【2022】運送業で「年収600万円」稼ぐことは可能?高収入を得るポイントとは

一昔前、運送業は学齢・年齢不問で稼げる職業として認知されていました。健康な身体とやる気があれば誰でも稼ぐことができ、中には年収1,000万を超えるような人がいたことも事実です。

しかし、近年は働き方改革や労働基準法の改正で、以前ほど稼げなくなったという声を聞きます。

今回は、運送業の年収に関する現状はどうなっているのか、少しでも年収を上げる方法はあるのかなどについて、元トラックドライバーの筆者がわかりやすく解説します。運送会社の選び方についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

運送業界の現状と課題

運送業は、現在さまざまな課題を抱えています。

  • 慢性的な人手不足の問題
  • 2024年の働き方改革関連法に関わる問題
  • 少子高齢化による従業員の高齢化問題

特に運送業界全体が頭を悩ませているのが、働き方改革関連法にまつわる2024年問題です。2024年問題とは、ドライバーの労働時間に上限が設定されることで生じる諸問題のことで、懸念されているのが売り上げや利益の減少によるドライバーの収入の減少です。

運送業のドライバーの給与は、変動給(残業代など)の割合が多いのが特徴で、長距離配送などの場合はさらに変動給が多くなります。人手不足を補うために働いて、その分の給料をもらうというスタイルも通用しなくなるため、運送会社は人材確保にも乗り出さなくてはなりません。

会社の利益が減少すれば、当然従業員の給料にも影響が及びます。仮に今まで年収600万円を稼げていたとしても、今後の保障はなく、ドライバーの置かれる状況はかなり厳しくなるのではないかといわれているのです。

運送業はどれくらい稼げる?職種別平均年収

運送業には複数の職種があります。同じ運送業でも、職種や業務内容によって収入や働き方が大きく異なることを知っておくことが重要です。

運送業にはどのような職種があり、それぞれの平均年収はどのくらいなのか、3つの職種に分けて紹介します。

運送・物流会社

運送・物流会社の平均年収は380~390万円です。運送・物流会社の業務内容は、さまざまな大きさ・形状のトラックに乗って荷物を運ぶのが仕事です。

長距離の運行だけではなく近距離・中距離の運行もあるため、年収には大きな差が生じることが特徴といえます。先に紹介したように、変動給の割合が多いことも理解しておきましょう。

宅配会社

宅配会社の平均年収は370万円です。宅配会社は大手企業が多いことが特徴で、荷物の配達や集荷を行うのが仕事です。

宅配会社の業務内容は、実際にお客様へ荷物を届けるセールスドライバーと、拠点間の荷物を輸送する大型ドライバーに分けることができます。コロナ禍において、ECサイトの需要が急増したことによる深刻な人手不足に悩んでいるのが現状です。

引越会社

引越会社の平均年収は375万円です。引越会社は依頼のあったお客様の荷物を、搬出・輸送・搬入・設置するのが仕事です(梱包や開梱に関わることもある)。

走行する距離や運転するトラックの大きさはお客様の荷物次第で、運転はせずに作業員として働くこともあります。

引越会社の仕事の特徴は、繁忙期と閑散期の差が大きいことです。繁忙期には1日に何件もの引越を行わなければならないこともあります。個人宅だけではなく店舗や企業の引越を担当することもあるので、運ぶ荷物はさまざまです。

参照元:令和2年賃金構造基本統計調査|厚生労働省

運送業で年収600万を稼ぎ出すポイント

運送業は複数の職種があり、年収も業務内容も異なります。運送業で年収600万を目指し、収入アップを図るためにはどんなことに取り組むべきなのでしょうか?ここでは、3つのポイントを紹介します。

資格を取る

運送業で年収を上げるために必要なのは、資格を取ることです。

道路交通法の改正で、運転できるトラックの大きさも変わりました。少しでも年収を上げるためには、運転免許や資格取得に挑戦することが大切です。

準中型自動車免許・18歳以上
・車両総重量3.5t以上7.5t未満
・最大積載量2t以上4.5t未満
中型自動車免許・20歳以上・普通免許等保有2年以上
・車両総重量7.5t以上11t未満
・最大積載量4.5t以上6.5t未満
大型自動車免許・21歳以上・普通免許等保有3年以上
・車両総重量11t以上
・最大積載量6.5t以上
けん引免許・車両区分に応じた運転免許
・運転に支障が出るような障害がない
・18歳以上視力:両眼で0.8以上・片眼は左右それぞれ0.5以上
・深視力:3回の検査で誤差の平均が2cm以下
・色彩認識能力:赤・青・黄色の3色の識別ができること
・10mの距離90dbの音を認識できること

