トラック整備士の仕事はきつい?仕事内容・特徴から考える理由と原因

自動車整備士は、普通車などの整備を行う小型自動車整備士と、トラックなどの整備を行う大型自動車整備士に分けられます。

一般車を大きく上回る頻度で長い距離を走るトラックを安全に運行させるためには、トラック整備士は欠かせない仕事です。

しかしトラック整備士はきつい仕事だというイメージがあり、ネガティブな噂も多くあります。

そこでこの記事では、元トラック運転手の筆者がトラック整備士の仕事が何できついと言われるのか、原因や理由をご紹介します。

トラック整備士の何がきついのか?理由を考える

トラック整備士の仕事は、主にトラックの整備や点検を行うことです。

一般車を扱う自動車整備士と比べて何がきついと言われるのか、考えられる理由を解説します。

取り扱う車体が大きいこと

トラック整備士がきついと言われる最大の理由は、取り扱う車体が大きいことです。

一般車に比べてトラックは車体が大きく、部品もそれに伴って大きく重くなります。

当然部品が大きいということは、対応する工具も大きく重くなるということ。

トラック整備士はかなりの力仕事になります。

部品や工具の重さが身体の負担となりやすく、きついと言われる原因となるのです。

危険やケガが多いこと

一般車でさえ、修理・整備のときにケガをすることがありますよね。

トラック整備士は毎日何台ものトラックを整備しなければならず、レンチやジャッキを使った力仕事が連続するため、ケガをする確率が高くなるのです。

また扱う部品が重く大きいことから、危険も伴います。

タイヤ交換でさえ、本数も大きさも普通車とは大きな差です。

腰痛を発症するトラック整備士は非常に多く、ケガをすることも多いため、トラック整備士はきついと言われてしまいます。

急なトラブルの対処が求められること

仕事で使われるトラックは、一般車よりも使用頻度が高いのが特徴です。

仕事で使っている以上、万が一トラブルが発生した場合は、速やかな対応が求められます。

普通車のように代車を出すことも難しいため、緊急な対応をしなければいけません。

トラブルの解決が難しい場合は、時間をかけてでも対応する必要があります。

また出先でトラブルが起きたトラックに対しては、出張をして対応する必要も…。

一般車よりも急なトラブルの起こりやすいトラックの安全を守るために、トラック整備士の負担が大きいこともきついと言われる原因といえるでしょう。

労働時間が長いこと

トラック整備士の仕事は、労働時間が長くなる傾向があります。

点検・整備だけではなく、仕事で使用するトラックにトラブルが起きた場合は可及的速やかに解決することが求められるので、労働時間を延長してでも対応しなければいけないのです。

