タンクローリーの運転手になるには?仕事内容や必要な免許をすべて解説

運送業…トラック運転手には複数の職種がありますが、中でも難易度の高いのはタンクローリーの運転手です。

タンクローリーの運転手は経験と資格が必要な職種で、給与も高めに設定されています。

運送業界内での転職はもちろん、これからタンクローリーの運転手を目指そうと検討されている方向けに、タンクローリーの運転手に関するさまざまな情報をご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

タンクローリーの運転手とは?基礎知識を押さえておこう

タンクローリーの運転手になるためには、タンクローリーの運転手に関する情報を知っておくことが重要です。

タンクローリーの運転手に関する基礎知識をご紹介しましょう。

そもそもタンクローリーってどんな車両?

タンクローリーとは、大型車両に分類される車両で、液体や高圧ガスなどを運搬する車両です。

  • ガソリン・灯油
  • 化学薬品
  • 食品

などを運ぶことが可能で、通常のトラックでは運べない気体・液体などを取り扱います。

タンクの部分は楕円形をしていて、重心が下になるような構造です。

不安定な液体などを運搬する場合でも、横転などを引き起こさないように配慮されています。

タンクローリーの運転手が運転する車両の種類

タンクローリーの運転手が運転する車両の種類は、主に3つに分類されます。

車両の種類概要運搬物
粉粒体運搬車ローリー別名バルク車とも呼ばれる。 危険物以外の食品や飼料などを運搬する。食品原料・飼料・炭酸カルシウム・化学素材のペレットなど
危険物ローリーガソリンや灯油、劇薬など取り扱いに注意が必要な危険物を運搬する。ガソリン・灯油・軽油・劇薬など
高圧ガスローリー高圧ガスや液体窒素などの気体を取り扱う。高圧ガス・液体窒素・酸素・毒性ガス・水素など

タンクローリーは小型車両から大型車両までありますが、一般的には大型車両であることがほとんどです。

運転するためには大型免許が必要になり、危険物ローリーや高圧ガスローリーを運転する場合は、運転免許以外に国家資格が必要になります。

タンクローリーの運転手の仕事内容

タンクローリーの運転手の仕事内容は、基本的に他のトラック運転手の仕事と同じく、荷主から荷物を請け、荷降ろし先へ運ぶことがメインになります。

ただし、他のトラック運転手との圧倒的な違いは、荷物の積み降ろしがないことです。

タンクローリーは基本的に積み置きをしないので、早朝などに積み込みをしてすぐに配送します。

扱う種類によっては、1日に2~4運行することなどもあり、走行距離や勤務時間は勤務する会社や運ぶ荷物によって異なるので注意が必要です。

タンクローリーの運転手の給料

2019年に全日本トラック協会が行った調査結果では、トラックドライバーの平均賃金が以下のように報告されています。

職種(一般)2019年・平均賃金(円)2018年・平均賃金(円)対前年比(%)
男性運転者平均335,700338,50099.2
男性・けん引運転者383,500391,50098.0
男性・大型運転者356,000355,100100.3
男性・中型運転者282,800297,10095.2
男性・準中型運転者284,900294,40096.8
男性・普通運転者282,000294,40095.8
女性運転者平均274,400294,70093.1
女性・けん引運転者348,300344,500101.1
女性・大型運転者320,200316,200101.3
女性・中型運転者247,700279,00088.8
女性・準中型運転者291,200281,500103.4
女性・普通運転者216,200263,10082.2

参考:「2019年度版トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態」について | 全日本トラック協会

タンクローリーの運転手は、一般的に大型やけん引の免許が必要です。

運転するタンクローリーの種類によっては国家資格が必要になるため、手当が付くことが多い傾向があります。

そのため、一般のトラック運転手よりはタンクローリーの運転手の方が高給になるケースがあります。

タンクローリーの運転手になるために必要な資格と免許

タンクローリーは、運ぶ荷物や車両の大きさによって必要な免許や資格が異なります。

どんな資格や免許が必要になるのか、主なものを5つご紹介しましょう。

けん引免許

けん引免許は、トレーラーやキャリアカーなどの特殊車両を運転するのに必要な免許です。

タンクローリーの運転手でも、車両の種類によっては取得が求められることがあります。

条件満21歳以上普通運転免許の経験3年以上片眼で0.5以上、両眼で0.8以上の視力があること(眼鏡・コンタクト可)深視力検査3回の平均誤差が20mm以内であること
取得方法自動車教習所へ入校⇒卒業 運転免許センターで適性検査(学科・実技免除)
運転できる車両トレーラー