準中型免許は18歳以上であれば運転経験に関係なく取得できる資格です。中型免許・大型免許・けん引免許などを取得することで、運転できるトラックの種類が増えます。

また、運転免許だけではなく、運送業で活かせる資格を取得することもおすすめです。

  • 運行管理者
  • 整備管理者
  • 危険物取扱者
  • 玉掛け作業者
  • フォークリフト

これらの資格取得を支援する制度を設けている会社もあります。資格手当などが支給されるケースではベースアップが可能になるので、ぜひ積極的に挑戦してみましょう。

独立する

年収を上げるために、働き方を変えるという方法もあります。個人事業主として独立・起業するという考え方があることを知っておくと良いでしょう。

  • 個人事業主として独立する
  • 法人として起業する
  • フランチャイズに加盟する

比較的独立しやすいといわれているのが、宅配の軽貨物運送業です。

中には、大手宅配会社の配送拠点に参入し、個人事業主として業務を請け負っているケースもあります。運送業界はフランチャイズが多く存在するため、加盟して起業することも可能です。

フランチャイズは加盟することで起業や経営に関するサポートを受けることが可能で、自己負担金を抑えて起業できるメリットがあります。社員としてだけではなく、経営者として稼ぐという選択肢があることを覚えておきましょう。

転職する(エージェントの活用)

好条件の会社に転職して年収を上げることも一つの方法です。転職エージェントを活用し、現在よりも好条件の会社へ転職することで、年収アップを見込めます。

未経験の方や業界経験の浅い方は、大手の運送会社に転職することをおすすめします。たとえば次のような、中小企業では実現できない大手ならではのメリットがあります。

  • 経営の安定性
  • 法令遵守への取り組み
  • 教育制度・支援制度の実施
  • 全国各地で勤務可能な制度
  • 福利厚生制度の充実

「大手なんて無理」と最初から決めつけないでください。転職エージェントを活用すれば、情報収集が有利になったり、条件交渉を行ってくれたりするので、より良い転職を実現することが可能です。

自浄作用のない会社は将来的に淘汰されます。少しでも不安や不満があるのであれば、転職を一つの選択肢として考えてみる価値があるでしょう。

運送業で年収600万を稼ぐための会社の選び方

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運送業がこれから迎える2024年問題では、従業員の給料が減るのではないかと懸念されています。そんな中でこれから運送業界へ転職をしようと考えている方、現在の環境を変えたいと転職を検討している方に向けて、どんな会社を選ぶべきなのか、そのポイントを紹介しましょう。

福利厚生の充実している会社

会社選びのポイントとして注視したいのが、福利厚生制度です。福利厚生制度には、法定福利厚生制度と法定外福利厚生制度の2種類があります。

法定福利厚生制度法定外福利厚生制度
・健康保険
・介護保険
・厚生年金保険
・雇用保険労災保険
・(子ども・子育て拠出金)
・通勤手当
・住宅手当
・慶弔金制度
・財形貯蓄制度
・資格取得支援制度
・人間ドックの費用扶助 など

法定福利厚生制度は、企業に実施が義務付けられているものです。法定福利厚生制度すら整っていない会社は論外ですので、転職先として検討することは避けてください。

注目したいのは、法定外福利厚生制度です。法定外福利厚生制度は、会社が従業員のために設けているもので、充実していればいるほど従業員のエンゲージメントが上がると言われています。

すべてがそろっているのは大手企業だけかもしれませんが、会社がどの程度従業員を大切に思っているかの指標になります。できる限り福利厚生制度が充実している会社を選ぶようにしましょう。

経営の安定している会社

運送業の会社の経営を見極めるには、ポイントがあります。

  1. 社員の乗っているトラック
  2. 会社・社員の雰囲気
  3. 社員の自家用車

社員の乗っているトラック

社員の乗っているトラックが汚い・古いのは論外です。汚い・古いトラックは整備不良のケースも多く、安心して働くことができません。

経営の安定している会社はトラックを大切にします。定期的に買い替えを行ったり、洗車も徹底されていたりするものです。

会社・社員の雰囲気

会社や社員の雰囲気が悪いことも、経営の安定を測るポイントです。極端に感じが悪い・ギスギスした雰囲気などは、会社に対する不信感や仕事への不満の表れと捉えましょう。

経営の安定している会社は社員教育も怠らないため、雰囲気が悪いということはあり得ません。

社員の自家用車

駐車場に停まっている社員の自家用車にも注意しましょう。あまりにも年式の古い車ばかり・洗車もされていない汚い車が多いという場合は、給料が低いと考えられます。

基本的に運転手は車好きな人が多く、余裕があれば自家用車を大切にしたいと思う人がほとんどです。手入れが行き届いていない・新しい車が買えないということは、給料が安い・残業が多く車に構っている時間がないと考えて良いでしょう。