またトラックの運行時間は運送会社によってさまざまです。

同じ運送会社でも、運ぶ荷物や荷主によって早朝や深夜の運行があれば、その分トラック整備士の対応時間も長くなります。

残業が多くなりやすく、労働時間が長いことはきついと言われる原因の一つです。

人間関係が意外と面倒くさいこと

トラック整備士の職場は、意外と人間関係が面倒くさいケースがあります。

筆者は元トラック運転手です。

会社に所属している整備士さんにはとてもお世話になり、仕事以外の雑談などを交わすことも多くありました。

そんな中から見えてきたのは、年功序列の厳しい上下関係です。

トラック整備士の仕事は非常に専門性が高いので、先輩が後輩を指導するのが当たり前。

職人気質の人も多く、昔ながらの『背中を見て学べ』的な雰囲気もありました。

トラック整備士の仕事はチーム制で行うことがほとんどなので、チーム内の人間関係がうまくいかない場合は、きついと感じる理由の一つに挙げられます。

トラック整備士の仕事内容を知ろう

そもそもトラック整備士はどんな仕事を行うのでしょうか。

主な仕事内容を3つに分けてご紹介します。

点検

トラック整備士の主な仕事はトラックの点検です。

安全な運行ができるためのメンテナンスは欠かせません。

運送会社で行うトラックの整備点検は、チェック項目は50以上になります。

1台にかかる時間は少なく見積もっても3時間以上。

長距離の運行を想定して、より丁寧で確実な点検を行う必要があります。

車検

事業車両の車検は普通車と異なり、1年に1回を法律で義務付けられています。

車検は数名のチームを組んで行うことが多く、作業には8時間近くかかることもある重要な仕事です。

車検周期だけではなく内容も普通車とは異なるため、時間をかけて行う必要があります。

故障の対応

故障の対応もトラック整備士の重要な仕事です。

運送会社のトラックは非常に長い距離を走り、長距離トラックなどの場合はさまざまな状態の道を走ることになります。

そのため故障の確率は普通車の比ではありません。

小さな故障が大きなトラブルにつながることも多いため、異常があった場合はトラック整備士が対応します。

出先でトラブルが起きた場合は、出張して修理することもあります。

トラック整備士を仕事にするメリットは?現役の整備士にインタビュー

きついというイメージが先行しているトラック整備士ですが、仕事にするメリットも確実に存在します。

筆者が運転手時代にお世話になった整備士のKさんは、現役でバリバリ働いているベテランのトラック整備士です。

Kさんにお話を伺い、トラック整備士を仕事にすることで得られるメリットを3つご紹介しましょう。

転職の幅が広がる

「求人は一般の整備士よりも多いです。自分の働いている会社もそうですが、常に人が足りなくて、求人を出しているような感じなので、転職はしやすいと思います。一般の整備士も含めて、転職の選択肢が増えることはメリットだと思いますね。整備士の業界は意外と転職することに抵抗がなくて、少しでも条件の良い会社があれば転職するっていう人が多いです。給料だけじゃなくて、資格の取得を支援してくれたり、研修とかにどんどん参加させてくれる会社がおすすめですよ。特にこれからの2024年問題でトラックの台数が増えるって言われてるから、仕事は増えるかもしれませんね。今はどの会社も待遇や労働環境の見直しをしているって聞きます。追い風ですね(笑)。」(Kさん)

トラック整備士のメリットは、転職時の有利性や選択肢の多さが挙げられます。

トラック整備士(大型自動車整備士)は専門性の高い資格なので、資格を保有しているだけで転職先の選択肢が増えるそうです。

優秀な整備士はヘッドハンティングのようなこともあるそうで、良い条件を提示された会社へ移ることも多いとか…。

専門性が高く求人数が多いということは、それだけ現場の人材が不足しているということです。

人材確保のために、労働環境や勤務条件の改善を行っている会社が多いのは、大きなメリットといえるでしょう。

スキルアップができる

「整備士の仕事は、とにかく経験が必要です。知識だけじゃなくて実際にやってみた現場の経験は宝物ですからね。机の上での勉強だけではわからないことが山ほどあるし、実際にやってみないとわからないことも多いんです。現場の経験を積み重ねて、数多くの状況に対応しているだけで、スキルが勝手に上がっていくんですよ。これってすごいメリットだなと思います。現場の経験がイコールキャリアになるので、「〇年トラック整備士やってます」っていうのが、スキルの証明みたいな感じです。長く勤めている人はやっぱりすごいからね。自動車業界は変化が激しいから、勉強も含めて真面目に働いていれば、スキルアップがしやすい仕事だと思います。」(Kさん)

どんな仕事でも、スキルアップは非常に重要なことです。

専門性の高いトラック整備士の場合は、現場での経験の積み重ねで自然にスキルアップができるとのこと。

日々の仕事が経験となり、そのままスキルアップに繋がるというのは、トラック整備士のメリットです。

体力がつく

「トラック整備士と一般の整備士の違いは、やっぱり部品の大きさや重さです。トラックの部品は、とにかく一つひとつが大きくて重いので、ちょっとした整備や修理なんかもすごく体力を使います。僕はもともと一般の自動車整備工場にいたんですが、その頃よりもすごく体力がついたなぁと思うし、最初はきついなぁと感じていましたが、体力がつくにつれてそれほど負担に感じなくなってきました。身体をものすごく使う仕事なので大変な時もありますが、もともと身体を動かすことが嫌いじゃない人はそんなに嫌じゃないかも。体力がつくことは、メリットといえるかもしれませんね。」(Kさん)

トラック整備士は一つひとつの部品が重く大きいことで、一般の整備士よりもきつい部分は多いそうです。

ただし毎日の仕事をきっちりとこなしていくことで、最初は負担だったことも徐々に慣れていくのはどの仕事でも同じです。

ちなみにKさんは、トラック整備士に転職してから体脂肪率が落ちて、健康診断の結果も好転したらしく、「これもメリットだ(笑)」と話してくれました。

トラック整備士の仕事に関するよくある質問

トラック整備士に興味はあるけど、まだわからないことが多い…という方のために、トラック整備士に関する質問をピックアップして、Kさんに回答してもらいました。

少しでも興味のある方は疑問を解決できるよう、参考にしてください。

トラック整備士の給料は一般の整備士より高いの?