けん引免許の取得条件は、普通自動車免許・大型自動車免許・大型特殊免許のいずれかを有している人です。

AT限定でも取得はできますが、けん引免許の試験はMTになります。

また視力に不安のある方は、事前に視力のチェックを行っておきましょう。

大型免許

大型免許は、タンクローリーの運転手を目指すのであればぜひ取得したい免許です。

条件・21歳以上の方。
・中型、準中型、普通、大型特殊免許のいずれかの運転免許を現に受けており、かつ、当該いずれかの運転免許を受けていた期間(当該免許の効力が停止されていた期間を除く。)が通算して3年以上の方。
・赤色、青色、黄色の識別が出来ること。
・10メートルの距離で、90デシベルの警音器の音が聞こえること視力が両眼で0.8以上、かつ、一眼でそれぞれ0.5以上であること。
・三桿法の奥行知覚検査器により3回検査し、その平均誤差が2センチメートル以下であること。
取得方法・指定自動車教習所へ通って技能卒業検定に合格する
・運転免許試験場で技能試験を直接受験する
運転できる車両・車両総重量11t以上
・最大積載量6.5t以上

ここで注意したいのは、令和4年5月に改正された道路交通法の内容です。

この改正により、大型免許取得の条件が変更になっています。

道路交通法の一部を改正する法律等の施行により、令和4年5月13日から、一定の教習を修了することにより、19歳以上で、かつ、中型免許、準中型免許、普通免許又は大型特殊免許のいずれかの運転免許を受けていた期間が1年(当該免許の効力が停止されていた期間を除く。)以上あれば受験することができます。
引用:大型免許試験(直接試験場で受験される方)|警視庁

  • 21歳以上⇒19歳以上
  • 普通免許等保有3年以上⇒1年以上

以上の2点が大きな変更点です。

これから受験を検討される方は、従来の条件と異なることを理解しておきましょう。

危険物取扱者

危険物取扱者は、化学物質やガソリンなどの危険物を扱う際に必要な国家資格です。

他のトラック運転手の仕事ではあまり必要がない資格ですが、タンクローリーの運転手になるには、取得しておくと有利になる資格といえます。

受験資格(甲種)・乙種危険物取扱者免状を有する者
・大学などで化学に関する学科などを修めて卒業した者
・大学などで15単位以上化学に関する授業科目を修得して卒業した者
・化学に関する学科または課程の修士・博士の学位を有する者
取得方法・危険物取扱者試験に合格する (甲種・乙種・丙種の3種類があり乙種4類が仕事に活かしやすい)
・定められた期間ごとに危険物取扱者保安講習を受ける必要あり

危険物取扱者の資格は、甲種・乙種・丙種の3種類がありますが、甲種を取得することでどんな危険物でも取り扱いOKです。

また運転手が資格を持っていない場合は、資格を取得している者が同乗することで運搬が可能になります。

毒物劇物取扱責任者

毒物や劇物をタンクローリーで運搬する場合は、毒物及び劇物取締法に基づいて国または各都道府県への登録・許可・届出が必要です。

受験資格・薬剤師
・厚生労働省令で定める学校で、応用化学に関する学課を修了した者
・各都道府県で実施する試験に合格した者
取得方法・年1回・自治体で実施される試験に合格する
・一般・農業用品目・特定品目の3種類がある

