【体験談】長距離ドライバーが「きつい」と言われる理由とは?元運転手が取材&解説!

社会生活の基盤を支える重要なトラックドライバーの仕事。中でも、長距離ドライバーはさまざまなシーンで活躍しています。

しかし、仕事内容はきついものもあり、一般的に「長距離ドライバーはきつい」というイメージが先行しているのではないでしょうか?

筆者は元トラックドライバーです。長距離経験者としてどんなことがきついと言われるのか、その理由を解説します。

長距離ドライバーがきついと言われる理由

長距離ドライバーがきついと言われるのには、それなりの理由があります。実際に長距離ドライバーとして勤務した経験を基に、きついと言われる理由をピックアップして紹介しましょう。

家に帰れないから

もっともきついと言われる理由の一つに、家に帰れないということがあります。

長距離ドライバーといっても運ぶ荷物や配送先までの距離によって、スケジュールは大きく異なります。本格的な長距離になると、一週間近くをかけて運行をすることになるため、家に帰れる日は限られてくるのです。

独身者のドライバーは気にしていない人も多いですが、家族がいる人にとっては大きな負担となります。

筆者の仲間には、子どもが小さい人・高齢の親と同居している人がいましたが、彼らは長距離ドライバーを続けることが難しくなり、他の職種に変更していました。家族の理解も必要となるため、仕事とはいえ長期間家に帰れないというのが「きつい」と言われる最大の理由かもしれません。

きちんと睡眠がとれないから

長距離ドライバーはスケジュールによってきちんと睡眠がとれないこともあります。

  • 渋滞で到着時間が遅れそう
  • 荷待ちで時間がかかりスケジュールが押した

などという場合は、睡眠時間や休憩時間を削って走ることもあるからです。一般的には、休息時間を含めた運行になっているため、イレギュラーなことが起こらない限りはきちんと眠れます。

大型トラックの座席の後ろには、寝台=ベッドがあるので、少々狭くても足を伸ばして眠れるスペースは確保されているのです。

ただし、長い距離を走っているとさまざまなアクシデントに遭う確率は高くなります。そんなときは、きちんと睡眠がとれないという事態が起こることも少なくないことから、長距離ドライバーはきちんと眠れないというイメージが先行しているのでしょう。

とにかく運転しなければいけないから

運転好きな人でも、数百キロ運転を続けていると「きつい」と思う瞬間があります。荷物を届けなければならない・会社に帰らなければならない……とにかく運転しないことには始まらないからです。

長距離ドライバーも人間です。ちょっと体調が悪いときや、いつもとは違う疲労を感じることだってあります。それでも替わりがいないため、とにかく運転しなければいけません。

筆者が仲間と話していて、「もっともつらいのは腹痛と下痢だ」という結論に達したことがあります。トイレを探しながらとにかく運転する……精神的にも肉体的にもきついことは否めません。

拘束時間が長いから

長距離ドライバーは、拘束時間が長いです。これは否定しません。一般的な仕事のように、決められた時間から時間まで働けば帰れるという仕事ではないからです。

コロナ禍においてもリモートワークはできませんし、いったんハンドルを握った以上仕事が終わるまでは家に帰れません。途中休憩時間や仮眠時間もありますが、乗っているトラックに縛り付けられている状態になるため、拘束時間は長くなります。

仕事内容と給料が見合わないから

会社によっては仕事のきつさと給料が見合わないということがあります。

一般的には、長距離ドライバーはトラックドライバーの中でも高給です。きつさに見合った給料であれば、納得できる人も多いですが、稀に驚くような薄給で働いているドライバーもいます。

また、荷物によってもきつさが変わります。フォークリフトで積み下ろしをする荷物であればドライバーは楽ですが、手積み手下ろしとなるときつさは倍以上です。仕事内容と給料を天秤にかけたとき、あまりにも給料が安いと「長距離はきつい」といわれることもあります。

長距離ドライバーはみんなきついと感じている?現場の声を取材

筆者はすでにトラックドライバーを引退していますが、同僚や先輩・後輩たちの中には現役で長距離のドライバーを頑張っている人がいます。

そこでここでは、実際に長距離ドライバーの仕事をきついと感じるか、どんなことがきついのかをインタビューしました。5人の仲間たちの生の声をお届けしましょう。

「向いていない人にとってはきつい」

【Nさんのプロフィール】

  • 40代・男性
  • 独身
  • 根っからの運転好き

「自分は運転が好きで、トラックの運転手もなりたくてなったタイプなので、あまりきついと思ったことはありません。ただ、給料が安い会社は割に合わないと思ったので、2回ほど転職しています。