「会社にもよるけど、一般の整備士よりは高い会社が多いですね。あとは残業代!残業が多い仕事なので、忙しい時期は残業代で稼げます(笑)。ただ入社(転職)したての頃は、前の会社より給料が低くなったっていう人もいるので、転職するときには少し注意が必要かも。自分の場合は大手の整備工場からの転職だったので、最初は給料が下がりましたね。でも今では前職を大きく上回ってくれたので、良かったです。資格を持っていれば資格手当もつくけど、会社によって違う部分が大きいから、転職するときには内容をしっかりとチェックした方が良いですよ。」(Kさん)

令和2年に厚生労働省が発表した賃金構造基本統計調査の職種別賃金額によると、自動車整備・修理従事者は時給換算で1,101円と報告されています。

厚生労働省の分類では、一般の自動車整備士の中にトラック整備士が含まれていますので、表面上はそれほど高い収入とはなっていないのが特徴です。

しかし、トラック整備士は人手不足に悩まされていることや、専門的な知識・技術が必要な職種のため、一般の自動車整備士よりは収入が高い傾向があります。

女性でも勤務することはできる?

「できますよ。実際に俺の同僚にもいます。ただし人数はメチャメチャ少ないし、思いっきり男社会だから、きついと感じることも多いかなと思います。基本的に整備とか車検とかはチームで行うことが多いので、一人に大きな負担がかかることは少ないです。ただ俺の同僚は、ものすごく勉強しています。もともと車が好きな人なんだけど、知識だけじゃなくて自分の身体に負担が少なくなる動き方みたいなのを研究してる(笑)。気が強くて身体も丈夫だから続けていけてるのかもしれないけど、女性ならではの気配りなんかに助けられている部分はとても大きいですよ。」(Kさん)

Kさんの同僚の女性は、自動車関係の専門学校を卒業して整備士になった筋金入りの車好きだそうです。

男性でもきついと感じることのある仕事を、とても楽しそうに工夫をしながら行っているとか。

女性だからできないということはなく、それぞれの適性による部分が大きい仕事だと話してくれました。

年齢に関係なく転職することはできる?

「関係ない!って言いたいけど、年齢を重ねれば重ねるほど身体がきつくなるのは事実。求人の募集要項とかに年齢不問って書いてあれば応募することはできますよ。でもうちの会社なんかでも一定の年齢を超えると、みんな管理職(内勤)になりますね。若い奴らと同じように働けるかっていったら答えはNOです。だから今までの経験や知識を活かして、後輩たちの教育なんかに関わっていくことが多いんじゃないかな。俺もそろそろ管理職にならないかって言われてるので、そういう道もあるって感じてます。年齢は関係ないし、経験を積んでいる人は本当にすごい人が多いから、諦めずにチャレンジしてほしいけど、自分の身体に無理があるような条件は避けるべきかもしれませんね。」

体力を使うトラック整備士の仕事について、Kさんは正直なお話を聞かせてくれました。

現場仕事だけではなく、人材の育成や管理という別の仕事にシフトすることもあるという現実…今までの知識や経験を後進に伝えていくという仕事も重要なポジションです。

年齢不問と書かれていても、自分の体調やコンディションを考慮する必要があります。

トラック整備士の転職で注意したいことは?

「トラック整備士って、転職にあんまり抵抗のない人が多いんですよ。自分達にしかできない仕事だっていう自負みたいなものがあるんで、良い条件の会社があればどんどん転職していきます。だけど中には、ちょっとブラックなんじゃないの?っていう会社も実際にあるので、みんなが転職しているから…ていう軽い感じで転職するのはおすすめできないですね。ちゃんと会社のことを調べたり、周りの整備士仲間から情報を仕入れたりして、しっかりと見極めること。注意しなきゃいけないのは、表面上の良いことだけに目を向けないことです。」(Kさん)

トラック運転手も転職意向の高い職業ですが、トラック整備士も同じようです。

引く手あまただからこそ、転職先の選定はしっかり行う必要がありますし、仲間内の情報網を最大限活かすのも一つの方法といえるでしょう。

専門性の高い仕事だからこそ、自分に最適な条件を見極める目を持たなくてはいけません。

トラック整備士の将来性について

物流業界は、深刻な人手不足に悩まされています。

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴う外出自粛によって、ECサイトの売り上げは爆発的に伸びました。

配送を担うドライバーの不足だけではなく、酷使するトラックを安全に運行させるのに必要なトラック整備士も不足していることが容易に想像できます。

運送業界が迎える2024年問題ではドライバーの増員や物流センターの増築が急務といわれ、業界全体が大きく変わろうとしているのが現状です。

ドライバーが増員すれば動かす車両の数も増えるため、トラック整備士は非常に将来性のある、必要不可欠な仕事だといえるでしょう。

まとめ

トラック整備士は、きついというイメージがありますが、高い専門性を求められる必要不可欠な仕事です。

デメリットばかりがフォーカスされがちですが、メリットも多くやりがいのある仕事だといえるでしょう。

トラック整備士として働いてみたいと検討されている方は、ぜひ当サイト「ドライバーコネクト」にご相談ください。 業界に精通した専任のスタッフが手厚いサポートで転職をフォローし、条件や希望に合った転職をお手伝いいたします。