毒物劇物取扱責任者の資格には、『一般』『農業用品目』『特定品目』の3種類があります。

自分の運搬するモノが該当する種類を取得すれば良いのですが、一番幅広く毒物・劇物を扱えるのは『一般』です。

タンクローリーの運転手として、運送業界で長く働きたいのであれば取得しておくと非常に有利な資格といえます。

高圧ガス移動監視者

高圧ガス移動監視者とは、高圧ガスを輸送する際に安全に輸送できるよう監視・管理をおこなう人に必要な資格です。

受験資格特になし
取得方法・高圧ガス保安協会の講習(年4回)を受講する
・筆記の検定試験を合格する

高圧ガス移動監視者の種類は、『液化石油ガス』と『その他』の2種類になります。

どちらの資格が必要になるのか、事前に情報収集を行いましょう。

タンクローリーの運転手になるメリットとは

運送業のトラック運転手には複数の職種がありますが、タンクローリーの運転手は他の運転手と比べて異なる点が多くあります。

タンクローリーの運転手になることで得られるメリットをご紹介しましょう。

体力仕事が少ない

タンクローリーの運転手は、他のトラック運転手と比べると体力を使う仕事が少ないというメリットがあります。

通常、トラック運転手の業務には荷物の積み下ろしが欠かせませんが、タンクローリーの運転手に関しては力を使って荷物を積み込む必要がないからです。

タンクローリーの運転手が運ぶ荷物は、液体・気体・粉粒体なので、タンクローリーと貯蔵している元の部分をホースやアームで繋いで待つだけになります。

多くのトラック運転手が『キツイ』という荷物の積み下ろしがないため、身体を駆使した仕事というわけではありません。

給料が高い

タンクローリーの運転手は、運送業の中でも高い給与水準にあります。

厚生労働省が発表した令和2年賃金構造基本統計調査では、運送・物流会社の平均年収は380~390万円と報告されていますが、タンクローリーの運転手の平均年収はおよそ500万円です。

化学物質を運搬する場合は、600万円以上の年収を稼ぎ出す人もいます。

資格を取得しているという専門性が高い仕事であるために、給料は高い設定となっていることは大きなメリットといえるでしょう。

長距離の移動が少ない

タンクローリーの運転手は基本的に長距離の移動はしません。

何日もかけて日本全国津々浦々を走り回る長距離運転手のようなスケジュールで仕事をすることは少ないです。

ただし1日で2回~4回運行をすることがあるので、走行距離が300キロ以上になることもあります。

長距離の移動は、家に帰れない・しっかりと休みが取れないなどのデメリットがありますが、タンクローリーの運転手は家に帰れないということはありません。

人間関係の煩わしさに悩まされない

トラック運転手全般にいえることでもありますが、タンクローリーの運転手も人間関係の煩わしさに悩まされることは少ないでしょう。

一般の会社員のように、一つの場所で長時間他の社員と一緒に働く…という仕事ではないからです。

トラック運転手は基本的に一人の時間が長い仕事なので、気の合わない相手と顔を合わせなければいけなかったり、常に上司に監視されたりということがありません。

人間関係の煩わしさは、仕事のモチベーションや転職理由にも大きく影響します。

人間関係に悩まされたくないという人にとっては、非常にメリットのある仕事です。

タンクローリーの運転手になるデメリットは?

タンクローリーの運転手はメリットの多い仕事ですが、反面デメリットも確実に存在します。

どんなことがデメリットなのか、主な3つの原因をご紹介しましょう。

多くの資格や免許の取得が必要

タンクローリーの運転手として働くためには、多くの資格や免許の取得が必要です。

『運転免許さえあれば働ける!』という仕事ではないことがデメリットといえるでしょう。

タンクローリーの運転手になるために必要な資格や免許の中には、非常に難易度の高いものもあります。

仕事をしながら勉強をするのは大変ですし、資格取得支援制度のない会社の場合は、費用も必要です。

専門性の高い仕事であるがゆえに、資格・免許の取得が必要なのは仕方がないのですが、他のトラック運転手と比べるとデメリットといえる面も多くあります。

運転が難しい

タンクローリーは大型やセミトレーラーが多く、運転が難しいというデメリットがあります。

筆者は元トラック運転手で、同僚にタンクローリーの運転手に転職した人がいました。

筆者と同じ会社で大型の運転手を10年以上おこなっていたベテラン運転手でしたが、タンクローリーの運転は非常に難しいし、気を使うので大変だと話していたのを覚えています。

特にセミトレーラーの場合は、高度な運転技術が必要です。

運送業界内の転職でも、難しいと言われていることを理解しておきましょう。

事故を起こしたときの被害が大きい

トラック運転手は、一般の人よりも長い時間・長い距離を運転するので、事故のリスクが高まります。

タンクローリーの運転手の場合、運搬している荷物が化学物質や可燃性の物質のことがあるため、万が一事故を起こした際の被害は、一般のトラックの比ではありません。

爆発などによって近隣の施設や車両を巻き込んでしまう可能性が高くなります。

当然運転手が受ける被害も大きくなるため、事故を起こしてしまったときのことを考えると、デメリットの一つとして上げることができるでしょう。

タンクローリーの運転手に関するQ&A

タンクローリーの運転手への転職を検討している人にとっては、少しでも情報収集をしておきたいところです。

本当はここを聞きたい!というよくある質問をピックアップし、筆者の元同僚で現役タンクローリー運転手のSさんの声も交えて回答します。

タンクローリーの運転手って楽なの?