一人っ子で親も亡くなってるので、気ままな独身だからかな……家に帰れないのは気にならないし、最近ではトラックのキャビンの方が自分の部屋みたいな感じがしてます。

辞めていった仲間もいるけど、自分から見ると性格的に向いてない人が多かったと思う。あと、家族の理解がないと、この仕事を続けるのは難しいかもしれないね。

向いていない人っていると思うんだよ、一定数は。そういう人が長距離やるのは、本当にきついと思うし、辞めたくなるのも理解できるよ。」

「覚悟がなければ何でもきつく感じる」

【Mさんのプロフィール】

  • 50代・男性
  • 既婚(子ども3人)
  • 奥さんには頭が上がらない

「うちは子どもが3人いて、全員女。まぁお金がかかるんですよ。前は倉庫で働いてたんだけど、どうにも収入が低くて大変だったんで、奥さんと相談して長距離の運転手になりました。

自分は資格や学歴がないし、家族を養っていくにはこの仕事しかないと思ってるんです。仕事はきついです。楽じゃありません。

でも、奥さんや娘たちも協力してくれてるし、これから結婚やらなんやらでお金かかるしね。他にこれほど稼げる仕事はできないので、覚悟を決めてやってます。

でも、周りを見てると、覚悟ができない人は文句言って辞めていきますよね。覚悟してなければ、何でもきつく感じると思います。」

「他にできる仕事があれば辞めていたかも」

【Sさんのプロフィール】

  • 50代・男性
  • 既婚(子ども2人)
  • 大病をした後もドライバーとして活躍中

「自分は20代後半からずっと長距離のドライバーです。10年ほど前にガンが見つかって、まぁ初期だったので手術だけでOKだったんですが、その後も同じ会社で長距離やってます。

自分の場合は、もともと整備士になりたくて、国家試験も合格したんだけど、就職先がなかったんです。ディーラーに勤めたんだけれど、整備士としての資格給は3,000円くらいで……何だかバカバカしくなって運転手になりました。

きついですよ、本当にキツイ(笑)楽な仕事じゃありません。今はもう50代半ばで転職先もないから頑張ってるけど、他にできる仕事があれば辞めてたかもしれませんね。だってきついから。

若い頃は何でもなかったことが、年取るときつく感じるんです。でも、仲間にも恵まれて、意外と嫌いな仕事じゃなかったんでしょうね。疲れが取れないし、家にいるときは寝てばっかりだけど、家族が理解してくれているので感謝してます。」

「楽に稼げる仕事なんてないでしょ」

【Kさんのプロフィール】

  • 40代・女性
  • シングルマザー(子ども1人)
  • ドライバーで子どもを大学卒業させた肝っ玉母さん

「私は中堅の運送会社で長距離のドライバーを担当しています。子どもが小学生のときに離婚したので、その時期から運転手になりました。

最初は子どもが小さかったんで、地場配送を担当させてもらってたんですが、高校入学のタイミングで寮に入ったので、そこから長距離を始めました。きつくないわけないですよね、運送業はみんな大変。

車の運転は好きだし、長距離も苦にはならないけど、荷物によっては手積み手下ろしだし。

変な意味で長距離やって太りました……筋肉だと思いたいけど(笑)

でも、女手一つで子ども育てるには、やっぱり収入がネックになるんです。いろいろな仕事を試してみたけれど、大学卒業までを考えたら、この仕事しかなかったと思ってます。

今はいろいろな働き方があるけど、楽に稼げる仕事なんてないんですよね。おかげさまでコロナでも仕事が減ることはなかったし、子どもも無事に大学卒業して修飾したので、後は老後資金を貯めます!」

「デメリットばかりをみたらダメ」

【Tさんのプロフィール】

  • 50代・男性
  • 死別
  • 孫たちと遊ぶのが唯一の趣味

「うちの会社はとにかく若手がいないので、超高齢化社会の縮図です(笑)今の若い子は仕事のデメリットばかりをみるから、すぐに嫌になっちゃうんですよね。

きついことは承知の上で入社しているわけだし、事前にいろいろ調べればどんな流れで仕事をするのかもわかるはずなのに、「思ってたのと違うから」って辞めていくんです。何をどう思ってたのか、聞きたいなと思うことがありますよ。

どんな仕事にもメリットとデメリットがあって、天秤にかけたときちょっとでもメリットが多ければ結果オーライなんだと思ってるので、ちょっと残念に思うこともあります。

うちはかみさんが亡くなって、息子も独立しているので、若い世代の人よりは働きやすいのかもしれないね。

ドライバーはきついですよ、正直。楽な仕事じゃないし、簡単に稼げる仕事でもない。だけど、うちの会社には人付き合いの苦手な人や不登校だった人たちが働いてます。

そういうメリットもあるっていうこと、ドライバーの仕事が最適だっていう人もいるってことを理解する必要があると思いますよ。」

現役長距離ドライバーが取っている対策

現役ドライバーの皆さんは、口をそろえて「長距離ドライバーはきつい」と言います。

ただし、きついだけで終わらせない対策をそれぞれが実践しているようです。

どんな有効な対策があるのか、こっそりと教えてもらいました。

法律に違反してないか知る努力をする

【Tさん】

「トラックドライバーに関する法律がいろいろあるから、自分のいる会社が法律に違反していないかどうかを理解できる知識が必要だと思いますね。

うちの会社はコンプライアンス遵守って騒いでる会社なんだけど、その分守らなければならないことはきっちりと守ってるし、従業員に対して情報開示もしています。本社の方でコンプライアンス違反を取り締まる部署があるので、支社でも下手なことはできないんです。