社員の離職率が低い会社

社員の離職率は、ぜひ転職前に調べておきたいポイントの一つです。

  • 常に求人が出ている
  • 定期的な募集を行っていない
  • 入社時期がバラバラ

などという場合は、離職率が高い会社である可能性があります。

常に求人が出ているということは、何らかの原因で社員が不足しているということです。現在運送業は人手不足が問題となっていますが、安定している企業は、一定のスケジュールで募集を行っていることが特徴だといえます。

先輩社員も入社時期がバラバラだったという場合は、離職率の高い会社であるということが多いため注意しなければいけません。

その他によくある質問

「運送業で年収600万円を稼ぎたい」と思っても、異業種からの転職で未経験の方は実感をつかむのが難しいかもしれません。そこで、運送業の年収に関する素朴な疑問をピックアップしくわしく解説します。

年収600万円は月収ベース・手取りでいくら?

同じ年収600万円でも、賞与の有無によって月収ベースや手取りの金額は異なります。仮に賞与を年間100万円と仮定した場合は、下記のような違いがあります。

賞与あり賞与なし
手取り年収約460万円約460万円
月収の額面約38万約50万
手取り月収約30万約38万

手取りで支給される金額は、税金や社会保険料を差し引いたものになるため、年収600万円と行っても手取りの年収は約460万円になります。

税金や社会保険料は配偶者や扶養家族の有無によって控除額が変わり、収入によって支払額が決まるため、一概には算出できません。賞与の有無などによって手取りの月収は変わるため、給与の形態をきちんと理解しておくことが大切です。

運送業で年収600万円稼げる職種はある?

運送業のトラックドライバーがどの程度稼げているのか、2019年に全日本トラック協会が行った調査結果から、平均年収を職種別にご紹介します。

職種(一般)2019年平均年収(円)
※平均月給×12ヶ月
男性運転者平均4,458,000
男性・けん引運転者5,216,400
男性・大型運転者4,729,200
男性・中型運転者3,668,400
男性・準中型運転者3,723,600
男性・普通運転者3,757,200
女性運転者平均3,589,200
女性・けん引運転者4,609,200
女性・大型運転者4,261,200
女性・中型運転者3,171,600
女性・準中型運転者3,750,000
女性・普通運転者2,923,600

参考:「2019年度版トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態」について | 全日本トラック協会

あくまでも平均値ではありますが、どの職種も600万円を上回る年収ではありません。もっとも可能性が高いのは、けん引のドライバーです。

同じ大きさのトラックに乗っていても、長距離と地場配送では給料がまったく異なります。全部が無理と考えず、職種や仕事内容によっては稼げる可能性があると理解してください。

年収600万円稼げても運送業ってブラックではない?

運送業にはブラックなイメージが多く、「3K(=きつい、汚い、危険)」の代表のようにいわれることも少なくありません。

確かに、一般の人よりも長時間運転する以上、事故のリスクは回避できませんし、長距離のドライバーであれば家に帰れないことは当たり前です。また、運送業界には残念ながら悪しき慣習を排除できないブラック企業が存在します。

運送業界で転職を検討する際は、会社を見極めることが重要なポイントです。平均値よりも大幅に高額な給料や、「誰でもできる」「すぐに働ける」など足元を見るような募集が出ている会社は避けましょう。

運送業の仕事は楽な仕事ではありませんが、メリットとデメリットを理解して、自分に合っている仕事かどうかを判断してください。すべての企業、業界全体がブラックというわけではありません。

まとめ

運送業は、以前のように驚くほど稼げる仕事ではなくなりましたが、エッセンシャルワーカーとしてなくてはならない仕事と認識されています。運送業で長く働くためには、良い会社を選ぶことと資格取得など積極的に仕事に取り組むことが重要なポイントです。

運送業の仕事にはさまざまな職種があり、選択肢がたくさんあります。自分に合った仕事を見つけたい・運送業で長く働きたいという方は、ぜひ当サイト『ドライバーコネクト』にご相談ください。

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