「自分は運送業界歴が長くて、さまざまな仕事をしてきました。体力的にはタンクローリーの運転手は楽な方かもしれません。荷物の積み下ろしがないこと、長距離の移動が少ないことは年齢を重ねてくると楽だと感じますね。仕事内容としては体力勝負の仕事がないので、他の仕事に比べると楽に感じることもありますけど、運転に気を使うことが多くて技術も求められますから、大変です。

会社によってはものすごく朝が早いとか、休みはあるけど1日の残業時間が多いっていうこともあるから、転職を決める前にどんな会社でどんな仕事をするのか、1日のスケジュールはどうなるのかなどをきちんと理解しておくことが大事だと思います。」(Sさん)

楽か楽じゃないかというのは、経歴や資質にもよるため、一概には言えないというのがSさんの本音とのこと。

タンクローリーの運転手の仕事は楽な仕事ではありませんが、経験を積んだり、運転手に向いた資質を持っていたりすることで、『他のトラック運転手の仕事に比べたら楽』と思えることもあるようです。

タンクローリーの運転手って女性や未経験でもなれる?

「実際にうちの会社には何人か女性の運転手がいますよ。自分と同じくらいの年齢(50代)の女性もいるので、できない仕事ではないと思います。ただ未経験者の場合は、慣れるまで大変かも。絶対にできないということはないけど、トラックに乗ったことがなくて免許や資格だけを持ってる…という人には、正直会ったことがないですね。

運送業界内で転職する人は多いけど、未経験でタンクローリーの運転手はちょっときついんじゃないかなというのが本当のところです。今年大型の免許は19歳で取れるようになったし、学生時代に資格を取っていればなれないことはないけど、他の職種で運転手を経験してからなった方がギャップが少ないんじゃないかと思います。」(Sさん)

筆者の友人でも女性でタンクローリーの運転手をしている人がいるので、女性にできない仕事というわけではありません。

運送業界は年齢・学歴・経験に関係なく働けるという業界全体のメリットがありますが、タンクローリーの運転手のように免許・資格が必須で専門性の高い仕事の場合は、一度運転手を経験してからステップアップするのがおすすめだといえるでしょう。

タンクローリーの運転手になるには普通免許だけじゃダメ?

「会社によっては普通免許だけで働けるところもありますよ。ただ、ずっとその会社にいるならいいけど、転職しようと思ったときには、やっぱり大型やけん引の免許を持ってたほうが有利ですね。タンクローリーの運転手は基本的に大型を運転するし、けん引を持っていればもっと条件の良い仕事に就けます。

タンクローリーの運転手って稼げるって言われるけど、あれは大型・けん引・危険物・高圧ガスなんかの資格を持って働いている人が対象だから、そのへんを誤解しないでほしいです。普通免許で働けるのは間違いないけど、大型に乗って資格を持ってる運転手と同じくらい稼げるっていうのはないでしょうね。AT限定もできれば限定解除した方が良いと思ってます。」(Sさん)

タンクローリーには種類があるため、中には普通免許で働けるケースもあります。

ただし圧倒的に数が少なく、転職を検討したときの選択肢も限られてくるので、できれば大型免許やけん引免許を持っていた方が有利になるでしょう。

まとめ

タンクローリーの運転手になるには、資格や免許の取得が必要になります。

これから運送業への転職を検討されている方は、必要な資格や免許の取得を計画的に行って、できる限り転職前に取得しておくと良いでしょう。

また現在運送業で働いている人は、勤務している会社に資格取得支援制度があれば、積極的に活用してください。

タンクローリーの運転手は、運送業界の中でも大きなキャリアアップになります。

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