従業員も少しずつ知識を得ていくから、『おかしいんじゃないか』って声を上げることができるのは良いと思ってます。そういう会社ばかりじゃないから、自分のできる範囲で違法な状態を感知できる力を持つことですね。

運送はブラック企業が多いけど、転職もしやすいでしょ。今なんて超売り手市場なんだから、ヤバいと思ったら転職すればいい。自分も活字は苦手だけど、自分の身を守るためには必要なことだと思ってます。」

転職して労働環境を変える

【Nさん】

「自分のやりたい仕事ができないとか、給料が見合わないとか、少しでも違和感を感じるんなら、いっそのこと転職して労働環境を変える勇気も大事かもしれないね。特に、ブラックな会社に入っちゃうと、いろんなことを搾取されるでしょ(笑)

そんなときは転職すればいい。運転手なんて人手不足でどの会社も忙しいんだから、大手の運送会社とかに転職すればいいんだよね。

中小企業よりは大手の方が安心して働けるし、ボーナスとか福利厚生もしっかりしている。

『運転手は嫌いじゃないけど辞めちゃう』っていうのはもったいないよ。

労働環境を変えるだけでまだまだ頑張れる人はいっぱいいるはずだよね。業界全体がもう少し労働環境の改善に積極的になるべきだとは思うけど、だいぶ変わってきているし、少しずつ浄化されていくんじゃないかなと思ってます。」

開き直ってとことん楽しむ

【Kさん】

「対策というか……もう開き直ってとことん楽しむしかないと思いますね。私の場合は他にできることもないし、もともと運転が好きだからかもしれないけど、楽しみながら仕事してます。

手積み手下ろしできついときなんかは、ゲーム感覚でやってみたり、わざと鼻歌歌ってみたり(笑)怒ったり文句言ったりしてると、余計嫌になるからね。

会社があまりにも理不尽な場合は転職すればいいし、思い悩んじゃうと一人の時間が長い運転手は本当に嫌になっちゃうから、適当に愚痴る相手を見つけちゃうとか。

会社はともかく、仕事内容は慣れてる方が絶対に楽!楽しみ方はいろいろあると思うんですよ。文句言ったり辞めたりするのは、それからでも遅くないはずです。」

他にできる仕事があるのか冷静に考える

【Sさん】

「きついなぁとか辞めたいなぁとか思ったら、他にできる仕事があるのかを冷静に考えることが対策かなと思います。自分の場合は資格は持っててもそれじゃ稼げないし、年齢的なものとか抱えてるローンとかもあるから、きつい!って思っても『俺頑張れ!!』って気合い入れてます。

他にできる仕事があるなら辞めたっていいし、もっと条件の良い運送会社に転職したっていいしね。きついから辞めたいっていうのは、どの仕事でも起こることだと思うんですよ。

だから、同じ理由で職を転々とすることになっちゃう。それだったら一度立ち止まって、冷静に考えることです。

家族や信頼できる仲間に相談もすべきだし、一人で勝手に考え込むことは一番危険かな。冷静になるっていうのは開き直ることじゃなくて、腹をくくることなんじゃないかな。

他にできる仕事がない、今ほど稼げないって判断したんだったら、もう頑張るしかないですよね。」

家族の理解と協力を得る

【Mさん】

「運転手やってて一番きついのは、家族の理解や協力がないことだと思います。仲間内でも家に帰れば育児や家事のことで奥さんとけんかになったり、嫌味言われたりしている人がいるけど、それじゃ仕事頑張ろうなんて思えないでしょ。

長距離の仕事はきついし大変です。でも、支えてくれる人がいる、守らなきゃいけない人がいるっていうのは、すごい原動力になると思うんです。ちょっと昭和ですね(笑)

うちは奥さんが『お父さんが頑張ってくれてるから私たちは生活ができるんだ』って子ども達に言ってくれてるみたいで、家にいて居心地が悪いとか居場所がないと思ったことはありません。

俺もできる限り家族サービスは実践してますけど、圧倒的に奥さんのワンオペですからね。家に帰れないこと、学校の行事に参加できないこと、習い事の送り迎えや発表会にいけない可能性もあること…リスクをリスクじゃなくなるようにするのは、理解してもらうことだと思います。」

まとめ

長距離ドライバーは楽な仕事ではありません。長時間運転をすることは非常に疲れますし、荷物によっては積み下ろしで体力を使います。

ただし、今回のインタビューで感じたことは、現役で頑張っているドライバーは自分なりに工夫をして、仕事を楽しむ努力をしているということです。楽してお金は稼げない、きつい仕事でも楽しめるような努力は惜しんではいけないのだと教えられました。

長距離ドライバーに興味がある、自分の力を試してみたいと検討している方は、ぜひ当サイト「ドライバーコネクト」にご相談ください。業界に精通した専任のスタッフが、手厚いサポートで転職をフォローし、条件や希望に合った仕事探しをお手伝いいたします。