げる職業だったって本当?
トラックドライバーが稼げていたのは、バブル期〜2000年頃までです。ただし、高い年収を稼いでいた裏にはカラクリがあります。
以前のトラックドライバーは猛烈に忙しく、走っても走っても荷物がさばけないような状況でした。何とか荷物をさばきたい荷主は運賃を上げてでも運送業者を確保していたため、相乗効果で今では考えられないような運賃で運行していたのです。
- 過酷な労働環境(膨大な残業時間・休みなし・休憩なしなど)
- 高い運賃
この2つの条件が合致して生まれた産物が「トラックドライバーは稼げる」という状況だったのです。
仕事自体は非常にきつかったため、稼いでいるけれど身体の不調を訴えているというドライバーは山ほどいました。激務が原因で体調を崩し、トラックを降りたドライバーも少なくありません。
転職を検討すべき年収はいくらくらい?
令和2年に国税庁が調査した『民間給与実態統計調査結果』では、次のように報告されています。
- 1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は433万円
- 1年を通じて勤務した給与所得者の平均賞与は65万円
コロナ禍という背景から、製造業・建設業・飲食業・宿泊業などは前年比が大幅減となっていますが、運輸業・郵便業に関しては対前年伸び率が+2.0%です。
2019年に全日本トラック協会が行った調査結果で紹介したように、運送業の平均年収は職種によって異なります。実際に運送業に従事していて職種の平均年収を大きく下回るようであれば、転職を検討するべきといえるでしょう。
運送業の年収に関するさまざまなデータ
運送業の年収をもっと深く知るために、さまざまなデータを紹介します。国税庁の民間給与実態調査や総務省・厚労省の資料、独自に取得している年収査定のデータの分析し年収を算出している平均年収.jpのデータをもとに、年齢別・職種別・都道府県別に分けて解説していきましょう。
年齢別平均年収
はじめに年齢別の平均年収を紹介します。
年齢 | 平均年収 |
---|---|
20歳~24歳 | 224万円 |
25歳~29歳 | 229万円~279万円 |
30歳~34歳 | 207万円~307万円 |
35歳~39歳 | 246万円~350万円 |
40歳~44歳 | 272万円~393万円 |
45歳~49歳 | 318万円~440万円 |
50歳~54歳 | 362万円~472万円 |
55歳~59歳 | 358万円~468万円 |
参考:トラック運転手(ドライバー)【男性女性】の年収や20~65歳の年齢別・業種別【長距離・大型】・都道府県別年収推移|平均年収.jp
25歳以上の平均年収で幅があるのは、経験・企業規模・業種などの条件が異なるためです。基本的に年齢が上がるごとに平均年収は上がっていきますが、転職した場合などはこの限りではありません。
業種別平均年収
運送業には、いくつかの業種があります。業種ごとの平均年収は次のとおりです。
- 運送会社:380万円
- 物流会社:390万円
- 宅配会社:370万円
- 引越会社:375万円
以前ニュースなどに取り上げられたこともある宅配会社は、およそ370万円。働き方改革により残業代が減って勤務時間は短くなっているようですが、そのぶん年収は減少傾向にあります。
都道府県別平均年収
同じ運送業でも、会社がある都道府県によって年収も異なります。主要な都道府県の平均年収を紹介します。
都道府県 | 平均年収 |
---|---|
北海道 | 354万円 |
茨城県・栃木県・群馬県 | 393万円 |
東京都 | 550万円 |
神奈川県 | 432万円 |
大阪府 | 472万円 |
福岡県 | 393万円 |
香川県・愛媛県・高知県・鹿児島県 | 354万円 |
沖縄県 | 314万円 |
参考:トラック運転手(ドライバー)【男性女性】の年収や20~65歳の年齢別・業種別【長距離・大型】・都道府県別年収推移|平均年収.jp
同じ運送業でも、都道府県によって大きな差が生じていることがわかります。沖縄県と東京都の年収の差は実に200万円以上。基準となる平均年収が地域によって大きく異なることを理解しておきましょう。
【体験談】運送業の年収が上がるときとは?
筆者は、15年ほどトラックドライバーとして勤務していました。15年の中で、給料が上がるタイミングや事象がいくつかありました。ここでは代表的なものをピックアップして紹介しましょう。
資格や免許を取ったとき
運送業に活かせる資格や免許を取ると、資格手当がもらえたり、別の部署の業務に異動になったりすることで基本給が上がることがあります。
- 大型免許・けん引免許
- フォークリフト
- 玉掛け作業者
- 運行管理者
- フォークリフト運転技能者
- クレーン運転士
特に現場だけではなく、運行管理者の資格を取得して管理部門に異動になったケースでは、管理職としての手当も含めて大幅な給与アップがありました。また、中型免許しか持ってなかったドライバーが大型免許やけん引免許を取得して、まったく異なる部署へ異動することで、基本給が上がって年収アップしたという同僚も多くいました。
役職がついたとき
仕事を認められ、役職に就くと役職手当がもらえるため、年収はアップします。
筆者の同僚で非常に仕事ができた人は、入社して5年目で現場のグループリーダーとなり、その後課長・部長と順調にステップアップしていきました。現場で働いている私たちとはまったく違う給与形態となり、役職手当だけではなく基本給もアップしたため、トータルの年収は彼の方が多かったことを覚えています。
管理職には管理職の大変さがあるため「現場が良い」という人も少なくありませんが、自分の仕事を認めてもらった結果として当然の報酬ともいえるでしょう。
勤続年数が長くなったとき
勤続年数が長くなると、基本給アップを繰り返すことで年収が上がっていきます。
企業としても長く勤務してくれる人に対しては、それなりの対価を払うものです。筆者が勤務していた会社では、10年・20年といった勤続年数に対する臨時ボーナスなどもあり、それなりの金額をもらえていました。
基本給が上がることは年収アップにつながる重要なポイントですので、一つの会社に長く勤めることのメリットでもあります。
給料の良い会社へ転職したとき
運送業界では、比較的転職をする人が多くいます。それは、同じ勤務条件でも給与の差があるためです。
同じような仕事であれば、給与が良い会社へ行くのは当たり前という暗黙の了解があります。そのため、トラックドライバーで特に経験や資格を持っている人は、自分の希望・条件にあった会社を探し、転職をするケースが多いのです。
そもそものベースが異なれば、年収も大きく変化します。福利厚生の充実なども視野に入れて、転職をするケースが増えています。
運送業で年収を上げる方法
未経験で運送業に挑戦する人にとって、年収を上げる方法はあるのだろうかという点は、大きな疑問点の一つです。そこで、運送業において年収を上げる方法を紹介しましょう。
資格を取る
運送業で年収を上げるには、活かせる資格を取得することです。
- 資格手当が付く
- 基本給の高い他の仕事を任せてもらえる
などのメリットがあり、ドライバー人生が変わるといっても良いでしょう。
特に、道路交通法が改正されて、若い世代の人たちは普通免許で運転できるトラックが少なくなっています。準中型免許・中型免許・大型免許などスキルアップをしていけば、基本給も上がり、仕事の選択肢が広がります。
職種を変更する
運送業(トラックドライバー)には、複数の職種があります。職種を変更することで、年収が上がるケースも見られます。
- ルート配送から長距離配送へ
- 宅配軽貨物から中型運転手へ
- 引越業者から大手運送会社へ
筆者の同僚には以上のような転職例があり、彼らは年収アップを実現させていました。中には個人事業主として独立する人などもおり、自分の希望や働き方を選択し、年収を上げていく方法もあるのだと教えられました。
運送業では、距離を長く走れば基本的にその分給料も高くなります。トラックドライバーに向いている人であれば、どんどん他職種にチャレンジしてみるのも良いでしょう。
大手運送会社に転職する
中小企業よりは、大手運送会社の方が年収は高くなります。次のようなメリットもあり、大手運送会社は人気が高いです。
- 福利厚生制度が整っている
- 適正な人員配置ができている
- 法令を遵守している
以前は大手でもブラック的な要素を持っている企業もありましたが、社会的な信用を重視する大手運送会社は、改善が迅速に行われています。
「運送業は好きだけど、今の会社はちょっと」と感じる場合は、大手運送会社に挑戦してみるのも一つの方法です。大手運送会社は全国に支店があるため、働く場所を選べることもメリットだといえます。
転職エージェントへ相談する
「運送業のことがよくわからない」という未経験者の方や、経験者でも自分の適正な年収かどうか自信がないという方は、転職エージェントを利用しましょう。転職エージェントを利用するメリットには、次のようなことが挙げられます。
- 無料で利用が可能
- 企業の内部情報を入手できる
- キャリアアドバイザーが企業との調整を担当してくれる
- 転職に関わることを何でも相談できる
- 条件交渉を代行してくれる
経験者だからといって、転職がすべて成功するというわけではありません。未経験者の方だけではなく、経験者の方も転職エージェントを利用することで、より有利な転職活動を行うことができます。
まとめ
運送業の年収は決して低くありません。しかし、業界全体へのネガティブなイメージが先行し、「給料も安いし仕事もキツイ」というレッテルを貼られてしまっています。
運送業はさまざまな職種があること、未経験者でも挑戦しやすいことなど、メリットの多い仕事です。運転が好き・体力に自信があるという人は、ぜひ転職の選択肢に入れてみてください。
自分一人での転職活動に限界を感じた場合は、転職エージェントを活用しましょう。「ドライバーコネクト」では、業界に精通した専任のスタッフが手厚いサポートでご相談にのりますので、ぜひご相談ください!